夜空の下で食べる夕飯は美味しいです

 釣った魚を本で見てみると、どうやら毒はないようで食べられるらしい。よかった、これで毒があろうものならルナがどんな顔をするか分からなかったからな。


「そしたらさばいて煮るか」


 生姜とか醤油がないのが残念だが、生姜に似た香味野菜は実はあるのでそれと塩をぶち込んで煮ていく。小魚は塩焼きにしてみる。


「まだまだできないから食べるなよ」

「うう……分かってます」


 指をくわえて見ているが、少し位料理をしようとはしないのか。


「ルナも料理してくれていいんだからな」

「いえ、私はあまりそういうのは出来ない、というか少しは出来はするのですが、あれから血がダメになっていましたし、それに多分ご主人様がしたほうが手際がよくて、美味しい料理が出来上がる気がします」


 あまりやったことがないから、できないと言っているということかな。でも料理っていうのは慣れだし明日からは少しやってもらうかな。


「なら少しくらいはやってもらおうかな。今日はもう盛り付けるくらいだけド、明日からは包丁とかも握ってもらおうかな。何事も練習だよ。俺も偉そうなこと言えないけどな」

「……そう仰るならやってはみます」


 俺もこんなこと言っているが、素人でしかないので少し恥ずかしい。気づかれなければいいな。


「難しく考えないことだよ。さて、そろそろできたみたいだし食べよう。皿を取ってくれるかな」

「どうぞ」


 ルナが渡してくれた皿に煮つけを持っていく。色が醤油を使っていないし、砂糖も入れていないのでどちらかというと汁物みたいになっているけど、きっと美味しいだろう。いい匂いだし、淡水魚独特の臭みも感じない、あの生姜に似た野菜が聞いたのかもしれないな。


「これ、美味しそうです」

「ここまではいいけど問題は味だな」


 魚づくしだな今日は。元気一杯になりそうな予感。米があったらなお良し。現状パンしかないのが惜しいところだ。


「ん、これ美味しいです」

「調味料が限られているのに、ここまで出来がいいとは思わなかったな」

「身体が温まりますぅ……」


 大変リラックスしているようだ。風呂には入れないけど、それと同じくらいには温まるだろう。川から温泉噴き出てきたらいいんだけど、そんな都合のいいことあり得ないし。この前、ルナのおかげで知ることのできた防御魔法内部の温度操作のおかげで気温まで快適だ。これは本当にいいな。やりようによっては何かを乾燥させるときにすごい役立ちそう。


「空もすっかり暗くなりましたね」

「この前と月の形は少し変わったけど、見えている星は変わらないな」

「また新月になったら違う見え方をするんでしょうか」

「その時に確認すればいいだろう。そうそう星空なんて変わるものでもないし、王都に着くまでに一回くらいは見られる星空だろうさ」


 満月と新月。星を見るのであれば、月明かりのない新月の時のほうがよく見える。ミルキーウェイ、すなわち天の川が今でも十分綺麗なのだから、もっと綺麗に見える。天の川が見えるということは銀河があって、ということは、宇宙空間は地球と共通しているのかな。あるいはそれすらもまったく異なるのか。これちょっと気になるな。そう考えたら俺が異世界人と交流しているのではなくて、宇宙人と交流していることになる。SF感があって面白そうだ。


「王都までは時間がかかりそうですね。王都に行ったらまず何をしましょうかね」

「そうだな。大きな風呂にでも入りたいかな。旅をしているとなかなかお湯につかることができないからな」

「確かにそうですね。温泉に浸かって、それからご飯食べて、観光もしたいですね、綺麗もお城だってありそうですし」


 そういえばルナは昔聞かせてもらった話に王都が出てきたから行きたいと言ってくれたんだった。


「期待が膨らむな」

「とっても楽しみですよ」


 城に関しては俺も興味がある。宮殿みたいな感じなのか、もしくは物語とかにでてくるようなtheみたいな感じか、あるいはその併用なのか、はたまたまったく異なるのか。どのような形状であっても、わくわくする。城とか巨大建造物にはどうしてかくも魅力があるのだろうな。


 後は馬の名前か。いま、無理に決めなくてもいいような気がするけど、どうなんだろう。当の馬はもう寝ているようだ。飼葉は綺麗になくなっているので寝る前に補給しておくか。


「馬も食欲旺盛で元気一杯ですね」

「馬が元気じゃないと困るから健康状態にはきちんと気を配らないとな」

「……さっきはああいいましたけど、もっとこの子の知ってから名前を付けてもいいのかもしれませんね」

「だな。何度でも言うけど、安易に決めていいものでもないだろうしな」


 言霊という概念がある程度には言葉を発することは強い力を持つとも言われる。名前は最も口にする機会が多いともいえるから、言霊としては最重要と言っても差し支えないのではないか。そんなものを軽々しく決めて良いものではないのだ。


「そしたら明日も早いし寝るんだ」

「そうします」


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