第3話 たまや~?

 突然始まった破壊活動に、向こう側にいた人間どもは大パニックだ。


「ヤダっ!目に砂入った~」


「ちょっとぉ!砂が髪につくんですけどぉ~」


「そんなのガードしとけよ~」


 パニック連中とは違い、こちらはのんきな会話が交わされる。

 その間も俺は、委員長様の助手でいそがしい。

『神フォン』投げ渡すなっ!俺の私物だっつーのっ!


 スクリーンを一瞥した委員長様。今度は野球ボール大の高エネルギー体を100個程作り出す。

 うわあ~目で理解したんですかスゴイですね~器用ですね~。


「八乙女!100本バッティングだ !! 」


「マジかよっ!! 鬼畜かよっ !! 」


「これぐらいできないと甲子園は遠いぞっ!!」


「いやんっ 俺一人で行けるところじゃないんですけどっ」


 野球は団体競技です、委員長様。

 文句を言いながらも八乙女は、取り出した自前のバットでフルスイングを入れるが「え?なにこれ?」「重くねぇ?」「めっちゃ腕しびれる」と普通のバッティングと違う音が響く。ドコーンとかドドーンとかいっちゃってる。

 どんどん打ち出された術式は委員長様の計算によりそれぞれの方向へ打ちあがり、どこか遠くで破裂音が響き更に騒ぎがデカくなる。え?花火かな。


「はい、35~ 36~ ピッチ落ちてるぞ~」


「八乙女~踏み込み甘くなってるぞ~はい、次~」


「脇開いてるぞ脇~」


 外野の男子からの容赦ない声援の中、八乙女は一人頑張ってる。

 俺と委員長は手元にあるスクリーンを確認していると、目標となる点がだんだん減っていくのがわかる。 距離も方向も違うのにすげぇな、どうなってんのこれ。


 八乙女が一人頑張っている間、女子たちは何をしているかと視線をやれば、謎の対決をしていた。

 片やキラキラ集団代表(?)の女の人。さっき演説してた人かな?片や我らが代表、副委員長の七瀬美馬。なぜか無言のにらみ合いが続いている‥‥‥‥無言なのに、怖い。


 二人のにらみ合いの間も八乙女のバッティング音が響く。

 あ、なんかわからないけど女の人が膝から崩れた。「くっキメが‥‥‥」とかつぶやいてる。よくわからないが、ものすんごい戦いであったのは確かだ。女子がメッチャ沸いている。

 うん、俺らには解らない。たぶん知っちゃいけない。理解してもいけない。


「─────よしっ次だ!移動するぞ!! 」

 

 ガっと襟足をつかまれて空中に浮かび上がる俺。

 ─────おおぃ! 飛ぶなら飛ぶって言ってくれっ、俺だってそれぐらいできるのにぃ !! 頑張ってできるようにしたんだよ『〇〇術モドキ』! ‥‥‥‥まあ、クラス全員できますけどね。


 はいはいはい。 委員長様は移動しながら、俺のタブレットを見たいんですね。

 俺とタブレットセットなんで。近所のホームセンターで買った草刈り用のゴーグルを装着しながら、下のみんなに合図を送る。


「────おおい、つぎ行くぞ」


「あっもうここいいんだ。みんな─────次だって」


「よっしゃ行こうぜ!」


「えっ俺の事は放置なの?」


 ごめん、八乙女。委員長に言ってね。


「あとここの仕上げは─────七瀬さんで」


「問題ありません」


 召喚された数名の集団は、それぞれのゴーグルを装着しながら次々と空へと飛んだ。

 その光景を唖然としながら見上げるキラキラ集団。いや、もういろんなものが破壊され、更に瓦礫と砂とほこりがこびりつき残念集団になっていた、はもう只々見送るしかない。


 ─────去ったと思った人影が一つだけ残った。


 副委員長の七瀬だ。


 『裁きの矢』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る