第十二話 ノゾムとカナエ
12月24日
クリスマスイブ
街は煌びやかな装飾と
ライトで飾らせていた。
僕は本当の愛を知ってから
もう学校にも行かなかった。
というよりももう必要がなくなったのだ。
カナエとの時間が欲しい
ずっと一緒にいたいと
迷いはなくなっていた。
本当にそう考えてからはずっと楽しかった。
ちゃんと自分自身が満たされて
空っぽじゃなかった。
僕は僕だと胸を張って言えていた。
街が明るく照らす
僕らはその逆を行くように
森の中を歩いていた。
僕はカナエのメッセージをスマホに
移し替えてBluetoothのイヤホンで
聴きながら森の中を進んだ。
カナエと話しながら進む
「ねぇ、カナエ
もしも僕と一緒になったらどんな事したい?」
「僕が望と一緒になったらか〜
そうだな、美味しいケーキとか食べたいかも」
「そうだね。
今までできなかった事をしょう。
そうだ!元々、配信する事も考えていたんだ
いっぱい有名になってチヤホヤされて
カナエが一番可愛いって事、みんなに見せよう!絶対にできるよ!だってカナエは世界一可愛いんだからさ」
カナエは笑う。
「そんな事したら僕は望以外を好きになるかも知れないよ?」
僕も笑いながら答える。
「それはないよ!だってカナエは僕だから
僕はカナエの事は何でも知っているんだから」
「それ僕のモノマネ?本当に望は面白いね」
お互いに笑い合いながら暗闇の中を進む
まるでこの後に何があってもいいと思うくらいに
森の中を進むと古びた教会があった。
教会に入ると誰もいなかった
椅子も講壇もさびれて中は廃墟となっていた。
僕はカナエと話す。
「カナエ……ありがとう。
ずっと一緒にいてくれて
今さらなんだけど僕は本当はカナエと
いるのも怖かったんだ。
僕自身がカナエと関わる事でなくなるん
じゃないかって
でもそうじゃなかったんだ
一緒になる事で僕になる。
それをやっと受け入れる事ができたよ。
僕は僕が好きだ。
それは誰がなんて言おうと
僕は正しいと思うよ」
静けさの中、カナエが答える
「そうだね。僕もそう思うよ
望……大好きだよ。」
僕はその場で大量の睡眠薬を飲んだ。
そう僕はカナエと一緒になる。
それは僕自身がなくなり
彼女と同じ世界に行く
これこそが僕が選んだ道だった。
どんどん意識がもうろうとなる。
膝がから崩れ落ち吐き出しそうに
なりながらも僕は口を抑えたながら
薬を飲み込んだ。
そして僕はカナエに声をかける。
「そうだ……こんなのしかなかったけど
カナエに渡したかったんだ」
僕はポケットからおもちゃの指輪を出した。
それは僕が昔、カナエにプレゼントしょうとしたものだった。
「あの時は渡せなかったから……ハァ…
カナエにちゃんと……言え……なかったから…
カナエ!僕は君の事を愛している……
ずっと大好きだよ……だから…ハァ……
僕とずっと一緒にいて下さい」
やっと言えた。
でも返事はなかった。
そうメッセージはもうないのだ。
でも僕は彼女に言わなきゃいけなかった。
僕自身を受け入れるために
僕は左指の薬指に指輪をはめた。
彼女の事を思い描きながら……
その途端だった。
彼女の白い綺麗な指が
僕の目の前に現れた。
そして耳元から声がした。
彼女の声だった。
僕はイヤホンをゆっくり外す。
そしてその指先をなぞるように
僕は顔をあげた。
紫のあざやかな長い髪
透明感のある白い肌
ふわふわとした猫耳
そして誰もを魅了するきらびやかな瞳
そう彼女は僕の目の前にいたのだ。
そしてそのまま僕は彼女の左指に
指輪をはめた。
彼女は僕に近づきにやけながら
僕にキスをした。
そしてその綺麗な手は
僕の首を掴み押し倒した。
カナエは僕の首を強く握った。
強く……強く……握った。
どんどん意識がもうろうとする中
僕は愛されていると感じていた。
馬鹿みたいに愛されて
死ぬほど求めらながら
首を思いっきり絞められて
死にたい。
僕の愛は歪みきっていた。
けどその歪みすら叶えてくれたのだ。
僕が望む事を叶えてくれる。
ノゾムとカナエ
お互いがいるからこそ
僕らの……
僕たちの歪みきった愛は満たされたのだ。
意識がなくなる中
僕は彼女に最後の言葉を呟く。
「ずっと一緒だよ」
鐘が鳴る。
静かな廃墟の教会の中
僕たちはクリスマスを迎えた。
歪んだ愛の中で……
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