セイラと、オソロシ魔女学校(仮)
ミヤギリク
第1話 ワクワクと戦慄の入学試験 ①
セイラは、目を爛々と輝かせ窓の外の景色を眺める。
「うわー。飛んでる!」
蒸気機関車は、時速120キロもの猛スピードで宙を飛ぶ。
激風に包まれ、セイラは感動しため息をついた。
「凄い、凄いよ!」
今まで飛行機に乗った事は何度かあるが、空飛ぶ蒸気機関車だなんて…
乳白色の雲が、
綿飴のように無限に続いていく。
眼下の景色を眺めると、そこには初めて見る幻想的な風景が広がっていた。
ギリシャ神話を連想させる、
幾何学模様の神殿。
童話に出てくるかのような、妖精達の住処。
深い渓谷の底には、漆黒の鱗に包まれたドラゴンがコロニーを形成し群れを成して生活している。
白肌で、尖った耳をした長身で細身の1団が、白銀の巨鳥に乗って空を舞う。
「何あれ、ホント、凄い!」
そこには、今まで見た事のない幻想的な風景が広がっている。
セイラは、カメラを取り出すとパシャパシャ音を出し、幻想的なその光景を撮影した。
近くに居た人達の冷ややかな視線が背中に突き刺さる。
「あ…ごめんなさい…」
セイラは、慌ててカメラを収めた。
「何で、こんな子が最終試験に受かったのかしらね…」
「ホントだわ。」
「格好からして、変よね。しかも、ジーンズにスニーカーだなんて…」
周りは、クスクス笑う。
彼女達は、パリッとアイロンの掛けられたシルクのような光沢のするローブを着ていた。脇には、かなり年季の入った、上質な素材の鞄を横に置いていた。
髪も綺麗に纏まっている。
皆、上品な良家のお嬢様という雰囲気を醸し出している。
それに比べて、セイラは寝癖がかったボサボサの癖毛をし、毛玉がかったブレザーを着ていた。脇には所々に泥のような跡が付いた鞄を置いていた。
ジーンズには、さっき食べたばかりのサンドイッチのパンくずがボロボロ落ちており、ジュースの染みも派手に付いていた。
皆、こんな田舎娘と、自分のことを馬鹿にしていることだろうー。
セイラは、顔を赤らめ俯きペットボトルのジュースを飲み干した。
しばらくすると、蒸気機関車は、スピードを緩め徐々に降下していき古びた巨城の門の前に降り立った。
「わぁー、何、これ、わくわくする!」
セイラは、目を爛々と輝かせ機関車を降りた?
門の前で、眼鏡を掛けた細身の中年の女が出迎えた。
「では、呼ばれた番号から続いて入場するように。1番…2番…」
この日は、 魔女学校の最終試験日だ。
セイラの心の中は、緊張も強いがそれよりもわくわくが勝っいた。
セイラは、期待に胸を膨らませ夢にまで見た最高の光景に感動していた。
番号を呼ばれ、列に並ぶ。周りの糸の張り詰めたかのような異様な重苦しい雰囲気にセイラは、再び萎縮する。
それもそうだ。みんな、人生が掛かっているのだ。
自分は、異邦人であると言うことをしっかり認識した。
受験生は、図書館で待機させられた。
図書館は、メルヘンチックで豪勢な造りをしていた。
3階建てで、体育館のような広さをしており中央の吹き抜けに年季の入った丸太の支柱がそびえている。
その、辺りを本がズラリと取り囲んでいた。
司書達が、箒に乗り本棚の整理をしている。
中央の吹き抜けには、閲覧スペースがありセイラ達は、そこに案内された。
セイラの番号は、丁度真ん中辺りだ。
受験生らは、眉間に皺を寄せ各々の魔導書を開き杖を振るい小声でひたすら呪文を唱えていた。
セイラは、目を閉じ持ってきた箒に跨ると深呼吸をし宙に舞う自分をイメージした。
1時間ほどして、自分の番が近づいた。
扉がゆっくり開き、案内人が声を張り上げた。
「ではー、185番から195番、こちらへ。」
セイラは、列に並ぶと受験会場まで向かった。
受験会場も、図書館と同様の広さで、美女と野獣の舞踏会を彷彿とした。
「では、185番、エリカさん。」
エリカと呼ばれた少女は、壇上に上がると緊張した面持ちで丁寧にお辞儀をした。
「では、こちらに植物があります。これから、呪文を唱え別の植物に変えたいと思います。」
ミルカは持ってきたミニチュアの緑の植物を鍋にいれると、杖をふるった。
「アルカナ、エクシア…ダラス、ラズ…」
鍋からニョキニョキと、乳白色の植物が姿を現した。
その植物は、奇妙な色をしキラキラと光を帯びていた。
パチパチと、音をなし花火のような幻想的な艶やかな雰囲気に包まれ、優しいメロディーが流れた。
ーわぁー、凄い…
セイラは、息を飲んだ。
「では、186番、ブリギッドさん。」
次は、ブリギッドと呼ばれた少女の番になった。
「では、メロディーを奏でたいと思います。」
ブリギッドは、そう言うと杖振るい呪文を唱えた。
「アルカナ、エクシフ、イゾラ、ソルて…奏でよ。」
すると、植物が緩やかに揺れ甘い無邪気な声で歌を歌いだした。
蜜のように、艶やかな心地よい安らぐ音色だ。
セイラは、瞳孔を輝かせその音に耳を済ませていた。
辺りは、幻想的な心地よい雰囲気で、包まれる。
「うわー。凄い。」
セイラは、息を飲んで耳をすませていた。
「では、187番、セイラさん!」
「はい…!」
セイラは、声を震わせ箒を携え壇上に向かった。
すれ違いざま、ブリギッドに声を掛けた。
「良かったよ!」
ブリギッドは、顔を赤らめ会釈した。
「ええと、では…飛行術をやりたいと思います。」
セイラは、箒に跨ると深く深呼吸し唾を飲んた。
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