野名紅里『トルコブルー』記念句会記

上川拓真

vol.1 祝辞とはいえぬもの

秋草の仲間であり、自慢の同期である野名紅里が句集『トルコブルー』を発刊した。彼女は以前から句集制作を目標にしていたので、様々な困難を乗り越えて無事に発刊できたことを嬉しく思ったと同時に、それを上回るほどの安心感もあった。まずは本当におめでとう。


紅里とは長い付き合いになる、とは言えども俳句甲子園に出場していた頃はお互い顔と名前を知る程度で会話も交わすこともなかった。大学卒業後、彼女が大学に進学し私が浪人生活に入った後に今のような仲になった。その頃から彼女は一足先に秋草に入会し、昭男俳句を学んでいた。当時の彼女はちょっぴりとアホだったので勉強中の私に電話をかけては「昭男素晴らしい!昭男最高!」を連呼していた。その頃と比べると凄く大人になったと感じる。


成長したのは中身だけではなく俳句もそうだ。当時から俳句は上手ではあったが、個人的には勢い任せな部分もあると感じていた。その中でも


蝶々の群れを武力で威圧せよ

ヒヤシンス分からないなら話すなよ

ヒヤシンス大人はここで泣かないし


のような『トルコブルー』にも掲載されるような俳句を残すことができたのは彼女の自力なのであろう。そして、句集の中に並べられると、当時見た時と印象と比較して、不思議と栄える。


薔薇園にたったひとつの薔薇ばかり

あの歌といへば伝はる花空木

生活の遠くへ風船が昇る


紅里らしさを残しつつ、しっかりと写生や実感に即した彼女の代表句とも言える俳句。読者側が先走ってしまうが、第二句集で更なる紅里ワールドを見せて欲しいと思う。



さて、そんな『トルコブルー』発刊を祝福する記念句会が紅里の地元、徳山で開催されることとなった。そんな徳山訪問記は次の話の中で。

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