第10話 思い出話
「まんまと王様にしてやれたよ……」
部屋に案内されたトリシャ様はため息をついています。
「国王陛下もそこまで考えてないはずですよ、多分」
「いや、あれは絶対にあたしを城に泊めるためだったよ」
「でも、トリシャ様もお食事をすると言いましので」
「だって、昼に食べてから何も食べてなかったらお腹空いたし……」
トリシャ様はそう言いつつもお食事を口に運びます。
わたしもお父様にトリシャ様と話しをしたいので、お部屋でお食事をご一緒したいと
お頼みしたところ、お父様も許可をしてくださいました。
そして、アルニルも一緒にお部屋で食事をしますが、通常は侍女と共に食事をすることは
ありませんので、これもアルニルがアンディの生まれ変わりなので特別に許されました。
「しかし、城ではこんないい物を毎回食べるんだね」
「民の方々と比べましたら良い物を食べていますが、今日は少しいつもより良い物です」
「へぇ、そうなんだ」
「お父様は普段の食事は出来るだけ費用を抑える様にしてはいます。
ただ、それでも民の方々と比べたら、かなり贅沢です」
「でも、王様の食事が質素なのもそれはそれでって感じはするけどね」
「そうかもしれませんが、かかりすぎても良くないと思っています」
「ふーん、なかなか難しいね。でも、おいしいければあたしは何でもいいけどね」
トリシャ様はそうおしゃってさらに食事を口に運んでいます。
一方、アルニルの方はわたしとトリシャ様が話しているうちに全て食べ終わっていました。
「もう食べ終わったのですか?」
「侍女はいそがしい仕事の合間に食事をとりますので、食べるのが早くなってしまいました」
「侍女はみなそうなのですか?」
「そう言わると正直困りますが、単にわたしが食べるのが早いだけでもあります」
「そうなんですね」
「アンディの時も食べるのは早かったから、女の子になってもそこは変わらないんだ」
「アンディの頃もせっかちでしたからね。しかし、昔の事を言われると何か恥ずかしいです」
トリシャ様はアンディだった頃をして知っておられるので、お話を聞きたいですね。
「アンディだった頃のお話を聞きたいですね」
「話してもいいけど、姫様にお話でき無い事ばかりだよ」
「そうなんですか?」
「否定したいけですが、否定できませんね」
「でも、伝承されている事について話せるかな」
「確かに、伝承は間違ってる事が多いといいますか、脚色されすぎです」
「仕方がないよ、ああいうのは大袈裟に書く物だだし、書いた人の考えや願望もあるからね」
「わかってるけど、流石に夜に魔王軍100人に貌まれた時、ファーガスが1人で全員倒したのは盛すぎです」
「あの時の事、そんな風になってるんだ。実際は50人に包囲されてわたしの魔法で強引に道を作って、逃げたんだけけどね」
「でも、あの時は本当に危なかったかな。多分、魔王と戦うよりも危なかったかも」
「確かに、あの時はみんな疲れてて寝ちゃったからね」
「ただ、ファーガスが偶然起きて気づいたから、何とかなったな」
トリシャ様とアルニルの話を聞いて、その時の事を思い出しましたが
偶然、ファーガスが目覚めたものの、既に包囲された状態でした。
ただ、トリシャ様が火焔の魔法で敵兵の包囲を崩し、なんとか包囲を突破しました。
「あの時はファーガスは特に何もしてなませんね」
「でしょ?姫様もファーガスの記憶があるから、わかるよね」
「ファーガスの記憶はありますが、思い出さないと思いだせません」
「そうか。アンディはそうでもないけど」
「わたしは身体が女性になっただけで、人格も基本的にアンディですからね」
「わたしはあくまでもファーガスの記憶あるのですが、あくまでもわたしはわたしなので
わたしがファーガスの事を思い出さない、思い出せないようです」
「そうか。でも、ファーガスがそのまま姫様になったらなったで、笑っちゃうよ」
「そうですよね。脳筋のファーガスがフローラ様を演じてる姿を思うと、笑ってしまいます」
2人はそう言って笑いますが、勇者だったころのファーガスは確かに誰彼構わずに
力で倒せばいいという感じでしたね。
「しかし、領主としては立派ですし、ファーガスの領地はファーガス地方と呼ばれて今も残っています」
「脳筋だったけど、頭は良かったからね。あと、仲間思いだったし」
「それがファーガスの良い所でしたからね」
「だから領民にも慕われたからね」
ファーガスは領主になった後は、水が少なく不毛の地だった当時のガル地方と呼ばれていたファーガス地方に
灌漑用水や飲料用水を作り、さらには地下水脈を発見して水が豊富な地になり
今では王国一の穀倉地帯なっておます。
また、穀物以外の作物も豊富に実り、今では王国の食料供給を担う土地なっています。
「アメリとの間に子供もたくさん作ったけど、今もファーガスとアメリの子孫はすんだるんだよね?」
「ええ、今もファーガス地方はファーガスの子孫の領地しています」
ファーガス地方は現在もファーガスの子孫になるファル家が領地となっていますが
ファル家は当時の王によって与えられた家名です。
「ファーガスだから、ファル家なのかな。ファしかあってないけど」
「トリシャ様、ファルと言うのは古代語で「英雄」と意味ですから」
「そうなんだ。あたしはファーガスのファからとってファルかと思ったよ」
ファルというのは古代語で英雄という意味がありますが、この古代語は今から1200年前の言葉らしく
ファーガスの時代に1200年前の遺跡から発掘された石板に記されている部分のみが
知られているだけで全容が良くわかっていない言葉です。
そして、その石板は現在の王国の言葉に訳されていたため、その部分は解読できたそうです。
「そういえば、あたしが子供の頃にエルフの年よりしか知らない言葉があったけどそれかも」
「1200前の言葉ですから、現在のエルフでも知っておられる方いないのでしょうか?」
「多分、いないと重けど、エルフの言葉に混じってるかもね」
確かに、1200年前の古代語だとしても、エルフは1000年生きますのでエルフの間では残っているかもしれませんね。
「でも、わかった所であたしには関係ないけどね」
「そうですけど、こういう歴史がわたしは好きです」
「人間の寿命は短いからね。寿命が長いといちいち昔の事は覚えてないから
エルフの歴史は人間の方が詳しいかもね」
「そうかもしれませんね」
寿命が長いという事は、当事者が居なくなるのも長いという事になりますかね。
そして、年月が長い分、どれを人間よりも記憶があいまいになるかもしれませんし
1000年も生きますと、昔の事は覚えてないとおもいます。
「なんか、話し込んだけど、料理はおいしかったよ」
「ごちそうださでした。喜んいただきありがとうございます」
「王様に半分騙されたけど、おいしい物を食べれてよかった。あとは湯に入って寝るた……」
トリシャ様は伸びをしますが、湯につかりとおっしゃっています。
「それでは、3人で湯に浸かりましょう」
「わたくしは食事の前に湯あみはしましたよ」
「わかっています、ご一緒しましたから」
「それに、この時間は浴場の湯は抜いたあるはずですし」
「客室の浴室を使います。お湯はトリシャが魔法で出しますから」
「そうだとしても、客室の浴室は3人では狭いですからトリシャ様だけで良いかと」
「姫様の言うとおりだよ。あたしだけでいいよ」
「そうでしたか。せっかく、元勇者パーティーが全員女性になったので当時では
出来なかった3人で湯に浸かり、裸の付き合いが出来ると思いましたのに残念です」
アルニルは残念がっていますが、なんでしょう邪な事を考えているようにしか思えません。
そうでなくても、もう時間的に湯に浸かる時間ではありません。
「それじゃ、あたしは湯に浸かるよ。食べた食器は片付けて」
「わかりました」
「では、わたしは自室に戻ります」
「わかった。あとはダニエルの生まれ変わりだけだけど、あの女神は男を女に生まれ変わらせるのが好きだな……」
トリシャ様はそうつぶやきますが、それはアルテイル様の趣味なのか単に偶然に女性に生まれ変わっただけなのかわかりませんが
勇者パーティーは全員女性に生まれ変わったので、やはりアルテイル様の趣味なのでしょうかね。
わたしはそう思いましたが、この事をアルテイル様に聞く事にしました。
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