奴隷を買いました

「お買い上げありがとうございます。それでは書類の方が必要となりますので、先ほどのお部屋に戻りましょう」


「分かった」


 奴隷商の男と最初の部屋に戻って、少し待つように言われ男は部屋から出ていった。


「奴隷かあ」


 少しリラックスした座り方に変えて、奴隷と奴隷商の男を待っているとい何気ない一言が漏れた。別に深い意味もない。ただ、口に出したくなっただけだ。

 自分が奴隷を買うなんて地球で普通に生活していたころは考えもしなかった。どういうわけか、異世界にきて幸いにもチートのような力があったから稼ぐ手段もできて数か月一人で生きてこられた。現地の冒険者とパーティを組もうと考えたことも1度や2度ではない。だが、様々なリスクがあったのでパーティを組むことは難しかった。


 結局、ここまで引きずってしまったか。でも、そんな日も今日で終わりだ。俺は可愛い少し気の強そうな女の子を自分のものにできるんだ。そうだ、せっかく異世界なのだから生活できるようになったし自由にしてもいいんだよな。なら、男の夢、ハーレムを作るのも悪くないかもしれない。


「ハーレムか……、いいかもしれない。よし作るか!」


 誰もいない部屋で一人勝手に決意をする。


「お待たせいたしました」


 勝手に決意をしたところで奴隷商の男が戻ってきた。そばには購入する奴隷もいた。恰好は檻で見たときと変わらず、両手両足に枷を嵌め、動きを封じられ、首には首輪がつけられている。唯一違う点は、その首輪に鎖がつながれており、その鎖の先を奴隷商の男が持ってることだ。

 ダメだ、やっぱり興奮する。買った後でもこういう遊びをしてみたいという欲があふれ出してくる。でもそれも許されるのかよくわからないけど少しだけ確かめてもみよう。それに両者合意の下行えばまったく問題はないだろう。現代ならだいぶ問題のある行為のような気がするけど。


「ほら、ご挨拶しなさい。この方がお前のご主人様になられるのだ」


「っ……、よろしく、お願いします。その、どうかわた、私を可愛がってください」


 彼女にとっては屈辱なのだろう。言葉を詰まらせながら、覚えさせらたであろう文言を口にして頭を下げた、というより下げさせられていた。


「当商会に入荷して日はそれなりに経過していますので教育それ自体は受けているのですが、態度だけはどうにもなっておりません」


「反抗的な部分があるという認識で問題ないか?」


「仰る通りです。それ以外の点についても説明させていただきます」


「頼む。ここで食い違いがあって購入した後で何かあったら目も当てられないからな」


「承知しました。まず、この奴隷の種族ですが狐獣人となります。性格の方はご覧の通りで、少々素直でない部分も目立ちます。また、年齢は16歳で健康体でございますし、処女であることも確認しておりますので性病の類も安心していただいて問題ありません」


「性病云々の話があるということは、そういう用途で買っているわけでなくても、そういうことをしても大丈夫ということか」


「はい、奴隷はあくまでも『モノ』でございますので生死さえも主人に委ねられるのです。奴隷とはそういう身分ですので」


「なるほどな。では続けてくれ」


「はい、それ以外の点ですと、諸般の事情により価格は張らないとはいえ、身体能力や魔法適性は高い種族です。高額で取引されている地域もございますので、冒険者というお仕事で諸国を旅される場合には誘拐等に気を付けていただくのが無難でしょう。最も、奴隷を誘拐しても、主従の契約は主人が死亡するか、主人の意思以外で開放はできませんが」


 結構奴隷制度も複雑なものがあるらしい。


「以上がこの奴隷の説明です。いかがされますか」


 ここまで聞いても問題などない。その態度さえも屈服させたい。でもそれなりに反骨心は残しておきたい……いや妄想に浸るには後にしよう。


「大丈夫だ。この奴隷を買おう」


「ありがとうございます。契約の前に先に代金の方をお願いします」


「ああ、それは当然だな。それよりもこの態度だ。少しは勉強してくれるんだよな」


「もちろんでございます。正直私たちとしても引き取っていただいて大変ありがたく思っていますので頑張らせていただきますとも」


 胡散臭い笑みを浮かべた奴隷商の男だったが、金額自体は随分とまけてくれた。定価の30%は下げてくれたようだから、本当に不良品に近い奴隷だったのだろう。


「安いに越したことはないからな。助かる」


 金をテーブルに並べ、それを渡すと男も丁寧に数えていく。


「問題ございませんので奴隷契約の方に移りましょう」


 俺に小さなナイフを手渡すと、それで切って血を出してそれでどこか奴隷の肌に触れろと言う指示があった。その触れる場所に奴隷の紋章が刻まれるらしい。正直、痛いのは嫌だが仕方がない。治療の方はすぐにしてくれるということなので問題もないだろう。


 言われた通りのことをすると、床に大きな魔法陣と現れ、まがまがしい光を発し、それは奴隷を包み込んだ。奴隷も小さくない痛みを感じているようで声にならない声を上げていた。そして俺が血の付いた指を押し当てた右手の甲には確かに何かの紋章が浮かび上がっており、おそらくそれが奴隷の紋章なのだろう。


 光が消えると、奴隷はその場にうずくまって、肩で息をしていた。


「以上で契約は終了となります。これで正真正銘この奴隷はお客様のものとなりました。首輪は法律上、外すことはできませんが交換することは出来ますし、枷は外して問題ございません。服装については何ら制約はありませんのでお好きな服を着させることが出来ます。どうぞ奴隷のいる生活をお楽しみください」


「分かった世話になったな。それじゃこっちへ来い」


 息も整って立ち上がっていた奴隷に指示をだすと、悔しそうな顔こそしているものの、素直に従い俺の側に来てくれた。首輪から伸びる鎖をもってみたが、その時にえも言われぬ多幸感に全身を包まれて体温が上がった気がした。


「本日は誠にありがとうございました。また奴隷のことで何かありましたら当商会をよろしくお願いします」


 そのまま立ち上がり、奴隷と共に奴隷商を去った。


「俺が君の主人だ。これからよろしく頼む」


「変態なんですかご、ご主人様は……」

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