最後の波
それからも、来人、テイテイ、ガーネの三人は、いつもの様に発生し続ける異界の処理を続けていた。
「――よっと、お疲れ、テイテイ君」
「お疲れ、来人。大分異界の発生も減って来たな」
戦闘を終えた来人の髪色は白金から茶へと戻り、来人とテイテイは拳を合わせて健闘を称え合う。
「だネ。ちょっとメガマップを確認してみるネ」
メガから貰った百鬼夜行の発生予想地点を示したマップーー通称メガマップ。
いつでもスマートフォンで確認出来て、リアルタイムで情報が更新されている。
「残すは――
来人やテイテイ、陸の地球側の戦力だけでなく天界から派遣された他の神々の協力も有って、メガマップに表示される印――つまりは異界の発生地点も残すは一際大きな反応のみ。
つまり、後は一際大きな波――
ちなみに、来人の父
マップの動きを見るに、そのまま南米に手が回っていた様だ。
メガマップに表示される大きな反応を指で触ると、ウィンドウが表示される。
そこには“発生まで残り12時間”と記されていた。
「なんか、またアップデートしたな」
「流石メガだネ」
この情報は天界でも共有されている。
時期に、以前の話通りに最後の討伐隊が組まれ、来人の元にも作戦開始の連絡が来るだろう。
来人が家に帰れば、義妹の
「らいにい、おかえりー」
「ただい――おい、世良。それは僕のだぞ」
「……ぱりぱり」
無言でチップスを貪る世良。
まあいいか、と来人は隣に座って、横からチップスを数枚まとめて取って口に運ぶ。
テレビではニュース番組が流れている。
「天変地異だって、怖いねえ」
「そーだな」
テレビの中のキャスターが世界的に大型台風や地震の発生を知らせている。
ついには時代に即さない終末預言者まで出てきだした辺りで、面白くも無いのでチャンネルを変える。
天変地異というのは、おそらく百鬼夜行発生の影響によるものだろう。
外を見れば、大雨だ。
この辺りにも百鬼夜行の影響が天候という形で表れている。
しかし、その天変地異もすぐに収まるだろう。
何故なら、来人たちの手によって百鬼夜行は討たれるのだから。
(――待っていろよ、『
そうしていると、来人のスマートフォンにメッセージを知らせる通知音。
それは天界からの招集連絡だ。
「世良、ちょっと行ってくるよ」
「どしたの、らいにい。どこ行くの?」
「――世界を救いに」
「何しにじゃなくて、どこって聞いたんだけどなあ」
天界。
王の間の入り口の前アナが立ち、その周囲に多くの神々が集っている。
「――作戦概要は伝えた通りだ。各自持ち場に着き、大異界の発生次第突入、迅速に殲滅。以上だ」
大異界――それが
アナが淡々と作戦を天界軍へと伝えて行く。
あの能天気な初代のアダンとは対照的に、神王補佐のアナは真面目で仕事のできる人物だ。
「今回の百鬼夜行は三代目候補のライトからの情報提供により、発生地点も時間も分かっている。出現する上位個体自体は強力だが、落ち着いて対処すれば問題ないだろう」
アナが来人の名前を出せば、その場の神々はざわつき始める。
中には混血を嫌う神々の妬みや嫌悪の声も混じっているが、その殆どは
「あのティル様を負かしたっていう鎖使いか!」
「あの一人で上位個体を一網打尽にしたっていう
と、少しどころではない尾ひれが付きまくっているが、来人は聞かなかった事にする。
「来人も大変だねー」
「あはは……」
その様子を隣で聞いていた陸は呑気な感想を述べるが、もう一つ隣で苛々を隠そうともしないティルも居るものだから来人としては居心地があまりよろしくない。
「それでは、各大異界を担当する部隊の部隊長を紹介する」
「あ、呼ばれたよー」
「ああ、行くか」
「ふん」
壇上に並ぶ三代目候補の三人と、そして対岸からはもう二人。
ヨーロッパの大異界を担当するゼウス。
北米担当のライジン。
南極担当のティル。
アジア圏、日本担当のリク。
そして中国担当のライト。
各大異界にそれぞれ王族を長とした部隊が配置される運びだ。
ライジンの隣にはメイドのイリスが、そして三代目候補たちの足元にはそれぞれの相棒とするガイア族も居る。
如何にも神様という見た目の白髪で長い髭をしたゼウスの相棒は居ない様だが。
ここ最近は百鬼夜行で単身米方面の鬼を殲滅していた来神は家に帰ってきていなかったので、来人自身父親とは久方ぶりの再会だ。
壇上でちらりと父の方を見れば、来人に気づいた様でにやりと笑い返してくる。
そして、校長先生の話の様な眠くなる長話をアナが始めかけた時。
「――まあとにかく、全員ぶっ倒して核持って帰りゃいんだよ!」
後方、つまり集った神々の群衆を割って、遅刻してきた二代目神王ウルスが現れた。
「おい、ウルス。遅いぞ」
「すまんな、道に迷った」
まさかの方向音痴だった。
天界軍の神々から笑いが漏れ、それに釣られてウルス自身も豪快に笑っている。
なんだかんだで、校長先生の長話よりは、粗雑で豪快な二代目の遅刻の方が神々の士気を上げた様だ。
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