第1話 選ばれしもの?

俺は名前はリルク。まだまだ成長期の村では悪ガキと言われる15歳。短髪青髪の【自称】超絶イケメンです。

今日は俺のとてもとても大事な日なのだ。そうスキルが分かる日だ。


「リルクよお主スキルは...」


「なんだよ?早く教えてくれよ。とんでもないレアスキルで声も出ないのか?」


俺は鑑定士と呼ばれるスキル持ちの村長に見てもらっていた。

俺のことだし誰もが驚くようなスキルに違いない。そう考えていた俺に返ってきた言葉は衝撃的ものだった。


「お主のスキルは名前がない。正確には【???】というのはあるがスキルの効果が分からんのじゃ」


「...は? てことは俺にはスキルは大ハズレってことかよ」


「ハズレかどうかも分からん。聞いたこともないスキルじゃからな。。。」


10歳になってから鑑定士のスキル持ちに見てもらうことで宿ったスキルの名前や効果が発現する。

人間はスキルと呼ばれるものを持って生まれる。しかしスキルも当たりハズレが存在するのだ。

当たりスキルで有名な所だと魔法使いのような魔力が宿り魔法が使えるようになるスキル。

ハズレスキルだと掃除上手、料理上手みたいな生活する上で少し便利になる程度の能力だ。

だが俺のスキルは効果も名前も分からない【???】というスキル...


「こんなスキルでどうやって世界を救えばいいんだーー!!」


世界を脅かす魔神を滅ぼし大英雄となるという俺の小さい頃からの夢がここで終わってしまうのか...【あの人】に何て言えばいいんだよ...


膝から崩れ落ちる俺を見て村長が申し訳なさそうに口を開く


「もしかしたら儂が知らんだけで激レアスキルかもしれんぞ...? 儂も王都に手紙を出して色々聞いて見るから元気だすんじゃ」


「そ、そうだよな!? 俺のスキルが全く使えないハズレスキルなわけないもんな!?」


「.....」


村長は目を合わせず出来もしない口笛をした。


「もうほっといてくれー!」


涙ながらに村長の家を飛び出す。後ろから声が聞こえたが止まることはなかった。


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足が限界を迎え仰向けに倒れる。どれだけ走っただろうか。

家を飛び出した時にはお昼だったはずだが今は月が見える。夜空を眺めながら今日のことを思い返す。

村長が知らないだけで俺のスキルはまだハズレと決まったわけじゃない。なんなら歴史上1番凄いスキルの可能性すらあるのだ。村長も王都に聞いてくれると言っていたし王都なら何か知っているかもしれない。とりあえず今日は家に帰って結果が分かるまでゆっくりするか。


そう思い立ち上がった時、背後から聞いたことのない声が聞こえた。

背後を振り返るとそこには背丈1m程のゴブリンと呼ばれる魔物がヨダレを垂らしながら見ていた。


俺は知らない内に踏み入れてはいけない場所に来ていたらしい。そこは魔の森と呼ばれる魔物が生息する森だった。村の外には結界が張られているので魔物が入ってくることはないが結界の外まで出てしまっていたのだ。


(考えなしに何やってんだ俺は...!)


背筋を凍らしながら自分に悪態をつく。とにかく今俺が出来ることはひとつだけ。

感覚のない足を無理矢理動かし全力疾走する。

魔物に人間が勝てるわけがない。今出来るのは分け目も振らず逃げることだけだ


しかし最弱と言われるゴブリンも人間と比べたら遥かに身体能力が高い。

10秒もしないうちに追いつかれゴブリンの拳が振り下ろされた。


(俺はこんなとこで死ぬわけにはいかないんだよ!)


逃げることが出来ないなら殺るしかない。

俺は身体に向きを変えカウンターの要領でゴブリンの顔面を殴ることに成功する。


「よっしゃ手応えあり!!」


だが現実はあまりにも無慈悲である。ゴブリンは何事も無かったかのように立っていた。

そしてお返しと言わんばかりに俺の腹を殴る。

感じたことのない痛みと共に吹き飛ばされ木に激突して床に倒れた。

頭を強く打ったのか意識が朦朧としている。全身の骨が変な方向に曲がり何本折れてるか分からない。

満身創痍な俺を見てゴブリンは楽しそうにケタケタ笑っていた。


(はっ、所詮人間は魔物には勝てないのかよ。スキルもハズレっぽいしこりゃだめだな...)


ゴブリンは目の前で激痛に悶える俺を歪んだ笑顔で見下ろしていた。

指一本も動かすことの出来ない状態でゴブリンの顔を見ながら、ふと昔の事を思い出す。


『貴方はこの世界の希望よ。愛しているわ私の...』



美しい鈴の様な声は忘れることが出来ない。願わくば生きてあの声をもう一度聞きたかった。

だがあの約束も守ることは出来ないみたいだ。

身体が冷たくなっていくのが分かる。俺はもう助からないだろう。


ゴブリンが足を大きく上げ踏み潰す体制に入っていた。


(あぁ、踏むなら頭がいいな。痛みを感じることなく楽に死ねる...)


死を覚悟した俺の耳に突如殺伐とした雰囲気には合わない能天気な女性の声が聞こえた。


「こーんな雑魚に負けてたら困るんですけど〜」


風切り音が鳴って大きな血しぶきが舞った。ゴトッと音がしたので見るとゴブリンの凶悪な顔が横に落ちていた。どうやら声の主が首を切り落としたらしい。

血が付着した剣を肩に担いだまま顔を覗き込むように屈んだ。


「こんなのが世界の希望か〜」


俺の頬を指でつつきながら聞き覚えのあるフレーズを言った。霞む視界で声の主の顔を見る。

ハッキリと顔は見えないが10代後半くらいの女性に見えた。


「お前は一体誰だ...?」


「私はあんたの味方だよ。名前はリエ。年齢は秘密♪」


絞り出した声にふざけた返事が返ってきた。いつもならキレてる所だがそんな元気もない。


「とりあえず助けてくれてありがとよ。お礼と言っちゃなんだが俺に出来ることはあるか?」


「そんな状態でよくそんなこと言えるわね。あんたって面白いわ!じゃあ一つだけ!」


咳払いを入れた後、今までのふざけた態度を辞めて真剣な表情になる。


「強くなって。貴方には世界を救ってもらわないといけないのだから」


「よく分からないスキル持ちでも強くなれるのか?」


「安心しなさい。貴方のスキルは特別。実感はないかもしれないけど世界を救う力よ」


リエは頭を優しく撫でながら微笑む。最初とは別人のような印象だった。

少しすると心地よい感覚を最後に俺の意識は途切れた。

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