はじまりと変化
第1話 ノーマルライフ
チャイムが鳴り響く。今では肌寒いであろう服装のクラスメイトは席に着く。先生が来る。授業が始まる。先生が俺達の知らないことを授業として学ばしてくれる。ランチを食べ、そして放課後のチャイムが鳴り、皆は疲れ果てているはずなのに颯爽と教室から出ていく。俺はそれを虚ろな目で見ていた。
「おーい銃斗!帰りにゲーセン寄ろうぜ」
「…おう」
俺は力のない声で言い、微笑んでいる明輝の隣に歩み寄っていく。
そのせいか明輝に道の途中で
「お前元気ないよな、少しは元気出せよ」
何百回も聞いた明輝の心配の声に応えた。「別に大丈夫だ」
「ならいいんだけどよ」
淡い赤色の髪と非対称にお前はいつも、
俺の見たくない悲しい顔をする。
でもゲーセンに着くとその顔は笑顔になり台に走っていく。
「なぁ銃斗!この台取ろうぜ!」
子供のように目をキラキラさせながら俺に同意を求めてる。
「おう」
俺がそう言うとすぐさまやり始めた。
明輝は慣れているのかスムーズに操作し景品を取る。
「ラッキー取れたぜ!」
俺は素で「お前すげぇな」と言えた。
その後様々な台に行き最後には俺の好きなゲームで締めにした。
「お前マジでこのゲームだと最強だよな」
「そうか?このキャラクター銃しか使えねぇからムズいけど」
「だからだよ、それマジでクリア出来ねぇんだよ!」
「お前の操作が雑だからだ」
すると明輝は頬を膨らませ、
「銃斗辛辣ー」
と、怒っているのか分からない顔をしてきた。
俺は一日の中で一番好きな時間だった。だけどそういうものはすぐに時間が終わるものだ。
「じゃあな!」
「おう」
俺は明輝の後ろ姿をずっと見てた。だけどすぐに見えなくなった。
あぁ居なくならないでくれ、早く会いたい。
明輝と別れるとより孤独が増す。家はあまり居たくなかった。別に家族が居ないわけじゃないし、虐待されているってことも無いし、仲が悪い訳でもない。
両親はただ俺を空気の様に扱うだけ。衣食住はくれるけど、その一つ一つの行動に全くもって愛情を感じない。
昔はこのことが嫌で、両親に褒めてもらいたくて頑張った。学校も家事も頑張った。頑張ったんだ。頑張ったはず。
なのに褒めてられなかった。
もうその時から諦めて、一人で外が出れる歳になった時出来るだけ家にいないようになった。だけどこの時間は必ず会う。両親を見ると苦しかったはずなのに、もう何も感じなくなった。
そんな事考えるのはやめて急いで部屋に戻り、ベットに入る。布団に入っていつも心の中で言う。早く、早く、朝になれ。早く学校に避難したい。明輝に会いたい。
そう思いながら眠り朝が来る、そしてこれの繰り返し。
これがいつも通りだと思っている自分自身を恨み続けてる。
その時の俺はなんでこの日常が幸せとは気づかなかったんだろうって。
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『あの悲惨な事件、連続殺人事件の日から2年が経ちました。現在でも行方不明者は見つかっておらず捜索を中断致しま…』プツ
「うるせぇ」
ラジオの電源を消し、まだ日が出たばっかりの空を見る。自分の息すら聞こえる無音の路地裏に思いを馳せ、脳内のノイズを聴こえないと思わせる。
あの日から俺は”行方不明者”というレッテルが貼られ、世界中に知れ渡った。
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