茶飲み友達
@KiBno
茶飲み友達
隣の客はよく柿食う客だという早口言葉がありますが、私の友人にはよく茶を飲むものがいるんです。いつも500mlのペットボトルを持ち運んでいるのはもちろん、それをあっという間に飲み干したと思えば、カバンの中から2リットルの水筒が出てきて、それをまたがぶがぶと飲み始めるのです。
ある時はその2リットルの水筒も飲み干してしまって、自動販売機でまた500ミリリットルの茶を買って、また歩き出したと思ったら、つぎの自動販売機につくまでにそれを飲み干してしまうこともありました。
どうしてそんなに茶を飲むのか、何か持病があって飲む必要があるのか聞いたこともありましたが、特にそのようなことはなく、本人はいたって健康だというのです。そんなに茶を飲むと反対に体に障ると忠告したこともありましたが、本人曰く飲み過ぎで体調を崩したこともなく、むしろ飲んでいた方が体調がいいということで大変驚きました。
ある夜も、彼と一緒に出掛けていたその帰りに、居酒屋で夕飯を食べていましたところ、ついうっかり終電を逃してしまった。仕方なくタクシーで帰ろうとしたところ、友達が家が近いから今日は泊まっていけばいいと誘ってくれたのです。酔っていた私はお言葉に甘えることにしました。
彼とは数年の中になりますが家に入るのは初めてでした。居酒屋から歩いて20~30分歩いたところに彼の家はありました。正直歩いていたところ酔いが醒めていて、彼の家で飲みなおせたらいいなあと思っていたのですが、家に入った瞬間そんなことはどうでもよくなりました。あるいは、自分はまだ酔っていたのだと思い始めていました。
そこに居た女性は蛇の髪を持ち、その一匹一匹が自我をもって私の方を見てきました。ある一匹は蛙を見るようにまたある一匹は石ころを見るように、私を見ない蛇もいた気がしましたがよく覚えていません。
「紹介するよ、私の妻だ、とはいっても彼女に戸籍はないから事実婚というやつだがね、安心してくれ、彼女はメドゥーサの血を引いているが、純血ではない、目を見ただけで石になったりしないよ。でもあまり近づかないでくれ、体液に毒があるんだ、人間の体内でも分解できるけど、それと私が少し妬く。」
私はやはりタクシーで帰ることにしました。友人は止めなかった。コンビニで2リットルのお茶を2本買って、タクシーの中ですべて飲み干しました。アルコールが速く分解されるように、速く、毒が分解されるように。
茶飲み友達 @KiBno
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます