第6話 中二病の女の子、撫でられると喜んでしまう
「他に何か聞きたい事はありますか?」
「では、システムについて教えてもらおう。ボクたちは、ゲームのキャラと同化しているらしいが、本当にゲームみたいな動きができるのか?」
魔法少女が質問をする。しかも、意外と理性のある質問だった。
中二病ではあるが、同時に理知的でもあるらしい。
「操作はゲームより簡単です。攻撃も魔法も、念じればゲームと同じように発動しますよ」
そうなのか。ちょっと試してみよう。
剣を振ってみると、剣の重さはまるで感じなかった。
確かに念じるだけで、攻撃が可能のようだ。
なるほど。これは少し面白いかもしれない。
「えい! たあ!」
僕は続けて何回か適当に剣を振ってみる。超人になった気分だ。
「ふ、お前、どうやら初心者のようだな?」
そんな僕を見た魔法少女がニヤリと笑う。
な、なぜ僕が初心者だと分かった!? そんなに変な動きだったか!?
「オラオラァ!」
サイコパス剣士は、ダイナミックな動きで連携攻撃をしていた。
す、すごい。あんな動きもできるのか!
そういえば、千奈にもあんな感じで連続技を決められたことがあった。
あのサイコパス剣士に比べたら、確かに僕の動きは初心者っぽい。
まずいな、このままでは、僕は現実世界と変わらない最弱人間のままだぞ。
なんとか強くなる方法を探さなければいけない。
そうだ。ゲームと同じなら、二人の名前もステータス画面で見ることができるはずだ。
ちょっと見てみよう。二人の事が何か分かるかもしれない。
ステータスを確認する。魔法少女の名前が『リル』……か。
中二病ではあるが、先ほどのシステムを気にする発言から、この子も1000時間プレイしてきた猛者であるのは間違いない。
実は結構やり込んでいると僕は見た。
サイコパス剣士の名前は『レオン』。さっきの動きを見る限り、彼もかなり強いのだろう。
あれ? でも二人とも『初期レベル』だぞ? 1000時間もプレイして、レベルが初期なんてあり得るか?
まあ、僕は初期レベルだったけど、それは例外ね。
「ほほう。レベルが『初期化』されているようだな」
リルも色々とステータス画面をいじっていた。
なるほど。この世界に召喚されたら、レベルは初期化されるらしい。
キャラクタークリエイトはそのままだが、レベルは1からだ。おそらく、装備もその職種の初期装備なのだろう。
1000時間もプレイして、レベルが初期化されるのはショックだと思うが、リルはそうでもないらしい。
「ククク、お前がトオルだな。よろしく頼むぜ」
そうして、不敵な笑みで手を差し出してくるリル。
「う、うん。よろしく」
リルは中二病で変わり者だけど、悪い子じゃない気もする。
どうやら話す時に『ククク』を付ける癖があるようだが、そんな中二病部分がむしろ一周回って可愛らしく思えた。思わず撫でたくなる。
「…………なぜ、頭を撫でる?」
「あっ、ごめん。可愛かったから、つい……」
というか、既に撫でていました。
友達が一人もいない僕だが、千奈くらいの子と接するのは慣れている。
なので、ついつい同じような感覚で扱ってしまった。
「…………か、可愛い」
リルが俯いてしまう。気分を損ねてしまったか?
「ク、ククク、我が心の闇が疼くぜ!」
いや、よく分からんけど、喜んでいるっぽい。うん。やはり可愛い!
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