第2話・ブラストの化け物エイム力
フリーダムワールドクロニクル、通称FWC。
巷でニュースになる程の大人気ゲームの購入権を運良く引き当てた一人の青年が、専用のVRシステムを装着してログインを始めた。
〈プレイヤー・ブラストがログインしました〉
初期設定はβテスト時のデータを使い、他のプレイヤーよりも早くログインをする事が出来たブラスト。
彼はそのまま彼は、初期装備の一つであるスナイパーライフルを片手に始まりの街の外に出る。
「ここまでリアルなのはすごいよな」
今までのVRMMOとは一味違うリアルな感覚。
それにフィールドに生えている草とかが風に靡いているところ。ここまで作り込まれている作品に当選できたのは幸運だろう。
「おっと、本題を忘れるところだった」
彼の戦い方は芋スナなので草原での戦いは不利になる。
というよりも、雑魚敵にボコられてリスポーンするのが目に見える。
なのでブラストは一つため息を吐いた後、ある場所を目指すために歩き始める。
「高台しかないよな」
始まりの街の街中を見渡せる高台エリア。
推奨レベルは五だが、破壊不可の岩などがあり芋スナのブラストにはちょうどいい場所だ。
それをβテスト時代に見つけた彼は周りにいる雑魚敵をスルーしながら歩みを進める。
って、ワープ機能が欲しいんだけど。
このゲームはリアルの感覚に近いため、重いスナイパーライフルを背負いながら進むのはわりかしきついみたいだ。
まあでも、ブタクサ言いながらもブラストも歩いており、二十分もすれば目的地である始まりの高台に到着した。
「さてと」
βテストからある大きな岩。
その上に登ったブラストはスナイパーライフルを構え、エリアに散らばる雑魚敵に標準を向けた。
「ファイア!」
彼の一言で放たれる弾丸。
その一撃は緑色のイモムシみたいなモンスターに直撃。弾丸を受けた相手は粒子状の光になって粉々に消える。
「よし、先ずは一匹」
ブラストが使う初心者用のスナイパーライフルは、威力は高いがマガジンは6発しか入らない。
まあでもブラストは遠くから敵を撃ち抜く事が得意なので、弾丸のリロード時間を考えながら周りのモブを倒していく。
「おっ、レベルアップ」
淡々と緑色のイモムシを真顔で撃ち殺すブラストだが、レベルアップの画面が出て来たので頬を緩ませる。
「とりあえず、筋力と器用メインに振っておくか」
芋スナをやるつもりなので耐久系はそこまでいらない。
彼はそうやってステータスポイントを振った後、リロードして次の雑魚モブを撃ち抜いた。
ーー
ブラストは雑魚モブを狩り倒してレベル五まで上げた。
その結果、ステータスがそこそこ上がったので彼はモンスター狩りを切り上げて射撃練習を開始。
先ずは一キロ先の木に向かってトリガーを引く。
「うーん、少しズレたか?」
スコープ越しに命中先を見るが、彼が狙った場所からはほんの少しズレているみたいだ。
そのため、少しヤケになりながら次々と弾丸を放ち続ける。
よし、思い通りに撃ち抜けるようになって来たな。
射撃練習を始めてから数分後。ゲームに慣れて来たのかブラストが放つ弾丸は狙いの木の中央を何回も貫いていた。
「これでなんとかなるか?」
初期ボーナスで、レベルゼロの通常弾が入ったマガジンを無限にストレージにいれられる状態。
だが、ゲームを進めると高レベルの弾丸が作れるため、彼は今のうちに射撃の腕を上げたいようだ。
「ん? これって通知か?」
ありったけの時間で練習を続けている中。ステータス画面が開き、彼の元に運営からの通知が届いた。
だが……。
「別に興味はないな」
おそらくオープニングセレモニーでもあるんだろ。そう考えたブラストは通知を無視してトリガーを引き続ける。
そしてメッセージか届いた時から約三十分後。
突如として青い空が真っ赤に染まったので、違和感に気づいた彼が射撃練習をやめて始まりの街の方を見た。
「オープニングセレモニーが始まったのか?」
ただ、こんな重圧感がある感じなのは珍しいな。
他のゲームでは花火が上がったり、パレードっぽい物をやっている事が多いのに。
「こっから見てみるか」
ブラストはスナイパーライフルに取り付けられているスコープを使い、始まりの街の中央広場を覗く。
なんか、ファンタジー世界に全く合わないスーツの男性が空に浮かんでない?
見た感じ誰かわからないが、中央広場にいるプレイヤー達がパニックになっているような……。
「もしかしてアイツが最初のボスか?」
スーツのおっさんが初期ボスなのは珍しい。
いや、実は魔王で今は平凡なサラリーマンの姿をしているのかも。
そう思ったブラストは自分の銀髪を少し触った後、銃口をスーツの男性に向けた。
「こっから狙うのは少しきついな」
一応街内は安全エリアになっているので
なのでそこをβテストで知っている彼は、好奇心半分で引き金に手を置いた。
「よし、ファイア!」
スコープを覗く彼が引き金を引き、スナイパーライフルの銃口から弾丸が放たれる。
そして、その弾丸は空中に浮かぶスーツの男性の頭を貫く。
「……え?」
ゲームのシステム状、決闘以外ではプレイヤーにダメージは入らない。
というよりも軽いノックバックで済むはずなのに、撃ち抜かれた相手は地面に置いて光の粒子になって消えた。
「なんだったん……うおっ!?」
不思議そうにしていたブラストの元にリザルト画面が現れた。その内容はレベルが五から三十五まで上がった事。レア度EXのスナイパーライフルなどのドロップアイテム。そしてデスゲーム主催者の撃破の称号だった。
「あ、もしかして限定のチュートリアルボスだったのか?」
最初に倒した奴が経験値やドロップアイテムを総取りできる。
そのシステムなら今の状況は理解は……うん、考えても無駄だな。
ブラストは首を何回か振った後、手に入ったスキルポイントを振ったりドロップアイテムの確認を始めた。
「このEXランクのライフルめっちゃ強くない?」
初心者用とは桁違いの性能を誇るEXランクのスナイパーライフル。
名前はエルシオンSライフル。名前的に強そうなのだが、目立ちそうなので彼はドロップアイテムを全てストレージに放り込んだ。
「街に戻るか……」
今回の狩りやチュートリアルボスを倒した事で、ゲーム通貨が大量に手に入った。
これなら少しお高めの宿にも泊まれそうだと思ったのか、ブラストは軽くステップを踏みながら始まりの街に向かっていく。
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