第45話 アランを止める

アルニルはアランが丸腰のエモリーを斬ろうとしてると言うので、わたしも様子を確かめてみますと

アランの振る剣をエモリーが必死に避けていました。


「丸腰の相手を斬るのは騎士道に反してるだろ!」

「犯罪者は別だ!盗賊団は問答無用で切り捨てても構わないというお達しが出てる!」

「だからって、丸腰の相手を斬るのはどうなんだ!」

「問答無用!」


そう言ってアランは剣を振りますが、あまりにも大振りなのでエモリーもあっさり避けていますが。


「アラン君は元気ですよね」

「アルニル、これは元気と言うよりは我を忘れているだけでは」

「そうともいいますね」

「それよりほっといても良いのですか?あと、その様な通達がでていたのですか?」

「はい。前回の旅の時にフローラ様が襲われましたので、切り捨ても良いとなりました。

ただ、あくまでも抵抗されるなどやむおえない場合のみで、原則は生け捕りにしないといけませんが」


アルニルはこう言いますが、つまりアランがしている事は違反行為と言う事です。


「そうであるなら、アランを止めないけません」

「そうですが、完全に我を忘れていますので……下手に止めるとこちらが危険です」


アルニルが言う通り、剣を振り回してるアランを止めるには危険ですね。


「では、どうしたらよいのでしょう」

「そうですね、トリシャの魔法かイザベラの法力で拘束をしてもらうのが一番ですかね」

「それが良さそうですが、トリシャ様はまだ寝ていますので、イザベラ、お願いできますか」

「そうしたいところですが、わたくしは回復や治療のみで身体拘束はできないのです」

「そうなんですか?」

「はい、あくまでも神の力を使い、癒すのが役目ですので」

「拘束でなく、眠らせる事ができたような気がしたけど」

「それならできますよ」

「眠らせる事が出来ますのならば、アランを眠らせてください」

「わかりました。ただ、この距離では無理ですので近づかないとなりませんが」

「どれぐらい近づく必要がありますか?」

「そうですね、身体に触れるぐらいですかね」

「それはつまり、無理ではないですか?」

「はい、そうなりますね」


イザベラは眠らせ法力が使えますが、身体に触れるぐらいに近づかないといけないのでつまり無理と言う事ですね。

そして、騒ぎを聞いて周りの家から人が出てきました。


「あれは王家の馬車だなぁ」

「そういえば、フローラ様がファーガスへ行くと魔法通信で言ってたな」

「そういえば、そうだったなぁ」

「しかし、こんな所で止まって何してるんだ?」

「さなぁ。ただ、剣を振り回して男を追いかけてるあれは騎士か?」

「みてぇだなぁ。あの男がなんいかしたのかなぁ」

「そんな感じだな」

「おもしれえから、皆に知らせて来るかぁ」


家から出て来た人はそう言って、他の家の人にも声を掛けます。


「このままだと大勢の人が見学しそうですね」

「アルニル、何を落ち着いてるんですか。エモリーは確かに盗賊団の団長ですが

大勢の人の前で王女直属の騎士が人を斬る姿を見せる訳にはいきません」

「ですが、一応はちゃんと理由はありますけどね」

「通達に違反していますからいけません」

「しかし、手の打ちようがありません」

「トリシャ様を起こすしかありませんね……」

「そうですね。イザベラ、トリシャをおこしてください」

「わかりました。起こす魔法がありますのでそれを使います」

「そんな魔法があるのなら先に言ってくださいよ」

「言う機会が無かっただけですよ。では、起こします」


イザベラはアルニルに頼まれますと、馬車の中で寝ているトリシャ様に対して

呪文を唱えますが、呪文を唱え終わりますとトリシャ様は目を覚ました。


「何……イザベラ……」

「無理やり起こしてすみませんが、あそこで暴れているアランさんを止めてください」

「なんだか知らないけど……わかったよ……」


トリシャ様は眠い目をこすりながら馬車から降りますと


「精霊よ、剣を振りまわして暴れてる騎士くんを止めて来て……」


と唱えると、2体の精霊がアランへ飛んでいくきアランの周り何周か飛びますと

アランの動きが止まりましたが、いったい何をしたのでしょうか。


「トリシャ様、あの精霊はなにをしたのですか?」

「見えない糸で動きを止めただけだよ。魔力で作られた糸で、傷つく事はないから大丈夫」

「そうなんですね」

「動きも止まりましたので、2人の所へ行きましょう」


アルニルはそう言って、2人の所へ行きますとアランの剣をとりあげ

アランから離すため、エモリーをこちらに連れて来たのでした。


「エモリーでしたっけ、フローラ様の御前ですから大人しくしてくださいね」

「はぁ……はぁ……あ、あいつに……追い回せれて……それどころじゃないが……

と、とりあえず……助かった……礼を言う……」

「盗賊にしてはちゃんと礼を言うのですね」

「べ、べつにいいだろ……」

「エモリーの事は良いですから、アランもつれて来てください」

「わかりましたが、完全に拘束されていますの解いて頂かないと困ります」

「それじゃ、歩けるようにしてもらうよ」


トリシャ様は精霊に足の拘束だけ解くように頼むみますと、精霊はアランの足の周りを飛びます。

すると、アランは剣を振り上げた格好のままアルニルに連れられてきました。


「変な姿でこちらに来ないでさい」

「そう言われましても、足以外は何か縛られたみたく動かせないのです」

「騎士くんが暴れるから、姫様に頼まれて精霊の力で拘束しただけだよ」

「そ、そうでしたか……エモリーを見て思わず頭に血が上ってしまいました……」

「それでも騎士か、冷静になれよ。しかも、丸腰の相手に向かって剣を振るとはな」

「く、エモリーが言う事が正しい……」


アランは冷静になったようで、反省をします。

そして、トリシャ様は精霊に頼みアランの拘束を解きますと、精霊の姿は消えたのでありました。

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