第20話 初ダンジョン(2)
◇◇◇◇◇
ルカとアマミは、大ネズミ退治の準備をしている。確かに見える範囲だけでもかなりの数がいることが分かる。これも氷山の一角で巣穴には大量の数がいるであろうことは予想できる。
アマミが嫌がるのも無理はない。
アマミ:「それじゃあ、気の使い方のおさらいからね。全身に気を集める。そして、体の表面に少しずつ放出する。移動速度を上げる時は足の裏に気を集めて放出する。攻撃する時には拳に気を集めて放出する。今回は剣を使わず体術のみで行くからね。いいわね。
今日は気の放出量の調整をうまくやる練習よ。ルカは気の量を調整しなくていいくらい膨大な気を持ってるからあまり気にしていないかもしれないけど、普通は調整して節約するのよ。それを覚えること。いざという時に枯渇するとそれ以上戦えなくなるからね。」
ルカ:「はい、だいたい理解してます。
ところでアマミさん。質問なんですけど、魔術って魔力を使うんですよね?それって気とは違うんですか?」
アマミ:「いい質問ね。魔術師は魔力と言っているけど、実際は同じものなのよ。ただ、気にも性質ってものがあってね。相性があるのよ。
だから、誰でも使えるものではないわ。
私は使えないわね。だから、専門外。
でも、ルカも覚えれば、使えるかもしれないから追々試してみましょう。」
たぶん、ルカは使えるでしょうね。先代黄龍の話を聞く限りは。
でも、私には魔術の詳細は分からないから、また調べておかないとね。
ルカ:「へぇ、そうなんですね。使えるといいなぁ。」
アマミ:「それはまた先よ。準備が出来たら、早速いくわよ。」
ルカ:「はい!」
ルカは、大ネズミのいる方向に飛び出して一匹ずつ拳で仕留めて行く。
ただし、ルカの一撃が強すぎるのか、拳の当てられた大ネズミは破裂して跡形もなく消えて行く。
本来であれば、倒されたモンスターは、徐々に体が透けて消えていき、その場に魔石を残すはずなのだが、ルカの一撃による衝撃が強すぎるのか、体内の魔石ごと粉々に砕けているようだ。
岩陰から見守っていたアマミは、見兼ねて声を掛けた。
アマミ:「ルカ!あなたの攻撃が強すぎて魔石が残らないわよ!もう少し加減しなさい!」
ルカ:「はい!」
ルカは手加減しているはずだが、大ネズミの防御力では耐えられないらしい。
ルカ:(おかしいなぁ。これ以上は無理かも。)
アマミ:「こっちにも流れてきたわね。」
アマミも、流れてきた大ネズミを退治しているが、とても破裂するまではいかない。
ちゃんと魔石を残して消えて行く。
アマミ:(ルカには、ここでは弱すぎるのかしら?しかし、ルカってちょっと異常よね。)
このままでは、魔石が残らないので、討伐証明が出来ない。さらに換金は魔石の買い取りで行うため、ルカの手元にお金が残らない。
アマミ:「ルカ!方法を変えるわよ。剣を使いなさい!今回は剣には気を送らないで!」
ルカ:「はい!」
ルカは、腰の刺した黄龍の剣を抜いて、気の注入をせずに斬りかかる。
全身には気を張り巡らせているので、大ネズミの速度を簡単に上回っている。
ずっとルカのターンだ。
アマミ:(これなら、魔石は残るみたいね。)
ルカは、わらわらと発生する大ネズミを苦にせず、全ての攻撃を避けて、片っ端から討伐していく。その移動スピードもさることながら、動体視力もかなり強化されている。
初めてのモンスター討伐とは思えないほど、圧倒的に駆逐していく。これが黄龍の力。
それからかなりの時間が経ったと思われるが、ルカの体力は一向に落ちない。
ほぼ全滅と言っていいほど、大ネズミを狩り終えた。
そして、周りには、無数の魔石が足場がないほどに散らばっている。
アマミ:「ルカ。もう出てこないんじゃない?」
ルカ:「そうですね。随分と狩りましたもんね。」
アマミ:「でも、ここじゃ、ルカの修行にはならなかったわね。」
ルカ:「そんなことないですよ。初めてだったのでちょうど良かったです。」
アマミ:「今日は気の調整を覚えるために来たんだけど、もっと、下の階層に行かないとダメね。」
ルカ:「でも、時間がないので仕方ないです。」
アマミ:「そうよね。でも、次は第二階層の行きましょう。急いで行けば間に合うから。それに一旦、第二階層に行けば、そこで登録出来るらしいから、登録だけしに行けばいいわ。」
ルカ:「そうなんですか。だったらそれがいいです。アマミさんはどこまで行ったことがあるんですか?」
アマミ:「私!?第四、第五階層くらいだったかしら。」
本当は行ったことはありません。
ルカ:「へぇ、すごいですね。僕もいつか行ってみたいです。」
アマミ:「そ、そうね。時間があればね。
ところで、この魔石どうする?
こんなに大量の魔石は持って帰れないわね。
持てるだけ持って帰りましょうか?」
ルカ:「あ、それなら大丈夫ですよ。」
アマミ:「え?どういう意味?」
ルカ:「黄龍が預かってくれます。こんな感じです。」
ルカが、魔石に手を翳すとその魔石が手の中に吸い込まれていった。
アマミ:「わお、すごいわね。
稀にそういう天啓を持つものがいるって聞いたことがあるけど、実際見たのは初めてだわ。確か、異空間って天啓だったかしら。
それってどれくらい格納できるの?」
ルカ:「それはまだ分からないですけど、ここにある魔石なら預かってくれると思います。」
そして、散らばっていた魔石を全て格納してしまった。
アマミ:「本当に格納出来たわね。」
いくら大ネズミの魔石が小さいとはいえ、あれだけの数の魔石を格納してしまったことに驚きを隠せない。
アマミ:(一度、副会長に話を聞いたほうがいいわね。)
ルカ:「アマミさん。僕、もう戻らないと。」
アマミ:「あ、そうね。じゃあ、急いで戻りましょう。」
ルカ:「あ、来た道は分かりますから、僕一人で帰れます。アマミさんは残ってください。」
アマミ:「いいのよ。私も今日は帰るわ。」
アマミは、ルカのいないダンジョンには興味はない。
そして、来た道と同様に異常なスピードで戻っていく二人を二度見する冒険者たち。
ルカ:「やっぱり、この仮面ですね。」
アマミ:「そうね。でも気にしなくていいわ。」
この後、二人で冒険者ギルドに行き、魔石の買い取りをお願いしたが、その異常な数にカルメンが驚いていた。
ルカは遠慮していたが、今回は依頼完了の報酬とともに買い取り金額を全て受け取ることになった。これだけでもルカの1ヶ月の給金より多い金額となった。
ルカ:「アマミさん。今日はありがとうございました。また、ご一緒できると嬉しいです。
じゃあ、僕は帰ります。」
アマミ:「ええ、また偶然会えるといいわね。それじゃあ、気をつけて。」
それからも、確実に偶然会える二人だった。
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