歴史の彼方に忘れさられし者、再臨する。

青空 空音

少年期

プロローグ 勝利の代償


「師匠!死なないで下さい!」




教え子である女の子の叫ぶ声が響く。その腕に抱えているのは息も絶え絶えになり血を吐いている俺……ジーク•レオンハルトだ。



「すまない。……お前の服……血で汚しちまったな」




 既にボヤけている視界に映るのは、戦いの前には真っ白に輝いていたはずの真っ赤に染まった彼女の服だった。



「そんな事は良いんです!服はまた買えば良いんです!でも師匠は!」



「……もういい。自分の死に際は……自分がよく分かってる。だから……もういいんだ、アリス」



 魔王を倒したはずだった。だが魔王は死に際に自分の死とリンクする呪いをアリスにかけようとした。それを庇って俺が呪いをくらってしまった。

 魔王は既に霧となって消えていった。今俺が生きているのは奇跡と言ってもいい。だがそれももうじき終わる。せめて最後に仲間達に一言。



「クレア、お前の剣の腕は……もう俺以上だ。だがこの世界は……広い。お前以上の剣士もいるだろう。常に研鑽を怠るな。お前なら世界一の剣士も……目指せる。励めよ」



「……はい。精進……いたします、師範!」



「ルナ、お前の……回復魔法には何度助けられたことか。お前がいなかったらここまで……来れなかった。ありがとう。幸せにな」




「………はい。先生も……向こうで……お元気で」




「レイラ、お前の魔法の数には……最初会った時は驚かされた。……お前は紛れもなく……世界を救った賢者だ。エルフは寿命が長いが……この世界には…まだお前の知らない…魔法もあるだろう。……それを極めるもよし、自分の……思うがままに生きろ」




「了解……しました、師よ!」



「最後に、アリス。お前は……最高の勇者だ。きっと……これから後世に語り続けられる。……お前のしてきた事で……救われた人は多い。それは……誰が何と言おうと……真実だ。だが……それ故に……お前は勇者として……見られてしまうだろう。……でもな……きっといつか……勇者ではなく、ただ1人の少女の……アリスとして見てくれる奴が……現れる。だから……俺の後を追う様な真似だけは……しないでくれ。幸せに生きてくれ」



「師匠……グスッ……分かりました!」



 最後の力を振り絞りアリスに涙を拭う。



「じゃあな……お前ら。……お前らとの旅は……最高に……楽しかったぜ」




 そう言い残し俺の意識は暗く染まった。













「……なた! ……たわよ!」




 う……ん?ここは……俺は確か魔王の呪いを受けて死んだはずじゃ。




「良かったですね奥様! 元気な男の子ですよ!」



 男の子?確かに俺は男だが男の子って言うほどでは。

 そう思った瞬間浮遊感が襲う。え? 俺持ち上げられてる!?



「名前は決めているのか? エレナ?」



「ええ!この子の名前はルーク! ルーク・フォン・リュミエールよ!」



 は? 名前? どう言う事だ? それにこの人は一体?

 自分の身体を見る。まるで赤ん坊の様な手足、目線の低さ。

 これまるでって言うか本物の赤ん坊じゃねぇか!?



「あぅあぅあぅ(どうなってんだこれ!)」



「あなた!ルークが反応したわ!」



「ああ。この子もきっと喜んでるんだろう!」



 こうして勇者パーティで『全能』と呼ばれていたジーク•レオンハルトは新たに

 ルーク・フォン・リュミエールに転生した。









——————————

ここまで読んで下さり有難うございます!

続きが気になる、面白かったと思っていただけたら是非評価、レビュー等お願い致します!





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る