第12話【星の力】

「月光羽闇…悪いが一緒に来てもらうぜ」


「抵抗は許さんぞ」


背後から先程爆弾を投げ込んでいだサングラスを掛け帽子を深く被った男2人が現れる。

夜空君はその男達を目の前にしては顔をしかめながら懐から取り出していた物―星の形をした鼈甲色の石を弾かせた。

その石は弾かれると同時に眩しく光出し、あちこちに小さなダイヤモンドの様なキラキラとした石が装飾されている金色の杖へと変化していった。


「やはりそうきたか…邪魔をするなら消えてもらうぜシエレトワール!」


夜空君をシエレトワールと呼んだ男は再び爆弾を取り出し私達の方へと投げ出した。

夜空君は向かってきた爆弾から避ける気配がなく彼に抱き寄せられたままの私は固く目を瞑った。


ズガァァァン!!!


「きゃあぁぁ!!!」


園内に投げ込まれていた爆弾とは違うらしく先程よりも凄まじい威力の爆発。

あれ、でも何も当たってないような…?

おそるおそる目を開くと周囲が球状の白いバリアのようなものに包まれており私達は無傷、どうやらこの結界が爆発の攻撃から守ってくれていた。

そしてそれを張ってくれているのは紛れもなく金色の杖を振りかざしている夜空君だろう。


「チィ…」


「くそっ!」


「羽闇ちゃん。ごめん、ちょっと怖いかもしれないけど我慢してね。」


「夜空君、これって…」


爆発が止み、私に小さく微笑んだ夜空君は結界を解き爆弾が無くなったのかじりじりと後ずさる男達に向けて杖から球体の光を投げ飛ばした。その光は見事に奴等の体に命中し男達は地面へと倒れ込んだ。


「ふぅ。怪我はない?羽闇ちゃん」


「う、うん…大丈夫。星宮君こそ。」


「僕も大丈夫。まぁ初めてここまで力を使ったからちょっと疲れちゃったけどね。」


あの力を使うには相当な体力を消費するらしく微笑んではいるが少し疲れた表情を浮かべた夜空君は金色の杖を元の小さな石へと変化させ懐へと戻していく。


「凄い…夜空君ってあんな不思議な力が使えたんだね!あれって何!?」


「うーんと…説明するのが難しいんだけど、代々星宮家は月の姫を守護していたとされる一族なんだ。さっき僕が使っていた【星の力】というのは一族の皆が皆使えるわけではないんだけど僕以外にも何人かはいるんだ。だけど僕だけはこの力を強く持って生まれたらしくてね…」


「月の姫の守護…星の力?そういえばさっきシエレトワールって呼ばれてたのは何でなの?それにあの石って…」


「それよりも羽闇ちゃん。敵はいつ目を覚ますかわからないし僕達も今のうちに避難した方が良さそうだよ。」


そうだった、敵は単に気絶しているだけ。

周囲もこの男達と私と夜空君以外は誰もいない…園内にいたお客さんは全員無事避難出来たのだろう。

彼に聞きたい事は山程あるが、直に警察も駆けつけるかもしれないし私達2人だけでもこの場を離れた方が良さそうだ。


「そうだね。じゃあこのまま退場ゲートへ―」


?「そうはさせませんわ」


頭上から声がしたと思いきや大きな死神の持つような鎌を持った少女が私達を狙い大鎌を振りかざしていた。


ドゴォォン!!


間一髪セーフといったところだった。

夜空君が私の腕を引っ張ってくれなかったらあのまま鎌となっていただろう。


「ちぇっ、外しましたわ」


ゴシック系のワンピースを着た少女。

銀色の腰まで伸びた髪をツインテールにしており真紅の瞳はまるで宝石のようだ。

めり込ませた地面から大鎌を引き抜きそれを肩に置いてはニヤリと笑いながら私を見つめる。


「貴方…誰?」


「失礼しましたわ、月のお姫様♪私の名は宵闇 麗夢(よいやみ りむ)。実は貴方にお願いがあって参りましたの…私に同行して頂くか此処で死んで頂きたくて♪」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る