第3話 初めての接客

「ホールの説明はこれで終わり。後は魔術について教えないとね」


 この食堂では、ダンジョンに挑む者達を癒すために、回復魔術を料理の品にかけて提供しているのだという。


「とはいっても、メモに書いてある呪文を読み上げればいいだけなんだけどね」

「そうですか…出来るかな」

「大丈夫。あなたなら出来るわ。試しにやってみる?」

「はい!」


マリーからメモとコーヒーカップを手渡された私は、コーヒーカップの目の前でメモに書かれた呪文を読み上げる。


「ルイス…」


 呪文は思ったより短かった。呪文を唱え終わるとコーヒーカップが一瞬だけ桜色に光る。


「わ…」

「うん、ばっちりね☆」

「今の、魔術かかったんですか?!」

「ええ!」


 その後もマリーに手ほどきを受けた私なのだった。こうして魔術を使う度に私は魔女になったという実感をひしひしと感じる。


(これが魔女かぁ…!)


 その実感は、夜寝る時も中々消えずにいてくれたのだった。

 朝。ベッドの中でぬくぬくと寝ていると、マリーが部屋へ私を起こしにやって来る。


「おはよう!仕込み手伝って!開店は10時からね!!」


 私は飛び起きて服を着替えると、1階に降りて手を洗う。仕込みの内容は野菜を切ったりお米をといだりするみたいだ。


「お米とぎます!」

「ありがと、私は野菜切るから!」


 お米をとぐのはやった事がある。ざるに入れて、お米を水で洗い、釜の中にセットする。しかし、炊くのはどうやってやるんだろうか?


「とぐだけでいいわよ。炊くのは魔術で一発だから!」

「えっそうなんですか?!」

「ええ、火の魔術を使うの。開店ギリギリにやればいいわ」

「わっわかりました!」


 それなら安心だ。私はマリーと共にキャベツやニンジンと言った野菜をザクザク切っていくと、あっという間に開店時間数分前を迎える。


「じゃあ、魔術でスープを沸かしてお米を炊いてっと」


 あっという間にご飯が炊きあがる。ほかほかとした匂いがうっすらと匂い出して来た。

 店内の時計が開店時間の10時を示した瞬間、誰も触っていないのにドアが勝手に開いた。


「どうも〜」


 入って来たのは、いかにも探検者といった格好をした、眼鏡をかけた若い男性だった。

 私は早速、お冷を持って接客する。


「い、いらっしゃいませ!」

「おっ、新人さん?」

「はっはい!」


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