不完全人間

ゆらゆらクラゲ

欠損

不平等

第1話 心の欠損

「ここなちゃん酷いよ。なんでそんな事言うの…」

何が?

「ここなちゃんの笑ったとこ見たことないよね。」

…何よ。

「あいつ損とか考えないのかな…」

何が損なの?


「だってしょうがないでしょ?」

ココナチャン…ココロコワレテルンダヨ。


この世界の人間は


何処かしら欠損している。例えばお母さんは、生まれた時胃が機能してなくて母乳が消化出来ず、死ぬ直前だったらしい。

でも昔の技術だとそんなの容易くて、胃がなくても生きれるようになる手術をしたらしい。お母さんは

「今では食べなくてもいいからとっても楽だわ~」、と言ってた。


もちろん私、彩木心無も例外ではない。

私は少し異常だった。生まれた時私は見る限り体は欠損していなく、検査をしても見つからなかったらしい。だけど歳を重ねるうちにわかった。時々定期検診にきた6歳の時、

”欠損”が見つかった。

お母さんは最初はやっと直せると喜んでいた。私も嬉しかった、やっと分かったと。


だけど欠損内容を聞いた瞬間私達は青ざめていた。


精神的な欠損。


精神的な欠損は人口のたったの2割しか存在してない。

しかもこの欠損は生まれた時には分からず、歳が取る事にじわじわと壊れていく。道理で私は6年間も分からずじまいだったのだ。


何処が壊れているのかお母さんは震えている声を出しながら聞いた。

医者が言うには、私は心が壊れていくらしい。聴くのが怖かった、でも嫌でも聴こえる。


お母さんのように手術は出来ないもの。


だからこそ

一生つきまとう”障害”。




幼少期に知ってはいけない悲しい現実だった。


聞いているうちに確信した。


私はもう

”普通”じゃなくなる。


その日から私は現実から目を背けた。

自分の部屋には誰も入れずにただただ小さい頃に1度お母さんに怒られた元凶の壁の落書きを見て一日を費やしていた。今思うとまだあの時は正常だったのかもしれない、正常な時のままだったら良かったのに。


私はロードマップから外れた。


いつも扉の向こうから2人が話してくる


先生は言ってた

「今からでもまだ間に合うよ、カウンセラーとお話しないかい」


お母さんも

「きっと大丈夫よ。お部屋から出て一緒にお母さんとお話しよ。」


何が”今からでも間に合う”って、”大丈夫”って、


もう全てを元に戻すなんて無理なんだよ。

変えることも出来ないんだよ。


お母さんも先生も皆嫌いだ。

話しかけてくるな。


私の目の前から消えろ。

心が2人を殺したいと言っている。


私は気づいた。


6歳にして私は生まれてはじめて”殺意”を持った。









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