第13話 師弟関係

 ◇◇◇◇◇


アマミ:「あなた、このまま帰れると思ってるのかしら?」


ガガン:「娘の罪は、何卒、俺に与えてください。」


 親子とはこのようなものなのか?

 このどうしようもない娘を庇おうとしている。


アマミ:「将軍。あなたには頭が下がるわ。

 なら、将軍に免じて、その娘に選択権を与えましょう。

 将軍が死を持って償うか、娘が牢獄に入り罪を償うか。

 お嬢さん、簡単な選択でしょう。

 どちらか選びなさい。」


ガガン:「シトルよ。気にすることはない。覚悟は出来ている。」


アマミ:「将軍。余計なことは言わないの。

 ワザと簡単な選択肢にしているのだから。

 さあ、あなたの好きな方を選びなさい。」


 もちろん、シトルを試しているのである。

 流石にこの選択は間違えないだろうと。


シトル:「それは……。」


 シトルは、必死で考えている。

 この期に及んで、どうやって父親に代わってもらうかを。


シトル:「あのー。パパの死は勘弁してもらえませんか?」


アマミ:「ええ、もちろん、そのつもりです。

 じゃあ、あなたが牢獄に行くってことでいいのね?」


 アマミの念押しにシトルは焦った。

 そういう意味で言ったのではない。


シトル:「いえ!パパの処罰を軽くしてもらいたいだけです。」


アマミ:「あら、意外な答えね。

 と言うと、将軍の罪が軽くなれば、将軍に罪を肩代わりしてもらうと言う意味かしら?」


シトル:「まあ、そう言うことになります。

 これはパパの希望でもあるので、苦渋の選択でしたが受け入れたいと思います。」


 シトルは、アマミとは目を合わさずに図々しく言い切った!すごい精神力である。

 あくまで、父親には死んでほしくはないが、自分は絶対に罰を受けたくない。


アマミ:「なるほどね。あなたと言うものがよーく分かったわ。

 将軍。最初からあなたに死を与えるつもりはないのよ。ただ、この娘には、一度、罰を与えないとダメだわ。」


ガガン:「……そうですか。なら何卒、穏便にお願いしたく。」


アマミ:「そうねぇ。それじゃあ、少し甘いけど娘に改心の機会を与えることにします。

 将軍。その娘を勘当しなさい。

 侯爵家と言う肩書きを捨てて、平民として生きなさい。それで、今回の件は許します。

 あなた、父親に感謝するのね。」


ガガン:「はっ、寛大な配慮に感謝します。」


シトル:「ちょっと待ってよ!そんなの寛大じゃないわ。平民なんて嫌よ。絶対に嫌〜!」


 泣き喚いて、暴れるシトルをガガンが抱き抱えて押さえ付けている。

 アマミも怒りが込み上げて、これ以上この娘には付き合いたくなかった。


アマミ:「将軍。あとは任せるわ。

 あそこの二人も、あなたが処分して。

 少年、行きましょう。」


 泣き叫ぶシトルを後に、アマミはウイオを連れてその場を立ち去った。



 ◇◇◇◇◇



 あの場から立ち去って、見えなくなったあたりで、ウイオは立ち止まって、アマミにお礼を言った。


ウイオ:「あのー、アマミ様。

 助けていただいて、ありがとうございました。」


アマミ:「あの娘はどうしようもないわね。

 それとアマミ様はやめてくれる?

 アマミでいいわよ。

 で、あなた、名前は?

 (知ってるけど、一応ね。)」


ウイオ:「はい、ルカです。」


アマミ:「じゃあ、ルカ。

 あなたは、新人冒険者よね?」


ウイオ:「はい、そうです。」


 アマミは、本当はウイオと接触してはいけなかったのだが、こうなっては仕方がないと割り切り、少しアドバイスしておこうと思った。


アマミ:「なら、ダンジョンに行きなさい。

 こういうところで動物を相手にしたところで、あなたの経験にはならないわよ。

 それにこんなことにも巻き込まれるしね。」

 

ウイオ:「そうですよね。

 僕もそんな気がしてました。

 少しでも、お金になればと思ったんですが。

 あ、そういえば、慰謝料の話なんですが、僕はそんな大金受け取れません。」


アマミ:「そうはいきませんよ。

 お金は受け取ってもらいます。

 あなたへの慰謝料ですからね。

 私がもらうわけにはいかないでしょう。

 お金は後から私が侯爵家に取りに行くつもりだったんで、あなたの冒険者カードに振り込んでおくからね。

 嫌なら、引き出さなきゃいいんだから。」


ウイオ:「でも……。」


アマミ:「はい!この話は終わり。

 ところでね、私もよく一人でダンジョンに行くんだけど、もし偶然会ったら、その時は指導してあげるわ。私、強いから。」


ウイオ:「え?いいんですか?嬉しいです。

 アマミ様は、とても強いですし。」


アマミ:「こら!様を付けない!

 せめて、アマミさんって呼んでくれる?

 そっちの方が、親近感が湧くでしょ?ね?」


 アマミは、茶目っ気を出してウインクした。


ウイオ:「あ、はい。じゃあ、アマミさん。」


アマミ:「うん、よろしい。

 じゃあ、今日からルカは私の弟子にします。

 (黄龍を弟子にしちゃった!ふふふ。)」


ウイオ:「はい!」


アマミ:「じゃあ、ルカの強さを知りたいから、少し試験をしてみよっか?」


ウイオ:「はい、お願いします!」


アマミ:「ルカ。そこにある大きな岩を思いっきり殴ってみて!」


ウイオ:「え?岩をですか?」


アマミ:「そう。大丈夫よ。殴る際に拳に気を集中させて!そして当たる際にその気を放湿する感じでやってみて。」


ウイオ:「え?はい、やってみます。

 (拳に気を溜めて。こんな感じかな?

 そして、当たる時に放出する。)

 よし!えい!」


 ボコ!パーーーン!


ウイオ:「やった!アマミさん。どうですか?」


 ウイオの殴った岩は粉々に砕けちゃった。


アマミ:「え?あ!そうね。満点合格です。

 これならダンジョンでも全然大丈夫よ。

 (合格どころか、驚いたわ。私でもこの大きさの岩は割るのが精一杯なのに、粉々に砕けてるじゃない!これが黄龍の力なのね。)」


ウイオ:「はい!ありがとうございます!

 こんな風に力を使うんですね。勉強になります!」


アマミ:「あなたはまだまだ強くなれるわ。

 これから指導して行くから頑張るのよ。」


ウイオ:「はい!がんばります!」


 こうして、弟子となったウイオはアマミに冒険者としての技を伝授されていくのであった。


 実はアマミは銀狼の弟子であった。

 銀狼は数少ない先代黄龍の直弟子であり、アマミは先代黄龍の弟子の弟子、つまり孫弟子に当たる。よって、ウイオは、先代のひ孫弟子に当たるという複雑な構図が出来上がった。


 ◇◇◇◇◇

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