第13話 アシッド・ナーガ(偽)VS鬼才毒使い

私は沢山の怪物を収納した後、この階層をどんどんと進んでいく。この階層を進む度に、空気中に漂う毒の濃度が濃くなっている。この階層に来てからも思ったけどさ、急に殺意が高くなりすぎじゃない?此処の前の一階層はただ怪物が襲ってくるっていうだけの筈だったんだけどね。それにその襲ってくる怪物も弱いのばかりだからあまり危険は無いんだけど………………危険度がやっぱり跳ね上がりすぎなんだよ。


本当にどういう事なんだろう。私はそんな事を考えながらこの階層を歩いていると、突然頭上から針が降ってきた。わぁお、魔力硬化に魔力鋭化、刺突強化のスキルを組み合わせてくるなんて…………本当にこの階層主はどれだけ殺意が高いのやら。私はため息を吐きながら防御魔法(疑似)を展開する。


「風が吹き、波が揺れ、星は堕ちる。例え我等が止まり、動かなくとも、時は、世界は動いている。しかし我はその世界を認めない。残酷なまでに友を、仲間を傷つけ、暗黒に堕としてきた世界を認める事などあり得ない。我は抗おう、我が死ぬ時。否、世界の崩壊の時間まで」


『無色ノ崩壊』


私はスキルの『詠唱加速』を使いながらこの魔法を発動すると、私に向かってやってきた針は崩れて無くなった。私が何故この魔法を疑似防御魔法と言ったのか、それは本来の防御魔法ならば、防御だけになるのだが、この魔法は私の展開した魔力の壁に触れると崩れて無くなるのだ。しっかし私の魔法ってどうしてこうも危険性のある魔法ばっかりなんだろ。


他の探索者の魔法を見る事があるんだけど、攻撃という危険性はどれもあるんだけど(攻撃魔法の場合)死の危険性があるのは少ないんだよね。だけど私の魔法の場合は殆どがその可能性があるんだよね。何で私の魔法って全部可愛げが無いんだろうか。いやでも、魔法に可愛げを見出すのが間違ってるから!魔法って効果や威力の方が大事だから!


私は落ち込みそうになっている自身の心にそうフォローする。そしてそれを気にしない為にも、私自身の頬を『ペチン』と両手で鳴らす。なんか『ベチン』という音にも聞こえなくはないが、それは気のせいだろう。もしそれが本当だったら私がゴリラみたいになってしまうじゃんか。いやまぁ、ゴリラやゴリラ型の怪物よりも、今の私の力の方が上なんだけど。


で、でも!それは私がスキルや魔法、特異能力を使った時の場合だから!つまり私はゴリラじゃない!私がそんな事を考えていると、いつの間にか大きな広場に着いていたらしい。でもこれ、広場というよりかは……………………闘技場?私がその考えに至ると、闘技場疑惑のある広場の上からいきなり『ドスン』と降ってきた。


その降ってきた蛇は紫色と緑色を混ぜた様な巨大な蛇だった。白峰さんから怪物辞典を渡された時に似た様な奴を見た事がある。確か毒蛇王帝アシッド・ナーガだった筈だけど…………………違うね、アレは毒蛇王帝じゃない。怪物辞典で見た毒蛇王帝の情報では、身体の長さが最低でも1500mはあった筈なんだよ。だけど目の前にいる蛇は30mしかない。そしてそれだけで無く、毒蛇王帝の頭上には黄金色の王冠を着けている筈なんだ。だけどあの蛇にはその王冠が存在していない。


これだけあれば彼奴は毒蛇王帝じゃないという証拠は充分じゃないかな。あ、もう一つ追加として覇気が無いも追加しておこうかな。私が目の前の毒蛇に対してそんな事を思っていると、目の前の毒蛇は私に向かって魔法を展開してきた。発動した魔法は火魔法と風魔法だった。私はその二つの魔法に向かって魔力収束させた魔力の光線ビームを撃ち放つ。


私が放った魔力収束光線が毒蛇の魔法を貫き、魔力を散らせたのだが、私の額には冷や汗が流れている。さっきは覇気が無いって言ったけどさ、油断をしてると不味いかもね。魔法陣の展開速度、小さな魔力で大きな威力を作り出す魔力操作、思考詠唱、魔法への明確なイメージ、どれを取っても高いね。例え毒蛇王帝の偽物だったとしても、腐っても階層主という訳なんだね。


私はそう考えながら毒蛇と数秒間睨み合っていると、突如地面から魔力反応を感じた。先に先手を打たれたか、私がそう思い、居た場所から遠ざかると、地面から鋭い突起物が生えていた。怖いね、もし私にコレが当たってたら串刺しじゃんか。私はそう考えながら右手を銃の形にし、毒蛇の方向に向けて闇魔法の砲撃を放つ。


『ドゴォォン』という巨大な音が鳴ったが、毒蛇は無事みたいだった。まだ煙は晴れてはいない、しかしスキルの『生体感知』で生きているのが分かる。

まぁ、あの程度では死なないと分かってるから然程ショックを感じないけど。私はそう考えながら毒蛇が居るであろう煙を睨みつける。そして急に魔力反応がしたと思ったら、砲撃が飛んできた。


コレは………………毒魔法か。毒魔法だったら対応の仕方も広がると言うもの!私はそう考えながら毒蛇が放ってきた毒の砲撃を蹴りで撃ち返した。服の少しは溶けるかと覚悟をしていたのだけれども、全くと言って良いほど溶けなかった。嘘!?こんな事ってあり得るんですか!?私がそう驚いていると、毒蛇は懲りずに毒の砲撃を撃ってきた。


「本っ当にさぁ!ウザったいんだけど!ちょっとは静かに出来ないのかなぁ!?」


私は毒蛇に向かってそう言いながら顔面に蹴りを加える。私の蹴りを喰らった毒蛇は大きく吹っ飛んで行った。え、えぇ?飛びすぎじゃない?なんであんなに吹っ飛んで…………もしかして私の身体能力が上昇してる!?いやいやいやいや、だとしたらなんで急に!?


私は困惑しながら吹っ飛んでいった毒蛇の方向を見ると、毒蛇は『グガァ?』と心底困惑した様な顔と声を此方に向けていた。うん、私もそれは思う!






_______________________

□思考詠唱

頭の中で詠唱を展開し、魔法を発動するのをサポートするスキル。■■イッチも同じ様な事が出来るが、あまり使わない。何故なのかは、『能力ってのは、そんなモノを使わずとも良いのですよ。大体は詠唱とかしなくても良いからね。あ、でも人間達の無詠唱とかとは別だよ?』という感じらしい。


□詠唱加速

詠唱を加速させるスキル。


□未亜の身体能力が上昇した原因

■■イッチのせい?おかげ?■■イッチが色々と弄ったのが原因なのは確か。色々と改造したら結構すごい事になりそうだからとかなんとか。『成長速度は稀代の英雄と同じだけど、才能はそれ以上かもしれない』という事らしい。


というか急に改造すると困惑するんだぞ。戦闘中とかだったら特にな。ちゃんと反省をしとけよ。


■■イッチ『サーセン』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る