第13話 夏祭りの前で
夏休みに入り一週間が経った。八月も中旬で日差しが眩しく、部屋のカーテンを閉め切っている。
私の宿題の進行状況は0/100。そこまで量があるわけではないが、手をつけていない。
もう既に、宿題が終わっている優等生たちはテスト勉強でもするのだろうか。
この一週間、何もせずに部屋でゴロゴロとスマホを眺めて、眠くなったら寝るという、怠惰な生活を送っていた。
しかし、今日は外に出なければならない。部屋着から着替え、鏡で自分の姿を見てみる。
可愛げのないズボンに、黒いパーカー。スカートなんておしゃれなものは私には似合わないためタンスの奥に眠っている。パーカーは私が愛用しているもので一人で買い物に行く時などに使っている。ちなみに年中使用している。
財布しか入っていないカバンを肩から下げ、家を出る。
外の気温は暑く、蝉の鳴き声が響いている。
重い足取りでバス停まで向かった。
◇
目的地に着くとそこには一人の男の子が立っていた。ショートカットのいかにも運動ができそうな顔の少年。
共哉は私の姿を見つけると、駆け足で寄ってきた。
「お待たせ」
「やっと来たか…」
「別に時間通りでしょ。
「流石に来てないよ。待ち伏せのために一時間めに集合したんだから」
現在の時刻は午後二時過ぎ。霧江と
霧江たちの目的は昨日から行われている夏祭りだ。
毎年この時期に三日間開催していて、この街の大きなイベント事の一つだ。
「共哉は昨日、お祭り行ったの?」
「あぁ、部活の友達とな。そういう、
「行くわけないでしょ。私、人混み好きじゃ無いから」
「そっか…」
ーーこれから、こいつと一時間居るのは気が滅入るな。
「お前、暑くないのか?」
「このパーカー?暑いよ。でも日焼けするし__、あまり肌を露出させるとビッチみたいじゃない?」
「お前、それでも女子かよ」
◇
三十分過ぎた。交代で休みながら、霧江たちが来るのを待っていたとき。
「あれ、霧江じゃないか?」
「どこどこ?」
「あの、灰色の半袖ジャケットを着てるの」
「__あっ…」
外行きの格好の霧江を見るのは初めてかもしれない。あの格好の霧江をかっこいいと思う反面、朝日のために着て来ている事実に嫉妬してしまう。
待ち合わせの時間よりも早く来ているところも嫉妬ポイントだ。
「ちゃんと、おしゃれしてくるんだ__。」
「……」
そこから、少し沈黙の時間が続いた。霧江はソワソワとした様子で時間を確認している。
それから、少し経って朝日が来た。夏祭りにしては気合の入った浴衣に霧江も少し驚いていた。こちらも、待ち合わせの時間よりも早く着いている。
「…追いかけるよ」
共哉が声を掛けるが、私は気持ち沈んでいて立ち上がる気力も起きない。
結局、共哉に手を引かれて二人を追いかけるのだった。
あとがき
ご視聴、ありがとうございました。登場人物たちの夏の私服が明かされました。朝日の私服に関しては、ボーイッシュな感じをイメージしています。
深雪のメンタルは少しずつ不安定になっていますね。
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