第35話 映画を撮ろう!
「う〜ん、どうしましょうか……チラチラ。本当にどうしましょう……チラチラ」
現在、うちに遊びに来たエルンが悩ましげにこちらをチラチラしながらそんなことを口ずさんでいた。流石に気になってきたので俺は彼女に尋ねる。
「一体どうしたんだ?」
「あっ、聞いちゃいます? 本当に聞いちゃいます?」
なんかすごくドヤ顔で言われた。
「うん、面倒くさそうだからやめておくか」
「あー! 待ってください! 冗談です、ちょっと聞いてください!」
「……しょうがないな。で、どうしたんだよ?」
俺が聞くのをやめようとするとエルンは慌てたように言った。俺はため息をついて、もう一度尋ね直した。
「ええとですね……それが、今人族と魔族の中でゲームが流行っているでしょう?」
「ああ、そうみたいだな」
「エルフって基本面倒くさくて。プライドが高いので、私たちだけなんで『叡智の大賢者』様から何も授かってないのよ! みたいなことを言い始めて」
うわぁ、確かにそれは面倒くさい。しかし自分たちの種族のことを面倒くさいなんて言っていいのだろうか? まあ自分たちの種族だからこそ、言えるのか。
「それで、俺はどうすればいいんだ?」
「エルフたちのために何かしらの娯楽を作って欲しいのです!」
娯楽、娯楽か。困ったな。一応、すぐに思いついたものが一つあるにはあるが、こっちで作ろうと思っていたものだ。エルフたちにそれを作ることが果たしてできるものか……。
しばらく悩んだが、それ以外今は思いつかなかったので、エルフたちに託すことにしてみた。
「わかった。映画を作ろう」
「映画、ですか……?」
俺が言うとエルンは不思議そうに首をかしげた。それに俺は頷くと説明していく。
「ああ、映画だ。簡単に説明すると、動く絵でストーリーを組み立てていくものだな」
「絵が動くんですか?」
「そうだ。とりあえず見てみるのが早いかな」
俺はそう言うとエルンをシアタールームに案内する。以前に試作で作ったカメラで撮った適当な映像を流して見てもらおうと思ったのだ。
「これをこうして、こうやって……」
俺は準備をすると、画面の前のソファにエルンと腰掛けて言った。
「よし、流すぞ〜」
そう言って流れ始めたのは、ロシュとドラゴンが戦っている姿を映した映像だった。
『ちゃんと撮れてるかな〜?』
『お〜い、タケル! 妾の勇姿をちゃんと記録するんじゃぞ〜!』
『ああ、任せておけ。バッチリ映ってると思うぞ』
うんうん、ちゃんと音声も流れている。バッチリの出来栄えに俺は満足そうに頷いた。しかしやばりエルンはその映像を見て驚いているみたいだった。
「なんですかこれ!? なんか向こう側に世界が広がってるんですけど! てか、タケルさんが二人!?」
初めて映像作品を見るとこんな風に思うのか。なんだか新鮮で面白い。そして一分ほどの映像が流れてすぐに画面はブラックアウトした。
「ちゃんと流れたな。これなら大丈夫そうだ」
「あれ!? 消えちゃいましたよ!? 大丈夫なんですか、あっちの世界は!」
目を白黒させているエルンにもう少し詳しい説明をしてあげることにした。
「これは映像って言って、過去の自分たちを記録したものなんだ。つまり今映っていたのは、ちょうど一週間前の出来事だな」
「そんなことができるんですね……。流石はタケルさんです。過去の記録をそのまま持ってくるなんて」
ビックリ、みたいな感じのエルンに俺は魔道具のカメラを渡す。
「これで映像を記録するんだ。その記録した映像を継ぎ接ぎして、物語を組み立てていくってのが映画だな。
「面白そうですね! ぜひエルフの国に持ち帰ってみんなでやってみます!」
「ああ、いや。俺も参加したい。ちょっと映画は作ってみたかったんだよなぁ」
しかもここはファンタジー世界。CGなんてなくてもものすごい絵が撮れそうだ。
「もちろん大丈夫です! じゃあ早速エルフの国に行きましょうか!」
こうして俺はエルンとともにエルフの国に行き、映画を撮ることになるのだった。
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