ダンジョン攻略RTA
「Hey! Japanese students! My name is Refina Crosford!」
魔造硬質セラミックで出来た古めかしくもモダンな扉を開け、私は少女達にそう言い放つ。
私の名前はレフィナ・クロスフォード、栄えある大英帝国より派遣された魔法師でありSIS──秘密情報部、MI6とも呼ばれていた──の諜報員だ。なので実年齢も周囲とは二つ程上であり、魔法については少なくとも私が所属する事になったこのクラスに居る誰よりも熟知している。
さて、大日本帝国──我が国の同盟国であり魔法列強国の一角。そんな国に、世界初となる男性の魔法体質者が出現する。諜報員が派遣されるのは当然であった。
如何に同盟国とはいえ魔法学園は最重要機密施設。公に入る事など出来る筈もなく、本来は現地協力者を作る筈だったのだが……ここで予想外の事態が発生する。何を隠そう、今私がここに居るのは日本側からの提案があったからなのだ。
善意でやっている訳ではないだろう。どうせ諜報員を入れられるのならば監視出来る方がいいと考えているのだろうが……まあ、私は取り敢えず与えられた任務をこなしつつ学生という身分を楽しもうではないか。
今回私に与えられた任務は主に三つ。
まず、藤堂快人の調査。次に日本魔法界そのものの調査。特に柊輝夜などは本国からも警戒されており、私も耳にタコが出来る程調査しろ調査しろと言われたものだ。
そして三つ目は──
「ハーイ! Mr.Todo! これからおねがいシマスね!」
「ああよろしくな、レフィナ」
教師に案内され、藤堂快人の隣に座る。そして自然体では絶対にしないような満面の笑顔で彼に手を差し出す。彼は何の警戒も無くその手を握った。取り敢えず第一印象は満点だろう。私の任務の為には彼の好感度を限りなく上げなければならないのだ。
そう、三つ目の任務とは"藤堂快人の遺伝子を入手する事"──要するに、私に彼の子を孕めという訳だ。
未だ前例の無い"魔法師を両親に持つ子供"、それに本国は興味津々らしい。
ただ、これには障壁がある。
「仲良くしまショウね!」
「ああ」
「~っ!! 何よデレデレしちゃって、このスケベ!」
「は、はあ!? 何だよ比奈!」
彼の幼馴染だという若草比奈。先行して潜入している協力者──私は上層部の手違いで二週間遅れた──によれば、元々割と近かった距離感が例の襲撃事件後から急接近したらしい。多分そこで何かあって恋人同士にでもなったのだろう。
クソ真面目に他人の恋愛事情を記した報告書が届いた時には笑いかけたが、しかしこれは極めて重要な情報である。藤堂快人の下半身が異常に軽くでもない限り、二人の仲を裂かなければ私が彼の子を孕む事は叶わないのだ。普通に二週間前に入学していればここまで頭を悩ませる事もなかったのに。上層部の糞野郎。
「演習の内容は──ダンジョン攻略だ。攻略は四人一組のパーティーを組み行う。組み分けはこちらで決めてある、確認しろー」
さて、私が編入したこの日は偶然にもダンジョンを攻略する日であった。だがこれはチャンスだ。日本政府との取引でこういった物ではほぼ必ず私と彼を同じグループにすると決まっている。
なので当然、今回のパーティーでも私と彼は同じだ……何故か若草比奈まで入っているが。何で?
「師匠、よろしくお願いします!」
「し、師匠!? いつの間に!?」
「あれ? 言ってなかったっけ。俺朝露さんに弟子入りしたんだ」
「聞いてないわよっ!」
一人の少女に頭を下げる彼。
その少女は赤紫色のロングヘアにマゼンタ色の瞳を持った物静かな雰囲気──報告書にあった、朝露咲良である。どうやら入学初日の決闘で凄まじい魔法を使い、そして何故か全裸にされ、先日の襲撃では学園全域に散らばった十数体のオークを一瞬のうちに殲滅したらしい。
本国の上層部もこれには驚いた様だ。何しろ事前に一切マークしていなかった生徒がそんな事をやってのけたのだから。二つ目の"日本魔法界の調査"にて重点的に調査する対象に慌てて付け加えられた程である。
そしてどうやら、彼女は今彼の師匠となっているらしい。「そういう関係なんデスね〜」とにこやかに言ったが、内心かなり焦っている。
思わぬダークホースが現れてしまった。藤堂快人の恋の順序的には一番に若草比奈、二番目に彼女、といった具合だろう。こうなってはいっその事夜這いでもかけてしまおうか……ううむ、どうやら私は運命に虐められているようだ。
そんな事はさておき、説明やら配布やら何やらが終わりダンジョンの中に入る。ただし番号順である為に私達のパーティーは一番最後だ。
他のクラスメートが魔装を装着し、ダンジョンに入っていくのを見送る。ぱっと見た感じ気になるのは白髪ロングで長身の女と黒髪セミロングの女だろうか。
前者は確か広野心愛とかいう名前だった筈。魔装は両手両足に鎧、上半身は小さな眼帯ビキニで下半身は局部を隠すだけの前張りとかいうアホみたいに露出度の高い代物だ。そんな名家に生まれた魔法師でも流石に嫌がりそうな物を、彼女は平然と身に着けていた。あの精神力はぜひ諜報員に欲しい。
そんな羞恥心談義はどうでもよく、気になったのは彼女の脚。どうも肌が作り物の様に見えた。あれは多分義足だな、それを生体スキンで隠しているのだ。そんな情報は何も聞いていないのでこれからマークが必要だろう。
後者は織主芽有。魔装は紫と青の混じった和服。下は膝まで隠れており、へそが申し訳程度に出ているくらいの先程とは打って変わって露出度の低い魔装だ。彼女からはここに居る中では結構な量の魔力を感じた。確か入学初日の決闘で朝露咲良と戦ったのが彼女だった筈、こちらも要警戒である。
「最後、パーティー九!」
さて、いよいよ番が回り私達は一斉に魔装を装着する。
事前情報通り、藤堂快人は魔装無し、若草比奈は朱色を基調とした上下分離型で腹を大きく出した和装、秋空雲雀は天狗装束、朝露咲良は緑を基調としたへそを僅かに出したミニスカ振袖。
「そういえば、レフィナは誰と契約してるんだ?」
「そういや説明とか無かったわよね」
「フフ、当ててみてクダサーイ」
首を傾げる快人達。そんな彼らに対し何となく焦らしていると、先程からじっとこちらを見つめてきていた咲良が不意に言う。
「……馬?」
彼女が呟いたその単語に、私は思わず真顔になりかける。
「……That's right!」
「ええっ、師匠正解なんですか!?」
「何で分かるのよ……?」
「何で分かるんすか……?」
私の制服が光の泡となって消え、代わりに魔装の形を作っていく。
白金色の頭巾に馬耳を模した飾り。上半身は胸元まであるブラウンオレンジのケープのみが隠し、やや開いた前面下部から下乳がちらりと見えている。下半身はレッドブラウンのスカートが膝上まであり、尻部には尻尾を模した白金色の飾りが垂れ下がる。靴は蹄を模した様な形状のブーツで、固有の武器は騎手が使う様な鞭だ。
「ケルト神話の馬の女神、エポナ様! いやあサクラ、さすがデスね! どうして分かったんデスか?」
「……何となく、です」
「へえー、凄いデス!」
何で分かるんだよ。
「お前達、駄弁るのはそれくらいにしてさっさと入れー」
と、そこで教師につつかれ私達はそそくさとダンジョンに入る。
ダンジョン内部はゴツゴツとした岩の洞窟といった見た目だ。不思議な事に、何の光源も無いというのに明るく視界には困らない。
周知の通り、ダンジョンでは無限に魔物が湧いて出る。しかし一度湧けばインターバルが発生し──何が言いたいかといえば、我々よりも先に入った者達が倒したお陰で魔物は殆ど居なかった。
戦う手間が省けるのは幸運である事だ。その筈なのだが、ただ一人咲良だけはどこか不満げな表情を浮かべている。
「咲良、どうしたんすか?」
「いえ……折角、藤堂さんの良い、訓練機会になると……思った、ですが……」
「ああ、確かに全然戦ってないっすからね~。まあいいじゃないすか。楽で」
ふむふむと咲良と雲雀の会話に耳を澄ませる。
「……」
「咲良? 何、考えてるんすか?」
「……この辺り、でしょうか」
「咲良?」
雲雀の若干焦る様な声を他所に、咲良はおもむろに杖を地面に向け、一言。
「"ショックカノン"」
刹那、杖の先端に魔法陣が現れたかと思えば轟音と共に青白い光が放たれる。
光が収まった頃、杖の下には長く続く穴が空いていた。
「……エ?」
「これで、よし……」
私はただ、驚く他なかった。
「ちょ、咲良! 何してるんすか!?」
「この先は、第三層、です……」
「ええ!?」
「あ、成程! つまり他のパーティーに魔物が倒されてない階層に先に行って訓練しよう、って事ですね!」
驚く雲雀、合点が行ったらしい快人、声も出ない比奈。見ている分には面白いが現場に居る身としてはたまったものではない。
「か、階層同士の間は十数メートルあった筈デスが……?」
「ええ、ですからそれを……貫いた、です」
貫いた、じゃねえよ。コイツヤバイわ、何でそんな事平然と言えるんだよ。
一階層同士の間が十数メートルの岩盤に守られている。ここは第一層なので二層分、つまり咲良は厚さ約三十メートルもの岩盤をたった一撃で穿った事になる。こいつ本当に一年生か? 私より先に他国の諜報員が潜入している、と言われた方がまだ理解出来る。というかきっとそうなのだろう、報告書に書いておこう。
「さあ行く、です……」
彼女が穴へ飛び降りる。それに続く様に快人、慌てて比奈、オロオロとしていたがやがて諦めた様に雲雀、一人残された私。
「……ああもう!」
ここに居てもどうにもならない。私は意を決し縦穴に飛び込んだ。
無限にも思える短い時間私は穴の中を落下する。未だ赤さが残るドロドロに溶けた岩肌は、彼女の攻撃が如何に強力であったかを物語る。
そうして降り立ったその場所は、先程とは全く異なる雰囲気の空間であった。基本的にダンジョンは地下に降りていく程出現する魔物も強くなり、環境も過酷になる。それを第一層からいきなり第三層までワープしたのだ、ギャップを過剰に感じるのも当然であろう。
そして、謎の縦穴から降りて来た私達を待ち受けていたのは魔物の大群であった。それを見て比奈は顔を引きつらせ、雲雀は軽く悲鳴を上げる。一方の咲良は。
「おお、魔物がいっぱい、ですね」
平然と一言。
「じゃあ早速!」
「待つ、です」
「はい!」
そんな魔物の群れに刀を片手に突撃しようとした快人を彼女が引き留める。
「これからの戦闘では、剣ではなく魔法を使う、です。魔力総量は、魔力を使えば、使う程増える……」
「えっ、でも魔力が」
「安心する、です。私が逐一、回復する、ですから」
「了解です! "リグラ・グレンズ"!」
彼が黒い炎を魔物へ向け放つ。それは先程岩盤を穿った物程ではないにしろ強力で、瞬く間に魔物を灰にしていく。だが威力相応に魔力も消費するらしく、すぐに息切れしてしまう。そんな彼の身体を淡い光が包み込む。
「これは……ありがとうございます!」
どうやら先程言っていた"回復"らしく、彼は元気を取り戻すと再び魔法を連射し始める。
そんな彼の活躍は凄まじく、後方の私達はといえば時たま抜けてくる数少ない魔物を倒すのみ。彼程ではないが比奈にも光る物はあり、彼ら二人で殆ど終わってしまいそうだった。
「二人とも、凄いっすね……」
「いやマア、二人はミーから見てもGreatだと思いマスよ? 普通じゃないデス。あれと比べるのはきついデスよ」
「そうっすよねー……」
二人と比べて落ち込む雲雀を励ます。
それはともかく、これは予想外だ。私としては苦戦する彼を颯爽と助ける事で好感度を上げようと思っていたのだが、これでは逆に私が守られる形となってしまっている。非常にマズい。
そうして進み、ダンジョン進入から約三十分。私達は最下層──第四層に到着したのである。二層分をすっ飛ばしたとはいえこれは驚異的なスピードだ。快人や比奈の消耗を逐一咲良が回復し、普通は休憩を挟むのをほぼノンストップで進んでいたのが効いたのだろう。
確かに快人の活躍は見る事が出来た……だがこれを果たして彼の本当の力と言ってしまっていいのかは疑問である。そもそもリグラ・グレンズを撃ちまくっていただけだし。
「あ、アレじゃないっすか? 先生が言ってたやつ」
「そう、だと思うけど……何か様子変じゃない?」
第四層到着から約十分、私達はダンジョン最深部に到着する。そして着くやいなや雲雀がある一点を指差し声を上げ、それに比奈が警戒しながら不安げに言う。
そこには一体の魔物が鎮座していた。全身が禍々しい紫色に変色した体長二メートル程の狼、これの内部にある魔石を持ち帰る事が今回の演習の達成条件である……のだが。
「死体……? コイツがやったのか?」
そう、今快人が言った風に奴の周囲には血液と肉片が散らばっていた。それは見る限り、同じく狼である様だ。魔石は無い。奴が食べたのだろうか。
だがそれはおかしいのである。何しろ基本的にダンジョン内部の魔物同士で争う事などないのだから。
そう思った瞬間、狼の身体が膨張していく。形はそのままに体長が三メートル、四メートル……やがて七メートルを超えたあたりで止まり、遠吠えを叫ぶ。
「「「なっ!?」」」
「こんなの、聞いてないんデスけど……?」
「……」
ここに出現する狼にこんな機能が付いているなんて情報は入っていない。
だが同時にこれはチャンスだ。ここで私が華麗に奴を討伐し──
「師匠! アレをやってもいいですか!?」
──ようとした瞬間、最前列で比奈達を庇っていた快人が咲良に尋ねる。
話を振られた咲良は軽く頷き、言う。
「無理は、しないように……皆は私が、守る、です……"プロテクション"」
「ありがとうございます!」
瞬間、快人を除いた全員が半透明紫の膜に覆われる。触ってみると、硬い。どうやら魔法障壁らしい。
そしてそれに唯一入らなかった快人はといえば。
「"陽に塗れた雷の子よ、火の星にて希望を捧げたまえ"……」
何やら、唱えていた。
ぶつぶつと謎の文言を喋りながら、狼の攻撃を避けつつ抜いた刀の切っ先で自身の前面の空間を何やら切り裂いて──その切り裂いた軌跡が光となり、やがて円形の紋様──魔法陣を形成する。
ここまでで私は察した。今、彼が唱えているのは『詠唱』だ。彼は今、魔法を使おうとしている。
私がぽかんと眺めていると、やがて彼の形成した魔法陣の中心に光の粒子が集まっていき、そして──
「──"ショックカノン"!」
ぽふっ。
──何も、起こらない。
「……無理かー」
あれだけ大仰な詠唱をしておいて特に何も起こらなかった彼はがっくりと肩を落とし、そのまま膝をつく。どうやら失敗しても魔力はしっかりと消費する様だ。
そんな隙を魔物が見逃す筈もなく、彼にめがけて飛んでいく。それに比奈は悲鳴を上げ、彼を助けんとシールドの外に出ようとする。ああ、何と良いシチュエーションだろう。彼女よりも私が彼の元に行く方が速い。これで私の好感度はプラスに──
「やっぱり、まだ無理、ですね……」
「す、すみません師匠……」
──出来ない。
一体何が起こったのか分からないが、いつの間にか咲良が彼の前に立っており、そして魔物は私達が入っていた物と同じシールドに閉じ込められていた。
それに向け、彼女は杖を向ける。
「改めて、手本を見せる……よく見る、ですよ……」
そして彼女は詠唱を始めた。
「"陽に塗れた雷の子よ、火の星にて希望を捧げたまえ"」
いつものどもった喋り方とは打って変わり、まるで機械の様な流れる様な詠唱。
「"冥界にて散り、大地に蘇る。天の覇者を墜とし、地の雄を灰へ"」
「さ、咲良のあんな喋り方、初めてみたっす……」
「……まるで歌みたい」
雲雀と比奈が、まるで見惚れる様に彼女を見つめている。
どうやら二人から見てもこの様子は異様らしい。
「"永遠の宙を駆け、数多の敵を撃ち穿て"──」
彼女の杖の先端が動き魔法陣を空中に描く。その動作には一切の澱みが無く、まるで予め書いてある物をなぞるかの様な正確さだった。
そして、最後に一言。
「──"ショックカノン"」
轟音、閃光。
爆発音にも似た音が鳴り響き、青白い光線がシールドに閉じ込められた魔物へと宙を切り裂きながら突き進む。そしてまるで風船を割るかの様に易々とシールドを貫いた光線は魔物を穿ち、その全身を完全に消滅させた。
それをなした閃光はといえば魔物を消滅させた瞬間に消えており、恐らくは彼女が意図的に消したのだろう……
……いや、何だコレ。私は心の中で滝の様な汗を流していた。
先程ダンジョンに縦穴を作った時は突然の事だったので感じ取りにくかったが、込められた魔力、凄まじい威力、そして魔力操作の正確さ。その全てが飛び抜けている。彼女と並び立つ魔法師は我が国でも数人しかいないのではないだろうか。私は当然無理だ。
いや、確かに報告書の書面ではこれよりも遥かに凄い事をやっていた。やっていたが、実際に見るまでは正直舐めていた。
──きっと驚くと思うっすよ──
不意にダンジョンに入る前に雲雀に言われた事を思い出す。
あの時の私は確実に咲良の事を舐めていた。今ではそんな事絶対に思わない。
藤堂快人、魔物の異常個体、朝露咲良。ああもう、報告書に一体どれだけの事を書けばいいんだ。私は取り敢えずそれに頭を悩ませた。
と、そこでふと一つの事を思い出す。
「……っていうか、消滅させちゃったら魔石取れないんじゃ」
「……あ」
結果として、私達は再び魔物が湧くのを待つ事になったのだった。
「ゲホッ、ゴホッ!」
「雲雀大丈夫……!? ちょ、ちょっと貴女、血が出てるじゃない!!」
帰路、ダンジョン内部を逆走している時、不意に雲雀がくぐもった咳をする。
それを比奈が気にかけると、彼女がそんな声を上げる。見ると、雲雀が口を押さえていたであろう手の平にはべっとりと血がついており、また口元にもツーと赤い筋が流れている。
土の様な顔色といい、どう考えても異常事態だった。
そんな彼女に咲良が近付き、杖を構えて一言。
「"ハイネスヒール"」
瞬間、雲雀の身体が強い薄緑色の光に包まれる。
すると見る見るうちに彼女の顔色が良くなり、息も安定する。
「お、おお……ありがとうっす、咲良」
「いえ……でも、帰ったらもう少し、精密な検査を──」
と、咲良が言いかけた瞬間雲雀の面相が変わる。
「や、やめて下さい!!」
「──ぇ」
突き放す様な言い方に咲良は呆気にとられる。そんな彼女の様子を見て、雲雀はやってしまった、という表情をする。
「あ……ご、ごめん」
「……い、いえ。私も……踏み込み過ぎた、です……」
「いや、咲良は私を思ってやってくれたっす。わ、私の言い方がキツかったせいで……と、とにかく、私は大丈夫っすから。さっきかけてくれた魔法で元気百倍っすよ!」
「……それなら、よかった、です」
しゅん、とする咲良を謝罪ついでに励ます雲雀。
彼女を元気づけようと袖を捲りサムズアップするその姿が、どこか空元気に見えたのはきっと見間違えではないのだろう。
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