息子が修行してきた
コーク
いつも通りの日曜日…?
「父さん、僕、孫○空になってくる!」
いつも通りに平和だなぁ…、と、ソファーの上でゆっくりとくつろいでいた俺に向けて、急に息子が突拍子もなく、おかしなことを言い、家から出ていった。
その週の日曜日も、いつものように8時ごろに起床した俺は、またもややってくる、憂鬱な一週間の始まりに重い気持ちになりながらも、コーヒーを片手にソファーに座っていた。
しばらく間ダラダラとスポーツなどのコーナーもあるニュース番組を見ていると、2階で寝ていた息子が、まだ眠たそうな目をこすりながら降りて来た。
「おはよう」
と、挨拶をしたはいいものの、まだ半分ほど眠っているのか、んー、という、なんとも曖昧な返事がかえってきた。
息子が起きて来たということは、そろそろあのアニメが始まるんだろうな、ということを察した俺は、リモコンを取り、テレビのチャンネルを変更する。
すると、ちょうどいいタイミングだったのか、聞き覚えのあるBGMとともに、前回のあらすじが始まった。
その途端に、
「ドラゴ○ボール!!」
と叫びながら、さっきまでは、見えているのかどうかもわからないような細い目を擦っていた息子が、テレビの前に駆けて来た。
もうすでに他のことには興味がないようで、テレビの前で正座をし、目を輝かせながらアニメを見ている。
「よいしょっと…」
こんな声が出るなんて、もう俺もいい歳かな、なんて考えつつ、俺はのそのそと台所に向かう。
いつも日曜日は、息子がこのアニメを見ている間に俺が朝ごはんを作るのが習慣だ。
昨日の晩飯の洗い物をしながらもなんとなくテレビを見てみると、多種多様な色をまとった男たちが、周囲にとんでもない破壊力の衝撃波を出しながらも戦っている。
息子はそれをキラキラとした目で見つめ、大興奮の様子だ。
洗い物が終わり、コマーシャルに入った時も、息子はテレビの前からはピクリとも動かない。
そろそろ朝飯でも作るか、と、俺は定番の朝ごはんの用意を始めた。
しばらくすると、アニメも終わったらしく、満足気な様子の息子がこちらに駆け寄ってきて、
「父さん、僕、孫○空になってくる!」
といい、なんの用意もなしに玄関へ行き、外へと走っていった。
どうやら、息子ももうそんな年齢らしい。
はぁ…、この朝ごはんは俺が食べるか……。
そう思い、結局俺は、1人寂しく朝ごはんを食べる羽目になった。
そこから俺は、あとから起きてきた妻を駅まで送り届けて、洗濯物や掃除などの家事を終えた。
少し疲れていたこともあって、俺は仮眠を取ろうとベッドの中に入った。
「んん…」
気づけば目覚ましもかけずにぐっすりと寝てしまっていた俺は、枕元の時計を確認すると、もうすぐ17:00にもなろう、というような時間帯だった。
寝過ぎたな…。
どうやら、息子はまだ帰っていないらしい。
そろそろ、探しにでもいくか…と、今日初めてパジャマから着替えた俺は、サンダルを履いて家を出た。
するとちょうどいいタイミングだったらしく、息子が空から飛んできた。
「ねぇねぇお父さん!地球一周してきた!!」
と、息子はいった。
「そうかそうか、一周旅行は楽しかったか?」
と俺が聞くと、息子の顔色は一変、曇ってしまった。
「空を飛ぶのは楽しかったんだけどね、『ぼくしんぐちゃんぴおん』って人も、『れいちょうるいさいきょう』って人も、みんな一瞬で倒れちゃった……。」
と、少しがっかりしたような表情で言った。
やっぱりそうか...。
「はあ、だからいつも父さんが言ってるだろう?」
そう言いながら俺は、気だるく思いながらも、体に黄金のオーラを纏い、言った。
「大きすぎる力は、人を孤独にする、ってさ…」
息子が修行してきた コーク @adgjmptwadgjmptwad
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます