エピソード1 非日常

 ――― 一時間前。




 私は全寮制の高校に入学した。新しい環境になってから早くも一ヶ月が経とうとしている。生ぬるい風が部屋中を包み込む中、ベットの上に座り、ただひたすら空を眺めていた。早く親元を離れたかった。ひとりでも生きられると思っていた。

 ひとりで生きるなんて不可能なんだと大人が口を揃えていっていたことは本当なのだと初めて実感した。学校で新しい知り合いはできたが、友達といえる存在はまだいない。

 何をやっても上手くいかなくて、やりたいことも見つからない。生きる意味、生きるということはなんだろうと、哲学的なことまで考えだしてしまう始末だ。


 今日は流星群が見れるらしい。今朝のワイドショーで特集が組まれていた。この十数年で一番大きい規模と放送で笑みを浮かべながら話していたアナウンサーの顔が思い浮かぶ。

 もし見えたら、何かいい事ありますようにとお願いしよう。ぼんやりとそんなことを考えながら、寮の自室で一人寂しく、明日の用意をする。同じような日々の繰り返し。同じような考えを毎日繰り返している。


 突然、視界が真っ白になって何も見えなくなった。恐怖が身を包み、身体が強ばった。しかし、とてもワクワクしていたのだ。この非日常的な体験に。

 目を開けているはずなのに、何も見えない。首をふって辺りを見ようとしても視界は白いままだ。方向感覚もなくなってしまった。


 段々と視界は晴れて、部屋が見えるようになってきた。目の前に胡散臭い格好をしたおじさんがいる。汚れて黄色くなった布を体に巻きつけたような服に、伸びた白い髪と髭。



「どうも、神様です。」

 おじさんはそう言った。


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