第20話 善戦
「こちら砂漠の蠍部隊長、及び今作戦の指揮官のカイルだ。」
元々は無線傍受を警戒して直接やり取りしていたが、ここからは時間との勝負。
気にしている暇は無い。
「手の空いている部隊は、アンドルーズ空軍基地へ攻撃を集中させよ。繰り返す。アンドルーズ空軍基地へ攻撃を集中させろ!」
アンドルーズ空軍基地。
アメリカ空軍にとって重要な拠点だ。
ここさえ抑えられればアメリカもこの蜂起を無視出来ないだろう。
制空権もなんとかおさえられるかもしれないしな。
それに各所の劣勢を強いられている友軍も戦闘が少しは楽になるはずだ。
「隊長。準備完了しました。」
「良し、行くぞ。」
上手く、国連軍の治安維持部隊派遣を促せれば良いのだが……。
それは、この基地襲撃作戦にかかっているな。
『こちら隼!敵の激しい攻撃にさらされている!至急援護を!』
『こちらトップスコア!同じく……。』
無線から無数の傭兵部隊の劣勢報告が上がる。
やはり、敵も警戒していたようだ。
いや、アイが予測を立てていたのか。
「怯むな!敵の反撃の手は局所に集中している!攻撃の手を緩めるな!」
自ら前線に立ち、指揮を取る。
敵もまだまだ混乱しているようで全方位から攻撃している部隊の東側の部隊からしか救援要請が来ていないことから配備されている部隊も少ない事が伺える。
少ないわけでは無いかもしれないが、集中しているのは事実だ。
こちらには反撃は殆どない。
が、戦闘機が発進しようとしているのは分かる。
予めの妨害工作によって発進が遅れていたがそろそろ限界のようだ。
「続々と部隊が集結しつつあります!」
「よし!新しく到着した部隊は反撃の激しい東側に向かわせろ!俺達は司令部を狙う!」
すると、上空を超低空でヘリが進んでいく。
あの援軍の機体だ。
『カイル少佐!敵戦闘機が発進しようとしています!破壊許可を!』
「許可する!だが、整備拠点は極力破壊するな!」
『了解!』
ヘリが編隊を組んで飛んでいく。
制空権がまだこちらにあるというのは頼もしい限りだ。
だが、彼等も既に対空兵器で被害が出ている筈。
あまり無理はさせたくない……。
できれば航空戦力を分捕れれば良いのだが。
「隊長!敵は東側から撤退しようとしているようです!基地の放棄を決めたようです!」
「よくやった!逃がすな!包囲殲滅する!」
やはり、奴等も現状の戦力で守り切ることは不可能と判断したのか。
それともアイの判断か。
今アメリカ軍がどこまでアイを使いこなせているのか、それがわからない以上、判断するのは早計だな。
確かに東側は森林があり、逃げるのには適している。
こちらとしても密かに接近するのには最適だった。
恐らく、元から脱出を想定していたのだろう。
「おい!コブラ中隊!聞こえるか!」
『聞こえます!航空支援が必要ですか?』
コブラ中隊とは先程のヘリの部隊だ。
「いや、確保した整備拠点で整備を始めろ。敵は基地の放棄を決断したようだ。援護部隊も回す。できるだけ早く終わらせろ。」
『了解。感謝します。』
これで国連は治安維持部隊を派遣するだろうか。
しなければ、これは只のテロ行為として処理されてしまう。
それだけは何としても避けなければならない。
あとは、祈るのみだ。
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