最強勇者の自由気ままなやりたい放題ライフ! 〜私の勇者がクッソTUEEEEのに我儘で自由人すぎる‼️
ニゲル
プロローグ 最強で最狂の主人公登場!
祖国アルディニアの草原。そこで私と部下達は巨大な龍と対峙していた。
「弱い。弱いぞ人間よ! 我を封印した千年前の人間達はもっと強かったぞ!」
漆黒の鱗を携えた奴は口から紫色の炎を吐き出す。草花は燃え散り、虫や小動物は焼き殺される。
私を慕ってくれていた部下の一人にその炎が掠ってしまい、一瞬で全身に火が回る。
「クリシア隊長! 火が、火がぁ!!」
パニックになった部下は取り乱しその場で暴れ回る。武器を持った手を振り回すせいで火を消そうにも近づけず、その間にも彼の体はどんどん燃やされていく。
「ふはははは! 燃えろ! 我が人間の作り出した全てを燃やし尽くしてやろう!」
「貴様ぁ!!」
私は怒りを露わにし剣を握る手に力を込める。
この龍相手に今の戦力では恐らく勝てはしないだろう。
だがそんなことは問題ではない。私はアルディニアの勇敢な騎士として戦い抜く責務がある。
「はぁぁぁぁ!!」
燃やされ殺された部下の無念を込め、私は渾身の一撃を奴に向かって放とうとする。
しかしそれは天から舞い降りた一筋の光によって遮られてしまう。
「うわぁぁぁ!!」
「ぐぬぅ!?」
私も騎士団の部下のみんなも、あの龍さえも吹き飛ばされる。
その光の正体は、天から降ってきた者は一人の青年だった。金色の派手な服を着ていて、右手には無駄にギラギラと輝く宝石がついた剣を持っている。
「ふむ。炎が観客の視界の邪魔になるな」
彼は何か呟き、剣を横に一振りする。すると辺りの草花や人を燃やしていた紫の炎は全て吹き飛び消え失せる。
「貴様我の炎を……一体何者だ!?」
先程まで余裕たっぷりだった奴の態度が豹変する。
そんな奴に対して青年は不敵な笑みを浮かべ、声高らかに話し出す。
「俺の名前はハンドルディ! この世界を楽しむ者だ!」
「楽しむ……だと? 抜かしおって! そんなくだらない信念でこの我が倒せると思っているのか!?
炎を消した程度で調子に乗るなよ……貴様は我の究極の煉獄で魂ごと焼き尽くして……」
奴がまだ話している最中にハンドルディは剣を構え、急に振り上げ奴の体を真っ二つに切り裂く。
「がっ……な……に……?」
「最後の炎だ。盛大に散って俺を盛り上げろ!」
彼は龍を上空へと蹴り上げる。
たった一蹴りで数十メートル飛んでいき、そこで爆散して辺りに眩い光と灼熱の炎を撒き散らす。
「嘘……倒した……のか?」
「何だあの男……一体何者なんだ?」
部下達が唐突に現れ龍を倒した彼に困惑してどう感情を表現したらいいのか分からず狼狽える。
かくいう私も状況を飲み込めておれず、彼らと大差ない状況だ。
「おいお前ら! 何をやっている!」
彼が突然こちらをギロリと睨み、手から光り輝く魔力球を大量に飛ばしてくる。
「うわっ! 何するんだ貴様!?」
前触れもなくこちらに牙を向けてきたハンドルディ。彼も敵かもしれず、私は剣を構え部下を守るべく彼の前に飛び出す。
「盛り上がりが足らん! この俺があの伝説の龍を倒したんだ! お前らもっと盛り上げろ! 讃えろ! いや騒げ! とにかくうるさくしろ!」
「は、はぁ……?」
予想も理解もできないその言葉に私はつい素っ頓狂や声を上げてしまう。
「早くしろ! そうでないと俺があの龍の変わりにこの国を滅ぼすぞ!」
彼の怒鳴り声には覇気が含まれており、私はギリギリ耐えられたが、部下達は耐えられず怯えとにかく彼の言う通り讃え出す。
「ば、ばんざーい!」
「流石ですハンドルディ様!」
「や、やったー!!」
もう何が何だか分からなかった。
目の前の男に常識も騎士としての誇りも全て滅茶苦茶にされてしまった気分だ。
「はーはっはっは!! 良いぞ良いぞ! もっと騒げ盛り上がれ! 最高の祭りを開け! それがこの俺が生きる世界に相応しい! あーはっはっは!!」
両手を天に向かって仰ぎ、まるで劇の舞台役者にように声を限界まで出しこの草原に響き渡らせる。
何なんだ……この男……
目の前の奇想天外で破茶滅茶な男の前で、私は固まってしまい何もできないのであった。
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