第1話

白が基調の家の中で花畑を見ながら紅茶を飲む人が一人。黒髪で、この世界では珍しかった。

少女がやってきた。少女も同様にこの世界では珍しい黒髪であった。


とても年相応の笑みを浮かべながら走ってくる少女。


「おはようお母さま!」

「おはよう、ゆーの今日は何のお勉強したの?」

「これ、これでね!!」


ゆーのは耳につけてある白と青のヘッドフォンを指さした。


「算数のお勉強したの!」

「あら、まだ4歳なのにすごいわね。」

「ゆーの、すごいの?」


称号『愛される娘』獲得


意味が分からなくてコテンと首をかしげた。


「・・・えぇ。あなたはとってもかわいくて天才よ」


称号『偽物ノ愛』獲得


うれしい!テンサイってわかんないけど、ママ…じゃなくてお母さまがほめてくれたの!


「みんなに自慢してくる!!ま、じゃなくてお母さまがほめてくれたんだもん!」

「あらあら。転ばないようにね」

「は~い」


ゆーのはよく転んでひじをイタイイタイしちゃうから…ううん。国語の先生が言ってた言い方じゃない。確か…私はよく転んでひざをすりむいてけがしてしまうからお母様に心配をおかけしてしまう…だったっけ?

多分、そうだったはず。


『完全習得』開花。『基礎学力向上』ノ上位互換『完全習得』ニ統合


「輝夜!」


「お嬢様、どこに行ってらしたのですか?お嬢様の足は大変お速いので私ごときでは到底追いつけませんよ…」


「輝夜!私、お母さまに褒められたのよ!」


「よかったですね、お嬢様。」

「輝夜は輝夜でいて?」

「すみません。そのようなご提案をとすわけにはいきません。」

「…わかったわ」


『我儘抑制』発動


「すみません。ゆーの様北雪方の跡取り娘で仰せ在られますから…」


そう。私は北雪方の長女、北雪ゆーの。全てを完璧にこなさなくてはならない。そして、周り引っ張らなくてはいけない。お母さまに褒められたからってウキウキしちゃダメなんだ。


ふぅ


「ごめんなさい、輝夜」


『孤高のソリーテア』発動


少女のような無邪気な笑みではなく、貴族として正解の笑みをにこりと顔に出す。その笑みは可愛らしくも愛らしくもある。でも、張り付けたどこか違和感のある笑みであった。


『大人の笑み《フェイク》』発動。並ビニ、称号『貴族の娘』獲得


「簡単に謝らないでくださいお嬢様。あなたは北雪方の第一継承者であり、立派な淑女なのですから。」


いつの間にかゆーのの後ろにいたメイド長がいった。


「う、じゃなくて、はい。メイド長、ところで執事長はどこにおられるのかしら?」

「存じ上げません。ここに呼び寄せましょうか。執事長ならお嬢様がお呼びと聞かれたらすぐに来られると思います。」

「別にいいわ。」

「かしこまりました」 


さびしくはない。


「お嬢様、当主様からの伝言でございます。今日の夕食では心ゆくまで話そうではないか、と。」


はぁ…


「お断りいたします。と伝えて。」

「かしこまりました。お嬢様」


メイド長は堂々とでも、素早く去っていった


「よかったのですか?」

「なにが?」

「また色々と面倒なことを言われませんか?」

「あー、そうね。でも…いいわ」

「それなら構いません」 

「輝夜はどっちの味方なの?」

「え?」

「私か、あの馬鹿か。」

「馬鹿、というと御当主様のことですか?だめですよ、お嬢様。きちんとお義父様とお呼びしなければ。」


あぁ、やっぱり。あなたもなのね。


「でも、私はもちろん…」

「おい、ゆーの!!」


あぁ、来ましたね。


大きなお腹を揺らし尊大な態度でこちらに向かう我が義父の姿が見えた


はぁ…


「ば…当主。どうかしましたか?」

「今日こそ余と一緒に食べようぞ?」


やっぱり、なんか嫌い。


「少し体調を崩してしまって…」


舐め回すようにゆーののことを見る視線が動く。


「そうかぁ?余には元気に見えるがなぁ、輝夜?」

「………」

「グッあ、ガ…」


ゆーのが咳をした。ただの咳なら、気にすることもなかったのだが


「ゲホッ…ガぁ゙ッ」

「お嬢様!?」


血を吐いた


「お嬢様!メイ」

「お嬢様!」

「執事長!お嬢様が、吐血…を」

「かしこまりまし」


あぁ…なんか、


「おじょうさ」


せかいってこんなくろかったっけ…?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る