第16話 村瀬のルポ
村瀬は自分の黄色いリュックサックからクリアファイルを取り出した。
開くとそこにはずっしりと手書きで書かれていた。
「パソコンで打ち込んでないんですか?」真は声を上げる。
「あたしは、アナログ人間だから、パソコンのパも知らないんだ。でも、めちゃくちゃ書いたから……。読むね」
「はい」
「十三年前の未解決事件について、十三年前鳥取県の馬渡村で放火殺人事件が起こった。八月十六日。天気は雨。台風十三号が日本列島に近づき、この日の夕方まで突風や大雨に見舞われていた。
集まった五人はかつての鳥取の同級生だった。彼らは金が鈴成村の洞窟にあるということを噂で仕入れていた。そして、七月にその決行に至った。
噂は本当だった。後で調べると純金製だったので、これをお金に換えると、数十億という金額になる。
問題は五等分するという話だった。一人が何かと自分の手柄にしようと揉めていた。それを話すために、質素な村で会議をしようと決めていた。
一人、冒険家の立川紀夫が、安全面から馬渡村で話をしようと思い立った。そこの村出身だった田中隆もそれに賛成して、二十年前に空き地になっている古びた洋館があるから、そこで話をしようということで決まった。
約束の日が八月十六日だった。誰もが中止を決意しようといっていたのだが、一人だけどうしてもこの日がいいといった人物がいた。
その人物は――小野寺壮太。
小野寺は学生時代から素行が悪く、他の生徒のいじめをしたり、グループのリーダーとなって盗み窃盗を繰り返してきた。
また、小野寺は昔から柔道を習っていたので、力は相当強く、ケンカでは負けなかったという。
そんな中で、この金を手に入れ、他グループのリーダーでもあった。
八月十六日に古びた洋館で話し合いをすることになった。みんな小野寺から逆らえない人物だった。
その後、何かしら彼は固いもので四人を撲殺、そして持ってきたガソリンに火を巻いて洋館を放火した。
今も小野寺は逃亡している。もしかしたら、この村以外に逃げている可能性は高い。たくさんのお金は持っているので、海外に逃亡している可能性もなくはない。
と、いう感じね」
「小野寺という人物が……」
「恐らく、今眠っているジジイがきっと小野寺だよ。多分金もどこかに眠ってる。整形を幾度となくして、まるで登坂さんが生きているかのようにしてるんだ」
「あくまで、推測ですよね?」
「そう、あくまで、推測だよ。それを本当か確かめるんだ」
村瀬はドアを開けて、後ろを振り帰って、真に言った。
「行こう。その金のありかを」
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