番外話 探索者協会会長と相棒

「よっす、ユーフォス。お前の相棒さんが来てやったぜ」

「はぁ、ボクは今仕事中なんだけど?それぐらい理解して来いよ、バカ甘党」

「うわっ、長年の相棒に対してすっごく辛辣な言葉だなぁ。もっとと俺に対して配慮とかしてくれよ。なんか思わない訳?俺に可哀想とか」

「ん?あぁ、そんなものはとうの昔に捨てたよ。フュース相手ならばそんな必要無いだろ?」

「なにその嬉しくない信頼は。あぁもう、話がずれ過ぎだな。話を戻すとな、お前がジンに頼んでいた事の許可を貰ってきたぞ」

「え?マジで?」


ボクはフュースが言ってきたその言葉が信じられなかった。何故か、それはあの事は断れると思っていたからだ。いやだってさ、思うじゃんか。あの時のジンはロッド__稀代の英雄__以外には懐かなかったんだから。確かにボクはジンから認められいる、だけどそれがボク以外がジンの主人に近づける理由にはならないと思ったから。


例えそれがボクの娘であってもね。ボクは信頼できるかもしれない、だけどボクの娘はジンとは初対面だ。ジンがボクの娘を危険と、有害と判断するならば、仕方ないと思った。ジンは初対面の人とか認めていない人とかには野良猫みたいだからね。警戒心が本当に高いのさ。


まぁ話を戻すと、ジンが許可をしてビックリっていう話なのさ。そう考えながらボクは驚きで止まっていた手を動かす。はぁ、本当に驚いた。絶対にフュースはボクが驚く事を分かってたでしょ。こういう話は仕事が終わった時に話して欲しかったな。こういう仕事中に話されると生きた心地がしないんだけど。そんな感じの内容じゃないだろって?驚いているからノーカンだよ。


フュースはボクが動き始めたのを確認すると、魔法陣を展開し、ボクが作ったクッキーを取り出した。せっかく仕事部屋に来たんだから、仕事を手伝ってくれないかなぁ、なんて事を思いながら判子を押す。許可の書類には許可用の判子を押し、不許可には不許可用の判子を押す。この仕事部屋にはボクが判子を押す音とフュースがクッキーを『サクサク』と食べる音が響いている。そしてそれから30分後、フュースから驚きの言葉が発せられた。


「あ、そうそう、多分だけどさ、もうすぐジンは復活できそうだぞ」

「は?」

「いや、は?って言われてもその通りに言っただけだから説明のしようが無いんだけど?」

「そういう事を言ってるんじゃないんだよ!いやまぁ、その事もあるだろうけどさ。何でそれが分かるのさ」

「ん?嗚呼、ユーフォスは知らなかったんだっけ。俺とジンは魂が繋がってるんだよ。まぁ、俺とユーフォス、ジンとロッド程じゃあ無いけどな。だから分かるってわけ。彼奴最近どんどん力が増してるからね」


ボクはフュースの言葉に再び固まってしまった。だってねぇ?そんなトンデモ情報を伝えられたら誰でもそうなるでしょ。いやまぁ、フュースがジン『復活したぞ!』って言ってたからそういう可能性あったのかなって思った時もあったけどさ、本当にそうだとは思わんやん!?ボクは心の中でそんな悲鳴に似た声を上げながら落ち着かせる。


「はぁ、報連相って知ってる?」

「知ってるぞ、放浪、恋愛、想像だろ?」

「全く違うんだけど!?報告、連絡、相談だよ!頭文字の漢字すらも合ってないよ!?もうさぁ、なんか疲れちゃったよ」

「おいおい、大丈夫か?オーバーワークはあんまり良くないぞ?嫁さんにあんまり心配を掛けさせんなよ、ユーフォス」

「誰のせいだと思ってるの!?もう良いや、今日やるべき仕事は終わった事だし、久方ぶりに怪物狩りにでも行こうかな。フュースも来る?」

「お?良いのか?俺が行ったらユーフォスが狩る分の怪物が無くなっちまうぞ?」

「ははっ!何を馬鹿な事を言ってるのかな?ソレを危惧するべきはフュースじゃないのか?前の狩がどうなったか忘れた?」

「何を馬鹿な事をだと?それは此方のセリフだぞ。アレからどれだけ月日が経ったと思っている。技も力も、沢山のモノが上がっているんだぞ?前と同じ様に行くとは思わない事だな」

「だから?フュースがどれだけ強くなり、上に上がって来ようとも、ボクの完全勝利が揺れることは絶対にあり得ない。だから安心して来なよ、完膚なきまでにぶっ潰してやるからさ」


ボクとフュースは己の武器を魔法陣から取り出しながらそんな煽りを口にする。しかし何方とも怒らない、怒りを露わにしない。というか全くもって怒ってなどいない。コレはボクとフュースが怪物狩りに行く時に毎回言っている会話だ。時によって口にする言葉は違うが、煽りを言っている、それだけは変わりない。


そしてボクとフュースは片手を合わせて魔力を融合させる。毎回毎回、コレをすると探索者協会本部の魔力探知機が壊れちゃうんだけど………………しょうがないよね!ボクはそう考えながらボクとフュースの足元に魔法陣を展開し、魔法名を発動させる。


『『矛盾の証明ファースト&ファースト』』


ボクとフュースがその魔法名を唱えると、部屋一面が『ピカッ!』と光り、ボクとフュースは消え去っていた。







_______________________

□魔力探知機

魔力を特定する為だけの道具。しかしその魔力探知機は探索者協会を運営する上でとても大事な機械である。もし探索者協会の支部や本部で犯罪や探索者協会規程を破った者がいるとすれば、その魔力を辿り、捕まえる、又は探索者免許を破棄する事が可能である。


矛盾の証明ファースト&ファースト

空想、夢幻、その他諸々を現実に可能とする魔法。分かりやすく言えば現実改変魔法に位置する魔法である。しかし現実改変魔法とは言っても、他の現実改変魔法とは格が違う。他の現実改変魔法は神などの高位存在(フュースやロッドなど)に介入されたらどうしようもないのだが、この現実改変魔法はマジでどうしようもない。ロッドと旧時代のジンが命を賭けたらワンチャンあるかも、とかいうレベルである。分かってもらえただろうか、つまりこの現実改変魔法を元に戻すのは世界神を封印するよりも難易度が高いのである。


補足:この魔法作成者はロッドとユーフォス、ジン、フュースである。


さらに補足:この魔法の発動条件は宿主と能力の完璧相互魔力操作、世界を何億回も破壊、創造してもお釣りが来るレベルの魔力量、魔法、スキル、特異能力を使わずに世界の法則を変える事が出来る事、全ての力を持っている事。コレが出来るのが、ユーフォスとフュース、ロッドとジンである。出来る可能性があるのは花唄未亜とジン。

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