第八話 いつもの日常と変わる心

僕は誠と過ごした後

またカナエに会いに行った。

そして僕はその日の事を話した。 


「カナエが言った通りに大丈夫だったよ。

本当にちゃんと話せてよかった。

久々に話したんだ。

なんか今まで壁を作っていたって言うか」


僕の話を聞きながら

カナエはそのまま僕の胸に手を当てて

耳元に顔を近づけた。


彼女の吐息が耳にかかる。

そのまま彼女は呟いた。


「誠君に抱きつかれた時……

ドキドキしたでしょ?」


僕はあまりにもづぼしをつかれたようで

そのまま目を逸らしてしまった。


そんな僕を見ながらカナエは僕の胸を

撫で回しながら話す。


「誠君と話している間、ずっとドキドキしているの僕は知っているんだよ。

急に抱きつかれた時も頭を撫でられた時も

望は誠君に恋してた。

僕はいいと思うよ。

だって望は女の子になりたかったんでしょ?」


カナエの言う通りだった。


誠と肌が触れ合うたびに

僕は彼の体温を感じて安心していた。

少しだけだが彼をカッコイイと思ってしまっていたのだ。


そのままカナエは言う。

「誠君の事、好きって言ってみなよ?」


僕は首を横にふり

「そんな事、言えないよ!

言ったら絶対に嫌われる!

誠は僕とは違う!!……絶対に嫌われる」


カナエは僕をそのまま優しく抱き寄せ

耳元で囁く

「誠君を自分のものにしたくないの?

誠君なら君の事、受け入れてくれるよ

だって今日だって受け入れてくれたんだよ。

ずっと一緒にいれたらなんでもできるよ。

こうやって……」


カナエは僕を押し倒して馬乗りになった。

彼女が僕の顔を見下ろす。

また鼓動がはやくなりドキドキした。


そして僕の腕を押さえつけ

僕の目を見ながら話す。

「誠君にこうやってされたいでしょ?」


カナエは白い綺麗な腕を僕の首にやり

そのまま首を絞めた。


僕は息もできないほど苦しかった。

でもそこに快感を覚えていたのだ。


「望のしたい事は全部〜僕は知っているよ。

誠君にさ……こうやって乱暴にされて愛されたいんでしょ?」


彼女はもっと強く、僕の首を締める。

そして煌びやかな笑顔を見せて

僕に言った。


「今の望……すごい、いい顔してる♡」


僕はそのまま快感に溺れ

意識を失いながら現実に戻った。


戻った時には朝になっていた。

身体は火照り僕の身体はその日

興奮していた。


僕は1週間ぶりに学校に行く事にした。

9月になっていたがまだ夏は終わっておらず

炎天下の中、僕は歩いた。

あまりにも久々に部屋を出たので

少し歩いただけでフラつきそうだった。

久々の早起きというのもあり

僕は倒れそうになっていたところ

後ろから誰かが強く肩を叩いた。

僕はその勢いのままつまずき

倒れそうになってしまった。

「おい!大丈夫か!」

倒れそうになる僕を支えてくれたのは

誠だった。


誠は僕の身体を触り

倒れないようにしてくれたのだ。

だがその時にすごく彼の顔が近くなった。

カナエが昨日、僕にした事を思い出す。

僕は赤面してしまい。

とっさに誠との視線をはずしてしまった。

「ごめん、誠……あ!おはよう。

その昨日はありがとう……」


誠は心配そうな顔で

「お前、大丈夫か?

久々に外出たんだろ?無理すんなよ」

と言ってくれた。


僕は赤面しながらも答えた。

「うん、ありがとう。

大丈夫、大丈夫だから」


また身体が火照りだす。

夏の暑さなのかそれとも僕は誠に……

そんな事を考えながら僕は学校についた。


僕の席は一番、後ろの左側の角だった。

その右隣が誠、前が叶恵の席だった。

まだ叶恵は学校に来ていなかった。

僕と誠は席に座り

さっそく叶恵への説得のため

謝罪文を考えていた。

色々とやらかしていたので

本当に慎重に謝らなければいけないと

考えていた。

今の僕はまるで汚職を働いた政治家が

記者に追い込まれながら謝罪会見をする

気分だった。


二人でヒソヒソ話している間に

後ろから叶恵が来た。

叶恵は僕を見向きもしないまま

そのまま席に座った。


僕は謝ろうと思い

叶恵に話しかけようとしたが

躊躇してしまった。


あれだけ酷い事を言ったんだ。

許してもらえるはずもないと思い

また下を向きやめようとしていた。

そんな時に誠は話し始めた。

「なあ、叶恵、誠が話したい事あるってさ」


誠は僕の背中を叩き、合図をした。

僕はそのまま深呼吸をして

叶恵に謝った。

「叶恵、本当にこの前はごめんなさい

今さら、あんな酷いことを言って

許してもらえるとは思ってもいない

だけどもしもチャンスがあるなら

なんでもする!だから許して下さい

お願いします。」

僕は精一杯にその場で頭を下げた。


叶恵は振り向いて僕に聞いた。

「今、なんでもするって言った?」


そのまま僕は首を大きく頷いた。

叶恵はそのまま僕に

「じゃあ今度、駅前のクレープ奢ってよね!

全部、トッピングするんだから!

本当にバカ!

もう……本当に一緒に話せないと

思ったじゃんか!

バカ!バカ!バーカ!」

泣きそうになっていた叶恵を僕と誠は

笑いながらまた三人で話しはじめた。


いつもの日常を取り戻せた。

そう……いつもの日常だったけど

僕はますます誠に惹かれていってしまった。

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