第22話

「土産」


「なにかなー?開けるよ?いい?」


「早く開けろや」


「二郎からなんて嬉しいなぁ。…えーこれは…なんとも」


とてもかわいいつけ耳。うさぎだ。父さんをおちょくるのがトラジは好きだ。


「つけろよ」


「あーなんだか恥ずかしいなぁ。これ四季さんに似合いそうだよ?」


「しません」


あっさり断られた。ので、父さんはつけた。うーん、やっぱり変だな。


「こういうのつけて、一緒にまわりたかったなぁー。スケジュール合わなくてごめんね」


「父さんどうせ乗り物酔いするし」

「絶叫系無理だし」


双子のこの言い様は…全く。


「父さん、冬休みは行こうよ」


「春〜そうだね!二郎は予定早めに教えてよー」


「それは無理。こいつらデートの予定が決まってねーし」


「…デートかぁ。そっかぁ…秋もデート?」


「いないよー今のところ」


「うわー今のところって?秋は怪しいなぁ」


「秋は女子から告られるの待ってるんだと。だから父さん。告られたらすぐ付き合う気だよ、秋は」


「えー!そうなのかぁ秋。モテるなぁ」


「兄貴にはそういうのわかんねーだろーな」


「わからないよ。中学生なんて勉強しかしてなかったからなぁ」


「でもいい銀行員になったんだからいいじゃないの。高卒でふらふらしてるよりは全然いいよね」


えーっと、母さんのトラジに対するいじめだ。


「…じゃあ秋にも彼女できたらさ、一緒に父さんも遊ぼうよ」


「だめよ。彼女は私とお家でお話しする」


「えー四季さんどうして?」


「面接」


「えー!面接してたの!?毎回?そうなの?」


「もちろん」


そ、そうだったのか?

みなみもいつの間にか面接されたのだろうか?結果とか、聞かないのかな?


「それってー尚巳ちゃんも面接したの?」


秋は興味津々だ。


「したよ?」


「いつ?」


「冬に内緒で」


「え、尚巳変なこと言ってない?」


「さぁ?どうかな?」


「それって面接した結果は教えてくれないの?」


さすが冬。俺が言おうとしたことだ。


「内緒」


「母さんそれは意味ある?」


冬は少し呆れてる。


「あるよー。二郎くんの彼女も面接してあげましょうか?」


上から目線。


「いや…じゃあ帰るんで」


トラジは母さんを苦手としている。


「えーもう?もっと話そうよー二郎ー」


「お前はとっとと寝ろ」


「ひどいなぁ」


父さんの引き留めは虚しく、さっさと帰ってしまった。

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