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「風間さんを巻き込んでしまったのはごめんやで。でも、どう? ちょっとは楽しくなってきたんやない? って、俺の願望やけどさ。風間さんはなんか、ずっと苦しそうで見てられん。でもレンズを通して風間さんを撮ってると、そのむきだしの感じも、悪くないなって思うんよ」
むきだし。
そうか。蓮には私の感情が透けて見えていたのか。心がむきだしになっていたら、あの竜太刀岬の岩肌みたいに風で削られてしまう。私はずっと鈍感で、自分自身の心を削られていることにさえ気づかなかった。
私はごくごくと喉を鳴らしながら冗談みたいに私の心を見透かしている彼を、じっと見つめた。窓の外で、やっぱり夏の空は明るく輝いて見える。明けない夜がないように、季節はずっと寒いままじゃない。夏になり、秋が来てまた冬になる。こんなに当たり前のことが、日本じゃないと感じられない風景だなんて信じられなかった。
「東京に置いてきた幼なじみがいるの」
どうして蓮に、俊の話をしようと思ったのか分からない。分からないまま、心が決まらないまま、私の中の感情が意思を持ったみたいにひとりでに溢れ出した。
「俊って言うんだけど……小さい頃からずっと一緒で、ガキ大将みたいな子供だった。笑ったりけなしたりけなされたりして。成長するにつれてガキ、っていう感じはなくなって、気づいたらいつもそばにいてくれるの。私が嬉しいときは一緒に喜んでくれるし、悲しい時は馬鹿みたいにしゅんとしちゃって。一心同体って言葉がこんなにしっくりくることはないなって思った」
蓮は私の言葉たちにじっと耳を傾けてくれている。レンズ越しじゃない、蓮の瞳を通して私はどう映っているのだろうか。
「でも、中学校を卒業する前に好きだって言われた時、一心同体だったはずの俊の心が、ズンって私の胸に迫ってきたの。俊は私を飛び越えて、いつの間にかひとり大人になっちゃったんだって、思って。私はもちろん俊のことが好きだった。でも、突然目の前に差し出された彼のむきだしの想いを、私はどうやって受け止めたらいいか分からなくて……中途半端な、返事をした」
中学校の卒業式の日、好きだと言ってくれた俊がどれほど身を焦がして勇気を振り絞ってくれたのかを考えると、私は今でもぎゅっと身体を締め付けられるような痛みを覚える。
俊の期待に応えられなかった自分の弱さと向き合わなければならなくなって、私はずっと岩に砕ける波のように、心が散り散りになりそうだった。
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