第7話 娯楽を生み出しました
「う~ん、どうすっかなぁ」
レイナを拾ってから一週間ほど、俺は悩んでいた。山暮らしは暇な時間が多いことに気が付いてしまったのだ。何か新しい娯楽を生み出したいが……何を作ろうかな。
異世界転生ものにおいてボードゲームが定番だろうが、レイナが帰ってしまった場合、ボードゲームは二人以上のプレイヤーが必要なので出来なくなってしまう。ということは……。
俺は魔法名『クリエイト・マジックアイテム』のウィンドウを表示させる。これは自動で魔道具を作ってくれる魔法だ。素材はもちろん何もないが、ドラゴンの皮や肉などを変換させるつもりだ。素材変換すると素材ポイントというものが手に入るのだが、ドラゴンの素材はそのポイントがたくさん手に入るから、意外となんでも作れそうだった。
早速作ろうとしてみるのはテレビゲームである。前世でいうところのス〇ッチのようなゲーム機を作れないか試してみる。
「……おお、意外と出来るものだな」
目の前にはまんまス〇ッチが鎮座していた。これなら一人の時も複数人の時も遊べる。ついでにディスプレイも魔法で作り上げ俺は遊んでみることにした。
起動してみると普通にプレイできた。ソフトはスマ〇ラ的な対戦ゲームである。うん、やっぱりゲームは楽しいな。ちょっとレイナも呼んでやってみるか。今は温泉に入っているはずだから、戻ってくるまで待つしかないが。
それからリビングに戻ってきたレイナに黙ってコントローラーを手渡す。
「…………? なんですかこれ?」
「まあまあ。とりあえず持ってみて」
俺はそうやって強引にコントローラーを持たすと、ゲーム機を起動した。
「……えっ!? なんか薄い板から音が流れてるんですけど! てか、動いてる!?」
ディスプレイを見てめちゃくちゃ驚いているレイナ。俺はとりあえず操作方法を教えてあげることにした。
「このスティックを横に倒してごらん」
「こうですか? ……おおっ! 薄い板の絵が連動して動きます!」
感動したような声を上げるレイナに俺はディスプレイとゲームというものを説明する。全部を理解させるのは難しかったが、何となくは理解してもらえたみたいだ。
「なるほど……ものすごい発明ですね……」
呆然としたレイナだったが、俺はすぐにでもゲームで遊びたかったので、ソフトを立ち上げると今度はゲームのプレイ方法を教えてあげた。
「ふむふむ、このボタンを押すと攻撃で、これで移動するのですね」
「そうそう。かなり飲み込みが早いね。流石」
レイナはかなり賢い子で、すぐにいろいろと吸収していく。一通り操作方法を教えると、俺たちは対戦することになった。
「それではよろしくお願いします」
「ああ、対戦よろしく」
そしてプレイしてから一時間後。レイナはすっかりゲームの虜になっていた。
「ああっ! タケルさん! もう一戦だけお願いします!」
「……もう一戦だけって言ってすでに十戦くらいしてるけど」
というより、虜になりすぎていた。めちゃくちゃハマってしまっている。気持ちは分らんでもないが夕食もまだなのでいったんお預けだ。
そして俺たちは夕食を食べ寝ることになったのだが……深夜トイレに行こうとリビングの前を通るとこっそりレイナが練習していて、ゲーム機を作ってしまったことを少し後悔するのだった。
+++
レイナがこの家に住み着いてから一か月が経っていた。俺はゲームをしながらレイナに尋ねる。
「てか、帰らなくていいのか? もうここにきて一か月経ってるけど」
「一か月? 一か月ですか?」
何を言っているのかよくわからないといった感じに首を傾げるレイナ。
「ああ、正確には一か月と三日だな」
「……ヤバい! ヤバいです! 早く帰らないと!」
ようやく現実を受け入れたのか、レイナはバッと立ち上がって叫んだ。どうやらやっぱりヤバかったらしい。
「依頼を受けて一か月帰らないと死亡扱いになってしまうのです! そうなると冒険者ライセンスがはく奪されてしまうので、早く帰らないと!」
それは確かに不味い。慌てて荷物を纏め始めたレイナに俺は一つの指輪を渡した。
「……これは何ですか?」
「これは転移用の魔道具だよ。これを使えばいつでもここに戻ってこれるから」
俺が言うとレイナの目がキラキラと輝きだした。
「また戻ってきてもいいんですか!?」
「ああ、もちろん。ただあまり他人には話さないように」
俺が言うとレイナは真剣な表情で頷いた。
「あ、それとこれゲーム機ね。お土産に渡しておくよ」
「いいんですか、こんな凄そうなものを!?」
「ああ、頑張って練習して、俺より強くなって戻ってきてよ」
まあ俺もそこまで強いわけじゃないからな。すぐに越されてしまうだろう。
「それでは……さようならタケルさん。またすぐに戻ってきますね」
「うん、じゃあまたね」
そう言ってレイナは住んでいた町に戻っていった。一人になってしまい最初は少し寂しかったが、もとより一人行動が好きだった俺は、すぐに一人に慣れるのだった。
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