ギルドでご飯を食べました
「それじゃ、明日の準備をしてから宿屋に戻ろうか」
「明日の準備?」
ルナは首をかしげたが当然だろう。明日からは初心者ではまずしないような依頼を受けるつもりなのだ。想像がつかないのも仕方がない。
「明日から数日かかる依頼をこなしていくんだ。そのためのポーションとか食料の買いこみだな。きちんとした準備が必須だからな。ギルドではそういった商品がたくさん売っているからたすかるんだよな。まあ多分、一つ一つ自分の足で専門店に行った方が安いんだろうけど、面倒だからいいや」
「高いことが分かっているのにここで買うのは少し愚ではないですか?」
ルナの毒舌が飛んでくるが、俺はあきらめない。
「もう店が閉まっている可能性もあるし、明日はギルドで依頼を受けてからすぐに出発するつもりだからな。明日に集めていたら出発が昼過ぎになってしまう。それは避けたいんだ。それにな、高いとは言ってもそこまで高いわけじゃないぞ。ギルドもそれぞれの専門店から仕入れているし、儲けるためにここで売っているわけではないからな」
「そうなんですか。それなら分かりました」
ルナも納得してくれたので沢山ポーションと保存食を買いこむ。これだけで今日の報酬の何倍かが拭き取んでいるが必要経費だ。明日から受ける依頼の報酬ですぐに黒字になるから気にもしていない。
「すごい量ですね」
「こういうのは惜しんではダメだからな。回復魔法も使えなくはないし、食料も現地調達できなくもないけど、もしもの時ないと、速攻でそれは死につながっているからな。命を救う道具と考えればこれくらいの準備は必須だよ」
ルナはなるほどと興味深そうにみている。少しずつでも冒険者の常識を覚えていってくれればお使いも頼むことも簡単になるだろうな。
「さて、今日はせっかくだからこのギルドで飯を食っていくか。ここのも美味しんだぞ」
「ここでしっかりとしたものも食べられるんですか!?」
ルナは驚いている。
「そんなに驚くことでもないだろう。何のためにテーブルと椅子がたくさんあると思っているんだよ。そもそも、宴会しているパーティーが見えるじゃないか」
「あ、本当だ。あの人たちが食べているのも美味しそうです」
そんなに涎を垂らしそうな顔をしなくても注文すればすぐに来るのに。だが、そんなルナの姿はどこか微笑ましい。
「早く頼みましょう!」
「分かったから。手を引っ張るな」
俺をせかしてくる。よく見るともうテーブルについているではないか。その姿は小さい子供だ。だからこそ微笑ましく感じるのかもしれない。
「さあ、何を頼むかね」
「私はあれがいいです」
ルナが指さしたのはから揚げのようなものだ。確かにから揚げは美味しいのでいいだろう。もっとおしゃれなものもないわけではないのにこれを選ぶとは宿屋で食べたときから分かってはいたけど、ルナは結構な大食感だな。
「分かった」
メニューをざっと確認して俺も注文する料理を決めて、店の給仕を呼び注文するとほどなくして料理が運ばれてきた。
「割と多いけど大丈夫か?」
「平気です。それよりも美味しそうですよご主人様」
本人が大丈夫というのだから大丈夫なのだろう。血液がダメでダウンした割には元気だな。いや、本当に。
「美味しいです!」
いつの間にか口に運んでいた。一生懸命に食べている。そんな焦らなくても食事は逃げはしないのになあ。
「ゴホッ! うぐ~」
「ほら慌てて食べるからだ。水飲んで落ち着け」
ルナはから揚げを喉に詰まらせかけてむせてしまった。まったく、がっつくからだ。
「そんあ早く食べたって食事がとられたりはしないからゆっくり食べろよ……」
「ごめんなさい……」
むせて咳が出て涙目になった状態で謝ってくる。そんな目でこっちを見るな。だがやはり疑問ではあるな。
「そんなに慌てて食べるのには何か理由でもあるのか?」
ルナは少し目をそらした。それも申し訳なそうな感じではなくて何かをごまかすために視線を動かした感じだ。コイツ、何を考えているんだ。
「別に怒りはしないぞ」
その言葉でやっと言ってくれた。
「だってご飯が美味しいから。こんなに美味しいならすぐにでも食べたいし、お腹もすいているから早く食べたいんですよ」
なんともそれだけの理由だった。もう少し深刻な理由があるのかと思って聞いたら目をそらされ、結局これかよ。なんだよまったく。でも割と面倒なのではなくてよかった。
「ま、味わってたべてくれよな」
「はい!」
元気いいなまったく。これだけ元気なら明日からも大丈夫かな。
食事を食べ終えると宿屋に戻って風呂に入った。風呂から上がるとルナは二日連続で続いた変態性の高いプレイを俺に要求することなく横になるとすぐに寝息を立て始めた。なんやかんやでかなり疲れてしまっていたのだろう。明日以降も頑張ってほしいものだ。
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