第4話 タイムリープ実験

 二回目の生活を送っている時にこんな事を考えた。

 タイムリープの制限は?代償は?


 力には代償が付き物だと思う。努力にしろ、才能にしろ__。ましてや、こんなにもすごい「タイムリープ」という力に代償が無いとは考えられなかった。

 もしかしたら、何らかの制限があるのかも知れない。


 そんなことを考えたが、万が一本当に死んでしまった場合、取り返しがつかないと思っていた。

 しかし、私は二回もタイムリープをしている。死んだらタイムリープすることは、ほぼ確実と言っても良いだろう。

 だからといって、過信はできない。何度でもやり直せるからといって無闇に命を落とすのは危険だ。


 だからこそ、実験が必要だ。


 高校入学初日(三回目)。いつもより早く家を出た私は学校に行くフリをして、母が仕事に出かけるのを待った。


 今日は登校しないで、実験の為に自殺をしようと思う。

 とはいえ、母がいるところで自殺するのは申し訳ないし、やろうとしても止められるだろう。だから、母が仕事に行くのを自宅が見える位置で確認していた。


 登校時間までに死なないと、学校から母に連絡がいく。心配をさせたくない為、早くしなくては。

 とりあえず、こうして母が出るのを待っている。


 側から見たら、不審者であることは間違いないが、この辺は人通りが少ないし通報されることはないだろう。


 母が車に乗り、仕事場に向かった。私は車が見えなくなるのを確認してから、動き出した。


 いつも登校している時間に家にいるのは何だか、ズル休みをしている気分になる。まぁズル休みだけど。

 私は家に入ると、早速、制服を脱ぎ部屋着に着替えた。別に着替える必要は無いが、これから自殺するにあたって邪魔になりそうだった。


 台所に向かい、を取り出す。どこの家庭にも一つはある包丁だ。

 今回、私はコレで死のうと思う。

 ところで、どこを刺せば良いだろう。喉?肺?心臓?

 痛いのは嫌だからすぐに死ねるのがいい。心臓は骨があるから難しいけどすぐに死ねるかもしれない。


 包丁の刃を心臓に向ける。一気に恐怖が込み上げてきて手が震える。


ーー大丈夫。私は二回も死んだんだから__


 心を落ち着かせ、覚悟を決める。


『グサッ』


 内臓のブニブニした感覚がしたと思ったら、刺し口から大量の血が溢れ出た。

 痛い。胸が張り裂けそうと言ったヤツはこんな痛みを体験したのだろうか。

 どんどん、思考が鈍っていき、手から順に体が麻痺していく。


 自分の血で濡れたフローリングに倒れ伏す。視界が赤く染まり、意識が遠のいていった。


 ◇


 目を覚ますとベッドの上。日付は四月十日。時刻はさっきの四、五十分前。

 戻ってきた。これで確定したことがある。いつ死んでも、絶対に同じ日の同じ時間に目を覚ます、という事だ。


 心の奥では、中学時代に戻ったらどうしようと思ったが、杞憂だったらしい。

 実験を続けよう。とりあえず、ベッドから降りてリビングに向かった。


 これまで、事故死、溺死、失血死?をしてきた。

 なので、あまり被らない方法を試してみた。落下死、毒死__。


 今までの中でどれが一番苦しかったかというと溺死。一番苦しくなかったのは毒死だ。しかし、毒を調達するのが大変だった。


 実験で死んだ回数で言えば、二、三回程度。

 実験なのに試行回数がなぜこんなに少ないか、理由は単純。普通に苦しいからだ。目覚めたら外傷は無いものの、記憶は持っているわけで、精神的にキツいのだ。


 結論としては、タイムリープの制限や代償は特には無いが、強いて言うなら、私の精神が保つ限界まで、ということになるだろう。


 六回目の四月十日が始まると共に、霧江と付き合う為、私は再び動き出した。




あとがき

 ご視聴、ありがとうございます。薄々気づいているかもしれませんが、深雪は頭は悪い方の部類です。

 不登校だった深雪に芽生えたズル休みの自覚、それは二回目はちゃんと学校に行っていたからと言えそうです。

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