奴隷の武器を買いました②
店の中に入ると何人か客がいる。ギルドで見たことある奴だし冒険者だろう。軽く会釈だけして店主のおっさんのいる奥へと足を進める。
「おい、おっさん俺だ。朝頼んだ武器のメンテナンスは終わっているか?」
「問題ない。お前さんが丁寧に使ってくれているおかげで時間もそこまでかからん」
プロに褒められると嬉しいものだ。
「それでおっさん、今日は杖も欲しいんだ。こいつが使うんだ。さっきギルドで魔法力を測ったら結構たくさんあるということだった。合う杖を教えてくれないか?」
「なるほどな。魔力が多いとすれば丈夫な方がいいだろう。後は大きさだな。大振りな方がいいか、小ぶりな方がいいのか。これは体格で選ぶのが基本だが……そうだな、嬢ちゃんの場合は小ぶりな方がよさそうだな。ちょっと待っておれ。何本か持ってくる」
おっさんは立ち上がって、店内に置いてある杖を持ってきて俺たちの目の前の置くと奥へと消え、すぐに杖を何本か持ってきた。
「うちにあるので合う可能性のあるものはこんなところだな」
「初心用とかの方がいいんじゃないのか?」
「もちろん、練習用としてはいいかもしれないがギルドお墨付きで魔力が多いというのなら、初心者用のような安価な杖を使ったらすぐに杖の方が参ってしまって暴発する可能性がある。だからある程度の値段がする高品質な杖を選んだほうが安全だとワシは思うがね」
なるほどそういうことか。俺は魔法が使えることに浮かれてかなりいいのを買ったけど結果的に、それが良かったということか。
「で、実際に手に持ってみてどうだ?」
「そうですね。これとこれは比較的しっくりきたかもしれません」
ルナが示したのは小振りだといってもってきたものの中では大きな方の二本だった。
「おい、この嬢ちゃんが勘でその二本をえらんだのなら魔法の才能は本物かもしれないぞ」
店主が驚いたように俺を見てくる。確かに作りはよさそうな杖だがそんなに驚くことなのだろうか。
「どういうことだ。確かに作りがよさそうな高級品には見えるけ……」
「そういうことじゃない。そもそもこの店にあるのはワシが作っているのだから品質は良いに決まっているわい」
おっさんに少し怒られてしまった。
「す、すまない。そしたら何がすごいっていうんだ?」
「ああ、今選んだ杖はなこの店でも特にアクの強い素材を使って作られた杖だ。つまり人を選ぶ杖ということだな。こういったアクの強い杖を使いこなせるには基本的に高位魔法使いだ。そういう連中は自らの勘とやらに基づいて杖を選ぶと例外なくアクの強いこういった杖を選ぶ。お前さんもそうだな」
おっさんの言いたいことはなんとく分かった。でもそれだけで才能があると決めつけるのは早計なのではないか。
「今、それで決めるのはさすがにあり得ないというような感じだな
図星だ。やはり同じような疑問を持った者は多かったのだろうか。
「こういったアクの強い杖はそもそも魔力の弱いものは選ぼうとしない。ワシも長い間この商売をしているがそれについては例外がないと言ってもいい」
「なるほどな。それでこの2本からどう選べばいい?」
「こればかりは本人次第としかいいようがなくてだな。嬢ちゃんが気に入ったほうで問題はないだろう。二本とも材質、品質共に申し分ない」
なるほど、あとはルナに委ねるしかないか。話を聞いていたルナもその2本の杖に目線を戻して吟味しているようだ。俺にはルナにとってどちらがよい品なのか見分けることは出来ない。もどかしい気分だ。ルナは持ってみたり少し振ってみたりしている。手元にあるのだから持ちやすい方が確かにいいだろう。
しばらく悩んでいた俺の前に1本の杖を差し出した。
「決めました。この杖にします」
「分かった。そしたらこれにしよう」
ルナがしっかり自分の意思で選んだのだ。きっと大丈夫だろう。
「おっさん、あとは適当な防具を見繕ってくれ。動きやすさ重視で頼む」
「それは先に言ってほしかったがな。だがちょうどいいのもあるし、高級な杖を買ってくれるからな。少しは価格も考えよう」
このおっさんは無愛想で抑揚のあまりない話し方をするが今日はかなり機嫌が良いようだ。防具もセットにしてもらい金額を提示してもらうと、想像の倍くらいだったが、背に腹は代えられない。代金を払うとおっさんも大変だなと言ってきた。分かっているならもう少し安くしてほしいところだ。
「そしたらまた何かあったら来てくれ」
おっさんもこんなに高い杖が売れたのなら幸せだろう。
「いい杖があってよかったな」
「はい、今からでも色々試してみたいです」
「そもそも、ルナは攻撃魔法を使ったことはなかったって言っていたじゃないか。知らないのにどう使うんだよ」
「そうでした」
この機嫌のよい姿はいつ見てもいいものだ。こちらまで明るくなってくる。今日はもう宿に戻ろう。本格的にルナに戦ってもらうのも明日からだ。
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