第28話 どうやら試されるみたいです
「おおっ〜、すごい活気だな」
俺はアンナに連れられて王都まできていた。王都は前に訪れたトートリスよりもより活気に溢れている。あちこちで露店の呼び込みが行われ、皆楽しそうに話しながら歩いている。
「だろ〜? この街、と言うよりこの国は特に安全で活気に溢れてるんだ〜。気候にも恵まれてるしな〜」
自慢げにアンナは言う。それからしばらく大通りを歩き、巨大な三階建ての建物の前まできていた。アンナはその建物の扉に手をかけながら言った。
「ここが魔法学会の建物だぞ〜」
「なかなかデカイな。それに色々な仕掛けがあるみたいだ」
「おお〜、やっぱり分かるか〜」
ある程度魔道具も自分で作るようになって、どれが魔道具でどれが魔道具じゃないかも分かるようになった。例えばこの扉には悪意を探知する機能が付いているみたいだし、建物全体には強固な結界が張られているみたいだ。
そして中に入ると2.5メートルくらいのゴーレムがシコシコと書類を運んだり掃除をしたりと事務作業をこなしていた。なるほど、ゴーレムを作れば家事をしなくていいのか。その発想はなかったな。
「こっちだぞ〜」
そう言ってアンナはズンズンと進んでいく。そんなアンナにすれ違う人たちはペコペコと頭を下げていた。
「もしかして、アンナって偉い人?」
「ん〜、そこまででもないぞ〜」
そうなのか? みんなアンナを見るとギョッとして勢いよく頭を下げているけど……。
俺たちは階段を上り三階まで行くと、大きな会議室のような場所に通された。そこにはすでに十人ほどの人が待機していて、その奥、誕生日席にはショタが座っていた。
「ようやくきたね、叡智の大賢者」
「……俺は別にそんな大層な人間じゃないぞ」
俺がそう言うとそのショタはクスリと笑った。
「ふふっ、謙遜しなくていいよ。あのゲーム機を作り、インターネットアダプターを作り、魔道具界に世紀の革命を起こした天才で、さらにはエルフに温泉を伝えたり、芸術方面にも長けている。そんなお方が大層な人間じゃないなんて、そんなこと言っちゃいけない」
……いや、本気で大層な人間じゃ無いんだって。大体『全知全能』と『クリエイト・マジックアイテム』の能力でしかないんだからさ。
そう思っていると太ってゴテゴテの装飾をつけたおっさんが声を荒らげた。
「学会長! やはり儂はこやつが叡智の大賢者なんて呼ばれるのに反対です! きっとズルをしているに違いありません!」
うんうん、もっと言ってやってくれよ。ズル……かどうかは微妙なところだが、まあ近しいことをやっている自覚はあるしさ。あまり持ち上げられすぎるとちょっと恥ずいしな。
そう思っているとショタの学会長は凍てつく視線をおっさんに向け言った。
「あの発明がズルだと言うのか、君は?」
「うっ……しかし一つの発明だけで叡智の大賢者などと呼ばれるのは……!」
「その一つの発明で世界を変えてしまった方が、恐ろしいとボクは思うけどね」
ショタに言い返され黙ってしまうおっさん。もっと頑張ってくれ、おっさん! 俺の今後はアンタにかかってるんだ!
その願いが届いたのか、おっさんは思い切って言い返してくれた。
「だったら! こやつの才能が本物か確かめてみましょう!」
「確かめるとは?」
「目の前で魔道具を作らせればいいのです! もしくは魔法を使わせれば才能が分かるでしょう!」
なるほど、それはちょっと困るかなぁ……。もしそれをして失敗したら気まずいし、逆に万が一にでも褒められたらもっと気まずい。どっちに転んでも気まずい未来しか見えなかった。
だがショタの学会長はニヤリと笑みを浮かべるとこう言い出した。
「それはいい。よし、叡智の大賢者の……ええと」
「タケルだ」
「ありがとう。——それでは、タケル。ボクたちの前で魔道具を作ってみてよ。どんなものでもいいよ」
マジかよ……どうしよう……。唐突に魔道具作りが始まりそうで、俺はどの魔道具だったらそれなりの反応済みそうか考えるのだった。
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