第78話 目覚めたら病院で、戦争中だった件
『秘めたる未知』を使用可能にしたジンとエキドナは、『秘めたる未知』の隠蔽とは違う二つ目の特性である変化を行使して心から脱出をし、今はジンの本体が眠っていた病院で話し合っていた。
「恵まれた人に囲まれて良かったね。アカ」
「本当にそうだ……!?マジかぁ、早めに復活できたと思ったんだがな」
「戦争、始まっているみたいだね。どうする?」
「行くしかねえだろ」
戦争が始まる前に復活をしておけたと感じていたジンとエキドナであったが、その答えは否であった。
戦争が始まる直前どころか、すでに戦争をしている最中である。読みとしては三ヶ月は掛かるだろうと踏んでいたのだが、事実はその予想を赤子の手を捻るように踏み潰した。復活までの時間は一週間と3日。
ジンやエキドナが復活する前に、ジンを除く超越の全てを消滅させたかったのだろう。流石にまだ片付け終わってはないようだが、一部の超越達は消滅をされている。ため息を吐くジンと、少し哀しそうな瞳をするエキドナは転移魔法を発動させる。
転移をした先は死屍累々となっており、血生臭い悪臭が鼻を通る。昔に多く体験をし、慣れていると思っていたこの臭いも、未亜との暖かい生活で慣れは解消してしまったらしい。
瞳の先に通すのはユニコーン。まだ怪我が完全には治っていない証拠として、包帯が巻かれているのだが、それでも弱き人間相手ならば無双が可能らしい。まあ、その無双劇は終わりとなるのだが。
ジンとエキドナの双閃がユニコーンに突き刺さる。ただの邪力で強化をした二閃。けれども、エキドナがこの世界に居るジンは。ジンがこの世界に居るエキドナは。その前よりも圧倒的な力を発揮する事ができる。
何故なら最強無双の相棒だから。
ユニコーンを撃破した後、次への標的は猫妖精とウィンディーネ。先ず動き出すのはジン。猫妖精の顔に蹴りの一撃を叩き込む。そのジンにウィンディーネは猫妖精から離れさせようとコア劇の構えをするのだが、エキドナによって阻まられる。
「けほっ、けほっ。まだだと思ってたんだけど?
早いでしょ」
「相棒が協力してくれたんでね」
「相棒……?うっわぁ、エキさんも復活してる。過剰戦力は過ぎるといけませんよ、と小さい頃に教わらなかった?」
「お前ら相手なら過剰戦力じゃねえだろ」
「うーむ、反論ができないな」
そもそもの話、超越相手に過剰戦力だから、と止めてしまう方がバカなのだ。過剰戦力が何だと言うのだ。超越ならば、過剰戦力な相手だと言えども引っくり返してみせる。そんな手札を持った者だけが超越へと成れるのだから。
ジンと猫妖精の打撃が衝突した次の瞬間、ジンは亜空間倉庫から愛刀『死見堕礼』を取り出し、突き刺す。
けれども、相手も同じくして超越。それもユニコーンや八咫烏などの何歩か遅れている超越では無く、一歩前程度の実力を所持している超越。ジンの刺突攻撃は混沌魔力が纏われている両手で防がれた。刀の先が触れている猫妖精の手から血が少ししか垂れていないのを見るに、攻撃力と防御力の差を感じられる。
もう少し強めに力を込めておけば良かった、と反省の意を心に浮かべながら刀を引こうとするのだが、猫妖精はそれを許さない。一歩背後に下がったジンと刀剣を逃さない、という意志を感じさせ、肉弾戦に持ち込んでいく。
肉弾戦で暴れていた過去の猫妖精を頭の中に思い浮かべつつも、刀剣で対応をする。心の内では同じ肉弾戦という土俵で勝負をしたいと言う気持ちはあるのだが、『死見堕礼』を亜空間倉庫に収納していれば、必ずその隙を狩られてしまうだろう。
厄介極まりない古の戦友に内心で舌を打ち、愛刀による斬撃を浴びせる。しかし、大と言える程のダメージは与えられていない。防御も攻撃も、桁外れとしか言いようが無いこの猫妖精。本来妖精なら大人しく物を作っている筈なのだけれど。
(少し、ギアを上がるか。良いか?エキドナ)
(オッケーだよ。此処で何時までも足留めを貰ってるだけじゃダメだからね)
そんな心の会話を基軸として、ジンとエキドナの最強竜コンビは能力の
猫妖精の腕を切り裂き、その背後にある地面や岩に斬撃が振り下ろされる。猫妖精の腕を切り飛ばしたのを目視で確認した後、再度刀剣を振るう。横に振るった斬撃は首へと届き、切り裂く。
切り飛ばした首からは黄金の粒子が流れ出ており、一時の崩壊を表している。
死ぬ訳では無いのに、猫妖精の瞳には哀しさが映り込んでいた。
「良いの?先に行きたいんでしょ」
「別に、このくらい問題ねえだろ。……なあ、そんな哀しそうな顔をしているのは何でだ?ブーファスと離れてしまうからか?」
「違うよ。僕が苦しいのは其処じゃ無い。君が、君達親子が、仲直りをする前に永遠に離れ離れになってしまう事が苦しいんだよ」
その言葉に瞳を閉じた後、ジンは口を開く。
「大丈夫だ。何とかやってみせる」
「そう……頼むよ、戦友。ごめんね、アカ。何時まで経っても僕は君に背負わせてばっかりだ」
「そんなに気負うなよ。俺は一人じゃねえ。だから、安心しろ」
「……!もう、昔から変わらないね。君は。安心、したよ」
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