第19話 大反攻

「お疲れ様です。カイル少佐。」

「あぁ。援軍感謝する。」

 

 戦闘後、武器弾薬の確認をしていた俺達の元に複数の男が訪れた。

 リーダーらしき人物と握手を交わす。

 あのヘリの援軍のリーダーだ。

 

「しかし、見事な手際でした。」

「いや、俺達だけでは不可能だった。他の部隊は?順調か?」

 

 その質問に男は良い顔をしなかった。

 

「……多くの戦場で激しい攻防が繰り広げられています。既に壊滅した部隊もいるとか。」

「……そうか。」

「しかし、よくもこんな作戦が成功しましたね。どうやったんです?」


 マイクが、不思議そうに聞く。

 それもそうだろう。

 相手にはあのアイがあるのだ。

 そう簡単に勝てる訳が無いと思っているのだろう。


「簡単だ。アメリカに雇われた民間軍事会社が全て裏切ったに過ぎない。」

「全部ですか!?」


 これにはさすがのマイクも驚いている。

 まぁ、計画については何も教えていなかったので当たり前だろう。


「ちょうど良い。今回の作戦について教えてやる。」

「ありがとうございます!」


 その言葉を聞き、テーブルに地図を広げる。

 と言っても牢の中に居た俺達が知っていることは少ない。

 

「今、俺達はここだ。他の部隊の詳細な位置を教えてくれ。」

「了解です。」

 

 友軍の男はその辺に落ちている石を置いていく。

 

「聞いている限りで劣勢の部隊はこれです。」

 

 男が次々と指を指していく。 


「やはり、いくら奇襲でも劣勢になりますか……。」

「作戦はこうだ。まず俺達現地の傭兵が各地で一斉に蜂起する。作戦のやり取りについては直接やりあっていたから奴等には漏れていない筈だ。警戒はされていたかもしれないがな。そこは諜報班が上手くやっててくれたみたいだ。」


 今回のティムへの復讐は彼等の影響が大変大きい。

 全てが終われば褒美は与えて置かなければな。


「ここで蜂起が成功すれば治安維持を名目に国連軍として各国軍がアメリカに上陸する。」

「それ、大丈夫なんですか?」


 その不安も尤もだ。

 アイを持っているアメリカという大国に加え、各国軍が敵として来るというのならば不安になるのも仕方が無い。

 だが、その不安の必要は無い。


「今回の蜂起、バックについているのはロシア、中国、フランス、イギリスだ。」

「っ!ということは、その治安維持の国連軍は我々への援軍?」


 察しが良いと助かる。


「そうだ。諜報班の根回しや、傭兵達の活動のお陰で協力を得られた。だが、アメリカ寄りのカナダやメキシコ、中華民国や日本は敵対するだろう。……まぁ、そもそも俺達の蜂起が成功しなければ治安維持部隊も派遣されない。ここからだな。」

「劣勢、大丈夫ですかね?」

 

 地図に目を戻す。

 

「……援軍に行きましょう。彼等もそれを望んでいるはずです。」

 

 マイクが、口を開く。

 それもご尤もだが、一手でも間違えば全滅する。


「駄目だな。俺達の行動は既に人工衛星で監視されている筈だ。じきにここにも敵が派兵されてくるだろう。援軍に向かえば敵を増やすことにもなる。」

「ですが!」

 

 俺は地図のある箇所を指差した。

 

「ここだ。ここを攻める。他の戦闘が終了した部隊もここに集結するように伝えろ。」

「……空軍基地ですか。」

 

 すると、援軍の男が口を開いた。

 

「成る程、我々のヘリの燃料や弾薬の確保にもなりますね。」

「そうだ。アメリカも、重要拠点ともなれば優勢な戦場から兵を引き抜かなければならない状況も現れるだろう。味方も少しは楽になるはずだ。」

 

 作戦を聞くと援軍の男は敬礼をしてきた。

 

「では、我々は先行して安全を確保していきます。ここよりも近い部隊もありますので、貴方がたが到着される頃には戦闘が開始していると思われます。」

「そうだな。この作戦の第一段階は電撃戦だ。時間をかけるわけには行かない。頼んだぞ。」

 

 敬礼を返す。

 男は踵を返して走って行った。

 

「よし!俺達も準備するぞ!」

「た、隊長!」

 

 マイクが不安そうな顔を向けてくる。

 

「どうした?」

「この作戦の最終目標をお聞きしてもよろしいですか?」

 

 そうか。

 言ってなかった。

 それは伝えておかなければ。

 

「アイの破壊。それが俺達の目標だ。そして、各国軍はアメリカに勝つことを望んでいるだろうな。」

「……了解しました。」

 

 それを聞くと、マイクはすぐにその場を去った。

 すでに他の者も準備を始めている。

 俺も準備をするとしよう。

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