天界
扉を潜り、抜けた先の世界。
白――潔癖の白一色で作られた、タイル張りの円形の部屋。
まず目に入って来たのは大量の扉だ。
円形の部屋の壁にはいくつもの扉が設置されていて、その扉が来人たちが来た時と同じ様に一瞬淡く光り瞬くと、様々な容姿をした神々が忙しなく出入りしている。
「ここが……、天界」
「だネ。さっさと原初の
「ほら、行こー」
ガーネと陸がとことこと歩いて行く先は、光の柱。
人々はその光の柱に乗って、ふわりと浮いて更に上層へと昇って行く。
その様はまさに光のエレベーターだ。
その光のエレベーターに乗って、二人と二匹も上層へ。
天界。
無限に広がる天空の上に浮いた、白の建造物で覆われた浮遊島。
今来人たちが地に足を着けている一際大きな島の周りに、他にも多くの浮遊島が浮いている。
中には家だけが建てられた小さな島も在れば、一つの街を形成した大きな物も存在する。
「ここが天界の本殿だネ」
「道なりに真っ直ぐと奥まで行ったら、原初の三柱が住まう“王の間”に続いているよー」
ガーネと陸の案内の元、真っ直ぐと伸びる大通りを進む。
通りの左右には白を基調とした綺麗な建物が並んでいて、道沿いには屋台が並んでいる。
売られている物は謎のお菓子の様な物や、アクセサリー類の類、武器なんかも並べてある。
「なんか、思ってたのと違うっていうか……賑やかだね」
「そうだねー。あの辺は暇な神様が趣味で作ったものを売ってるんだよー」
「神様って、物作るのか」
「人間が作った物を見様見真似で作った、パクリだけどネ」
「神を模して創られた人、その人が作った物を更に神が真似る、なんか不思議だよね」
そう話をしながら、道なりに歩いて行くと大きな扉が見えて来た。
巨人でも通りそうなくらい大きな、これまた真っ白な扉。
その大きな扉の両サイドには門番だろうか、大きな兵士を象った人形が置かれていて、互いの持つ槍を交差させて扉を塞いでいる。
「じゃ、僕はここで。終わったらまた合流しよー」
「あ、陸は来ないんだ」
「僕は初代に用事はないしねー、後で一緒にお弁当食べよー」
「うん、ありがと」
陸とモシャはそう言って天界の人混みの中へと消えて行った。
「じゃ、ネたちは王の間だネ」
「うん」
そうして、扉に向かってガーネが話しかける。
「――三代目
名乗りに呼応して門番の像は動き出し、その交差させた槍を真っ直ぐと持ち直す。
そして、大きな扉は誰も触れていないのに、ゴゴゴと大きな音を立てて、一人でに動いて開いた。
「おお……」
「じゃ、行くネ」
来人はとことこと先導して行くガーネの後を付いてく。
長い廊下の壁面には、古代の文字の様な物と絵が描かれていた。
「ガーネ、この壁の絵は?」
「世界の歴史が記されているらしいネ。ネは興味ないから分からないけどネ」
「誰に聞けば、分かるんだ?」
世界の歴史。
世界の創生から、神が産まれて、そして今現在に至るまでの記録。
来人はそれがどういうものなのか、この壁画に書かれている内容に興味があった。
「大図書館でも簡単な物なら読めるけど――でも、今から会う人が、一番詳しいんじゃないかネ?」
「ああ――」
確かにそうだ。
だって、これから会う人物は、原初の三柱――この世界創生の頃から存在している神様、初代神王なのだから。
廊下を抜けた先。
そこには天界へ来るときに見た神々の紋章が大きく象られた扉があった。
今度の扉は人間大のサイズ感で、施錠もされていない。
来人が押せば開きそうだ。
「この奥だネ」
「うん……」
来人は緊張しつつも、その扉を開ける。
「やあ、よく来たね」
すると、どこからともなく声がする。
部屋の中を見回してみる。
部屋の中央には小さな泉、壁には食器棚や本棚、ローテーブルと畳のスペースまである。
おや、この部屋、見覚えが有る。
そう思えば、先程の声にも聞き覚えが有る気がする。
来人は更に部屋の奥へ歩を進めて、部屋の中央にある泉まで来た。
それは浅く入っても膝まで浸からないくらいだろう。
それでも、まるで吸い込まれそうな程に深い海の色。
やはり、ここは以前にも来た天界の白い部屋だ。
ならば――、
「アダンくーん」
泉に向かってそう声を掛けると、
「ざばーーーーん!!!」
前回と同じ様にアダンは登場。
その勢いで泉の水が吹きあがる。
「久しぶりだね、ライト!」
「久しぶり」
天界の友人との再会を喜び合う二人。
「ちょっと待つネ。らいたん、その人と知り合いだネ……?」
「え、うん。前に一度会ったんだけど、どうしたの?」
「だって、その人は――」
ガーネがそう言いかけると、その言葉を得意げなアダンが引き継ぐ。
「ふふん。改めて自己紹介しよう! ボクはアダン。原初の三柱の一つ、初代神王だよ」
そして、泉の水アダンは初代神王と名乗った。
「えっ、アダン君が、初代様……?」
「初代様はやめてくれ。アダン君で構わないよ」
「いや構うって、アダン君にじゃなくて主に周りの人たちとかに!」
「えぇー、大丈夫だって」
アダンは唇を尖らせる。――様に見えなくも無い。
何分全身水で、人型を模してすらいないから、表情が読みづらい。
「でも、アダン君は初代の王なのに、どうして水の姿なの?」
「それはね――」
「それは、彼のアイデンティティたるその姿が“破壊”されてしまったからだよ」
アダンの言葉に被せて、代わりに来人の問いに答えた人物。
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