第2話 前世の知識と記憶があっても、剣はてんでダメです

本日も剣術の授業がありましたが、もちろんいつも通りの結果です。

いえ、むしろファーガスの記憶が戻ったせいで、ファーガスの剣捌きを

真似しようとしましたが、身体がまるで追い付かず、さらに悪くなっていました。


「フローラ様、大丈夫ですか?」

「大丈夫です……」


身体が追い付かないだけならまだよかったのですが、足がもつれて

アリスや他の生徒の前で顔から盛大に転んでしまいました。

それを見て周りは大騒ぎです。

ただ、幸いな事に回復魔法を使える教官でしたので、すぐに顔の傷は

治り跡も残りませんが、他の擦り傷は


「他は大した傷じゃないし、この程度は姫様といえども回復魔法を使う程じゃないから我慢するんだ」


と言われましたが、痛みはありますが教官の言う通り我慢します。


「フローラ様は元々剣術は苦手ですが、今日は何か張り切っていませんでしたか?」

「今日は出来るかもしれないと思いましたが……それどこか、何時もより悪かったです」

「フローラ様がそのように思うのは珍しいですね、何かあったのですか?」

「特にありませんが、昨日17歳の誕生日を迎えましたので、やる気をだしてみたのですが、盛大に失敗してしました」

「話はかわりますが、盛大と言えば昨日のフローラ様の誕生日パーティーは

盛大でしたし、ドレス姿は綺麗でしたよ」

「ありがとうございます」


昨日はわたくの誕生パーティーが開かれましたが、アリスも参席しておりました。

17歳の誕生日は結婚可能になる年齢なので、盛大に祝う習わしがあります。

なので、昨日の誕生日パーティーは貴族たちを読んで盛大に行われました。


「フローラ様の長くてお綺麗なブロンドの髪と大きなお胸が、まさにお美しい大人の女性という感じでした」

「褒めてくれて嬉しいのですが、大きすぎる胸も良くないと言いますし」

「でも、王妃様もフローラ様と同じぐらい、大きなお胸ですよ?」

「はっきりいいますが、お父様が大きなお胸が好きだからです」

「国宝陛下はそのようなご趣味なのですね」


アリスは国王の趣味を聞いて、苦笑いします。

お父様は正室のお母様の他に、側室がおりますが側室もお母様同様にお胸が大きいのです。

なので、お父様の趣味間違ないと思います。


「もしかしたら、わたしが剣術が苦手なのはこの胸のせいですかね」


わたしは自分の胸を見ますが、胸があって真下が見にくいのです。

まったくと見えないとは言いませんが、それでも大きな胸が邪魔になります。

それに、激しく動くと胸当てをしていても、揺れて不快で痛いですし。


「胸の大きさは、ほどほどで良いのに無駄に大きくなってしまいました」

「フローラ様、それはわたしに対する嫌味ですか?」


アリスはこういいますが、アリスはわたしと違って胸が小さい目です。

全くない訳ではありませんが、わたしの横にいるせいかさらに小さく見られています。


「アリスだってちゃんと胸があるではないですか」

「ありますが小さい方ですし、フローラ様とわたしはあまり身長もかわりませんので

横にいるとさらに小さく見えるのです」

「わたしとしたら、アリスぐらいで良かったと思います。

大きいと運動の時に邪魔ですし、真下が見にくいですし、肩もこりますし。

アリスの剣術は女子の中では、わたしと違って1位ですし」

「なんでしょう、何か色々引っかかりますが、気にない事にします」

「どうあれ、大きい胸は運動の邪魔になります」


剣術以外の運動は得意なぐらいでありますが、それでも大きな胸が邪魔になります。

運動用の下着として胸当てを作ってもらい、以前よりはかなり動き易くはなったととはいえ、それでも不快感があります。


「男性は大きすぎる胸はよくないといますが、わたしの胸を見て来ますので

本当に大きな胸が良くないのか、わかりません」

「わたしの読んだ本では、男性はみな胸が好きですが、大きさはや形の好みは人それぞれらしいです。

なので、わたしの様な小さな胸を好まれる方もいるのです」

「アリスはその様な本も読むのですか?」

「わたしは本ならば、何でも読みますし、知識は大事ですから」


確かに知識は大事ですが、その知識が正しいと限りません。

また、知識があっても、出来ない事もあるとわたしは身をもって知りました。

ファーガスの剣術の知識があっても、それに見合う身体でないと

強さが発揮できなどころか、さらに悪化する事も知りましたし。

ただ、剣術以外の知識ならば役に立つと思います。

ファーガスは辺境奥地の領主でもあり、その領地は我が王国の領地になっています。

かつては水が少なく、不毛の地と呼ばれたファーガスの領地も

灌漑用水の整備や土地改良で豊かな土地に生まれ変わり、ファーガス地方と

名付けられて今もファーガスの功績を讃えています。


「知識があっても、身体が追い付かないと駄目なのです」

「それはどういう意味ですか?」


アリスは何かと勘違いして、顔が赤くなります。


「剣術の話です。わたしも勉強したり、騎士たちに教えていただいてますので知識はあります。

実際に構えまでは良いのですが、いざ剣を振ると力が入らずへなへなになるのです」

「確かに、フローラ様は指導出来るぐらいの知識はありますが、ご自身腕っは全くですよね。

でも、教える事は正しくて、わたしもフローラ様のお陰で剣の腕か上がりましたし」


わたしは実技は全くですが、他人の構えや動きから何処が悪いかがわかり

改善方法や上達方法を教える事は出来るのです。

実技がだめでも姫と言う立場もありますが、改善点が的確なので皆さんも何処が悪いか聞きに来ます。


 これもファーガスの知識のお陰かもしれませんが、ファーガスの記憶が戻る前なので

元より持っていたものであったのかもしれませんが、ファーガスの知識と気づいてなかっただけなのかもしれん。

しかし、最強の勇者の生まれ変わりにしては、中途半端な生まれ変わり方ですね。

これならば、普通の姫として生まれた方が良かった気がしますが、神様の決めた事のようなので仕方ありません。

ただ、せめて剣術の試験の成績だけは、もう少し上になれるぐらいにはしていただきたかったです。

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