『宇宙人はいなかった』

やましん(テンパー)

『宇宙人はいなかった』 上


 宇宙探査船ションは、長期にわたる深宇宙探査を続けてきていた。



船長 ホーム・ラン


 『こ、これは、奇跡だ。海がある惑星だ。』



科学主任シポク


 『わが惑星を離れて一億サイクル。ついに、見つけましたな。』



船長


 『生物は?』



シポク


 『まだ、ちょっと遠すぎます。しかし、じき、判るでしょう。いますよ。きっと。魅惑的だ。』



船長


 『うむ。急ごう。さらに、いくつか、似た星があるな。』



シポク


 『はい。みっつ。いや、よっつあります。しかし、海があるのは一つだけです。あ、船長。この海は、有望ですな。きっと、まさしく、生き物はいます。かなり、でかいのも、いそうです。』



船長


 『話の判るやつがいるかな?』



シポク


 『さて。どうでしょう。わくわくしますね。』




船長


 『ほう。きみが、わくわくするなんて、出発以来始めてだな。よし、通信を始めよ。』



シポク


 『あいあい。』



船長


 『必ずや、返信が来るぞ。』



    💫💫💫💫💫



   しばらくして……



シポク


 『船長、残念ながら、反応は、ありません。』



船長


 『まだ、文明がないかな。いやいや、いつも、聴いてはいないさ。』



シポク


 『ですね。たぶん。もう、すぐそこです。着陸しますか?』




船長


 『もちろんだ。ゆこう。』




シポク


 『大気は、四つの層からなります。成分は、窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素。そのままでは、我々には毒性が強すぎます。スーツ、必要性ある。惑星を周回する飛行物体。なし。大気圏内飛行物体、なし。生物反応はあり。ありますよ。船長、います。生き物は、います。』



船長


 『やったあ。ホームランだあ。』



シポク


 『大気圏内低空飛行モード。あ、あれ。でっかいのが、たくさん、海上を飛び回ります。すごい。歓迎式ですね。なんと、大量の生物があります。すごいです。宝物がいっぱいです。海中行きますか?』



船長


 『うむ。もちろんだ。残念だが、採集は禁止されているから、詳細に記録せよ。海中潜航。』



シポク


 『あいあい。』



 宇宙探査船ションは、信じがたいほど、多様な生命を観測し、記録した。


 さらに、なんと、一部の生き物とは、会話ができたのだ‼️



シポク


 『簡単な会話なら可能です。すばらしい。』



船長


 『よし。あー、あー、こんにちは。ぼく、宇宙船ションの、ホーム・ラン。』



生物


 『らっしゃい。陸からかい?』



シポク


 『空から。』



生物


 『あ、とりさんか。とりさん、これから陸近くには行かないほうがよいよ。危ないから。』



シポク


 『あぶない? あぶない。危険なのか。』



生物


 『うん。凶悪な生き物がいて、みな、殺してしまう。むかしは、優しかった。しかし、いまは、みたら、なんでも、ころす、たべる。しんしゅつきぼつ。やぶからぼうなんだ。』



船長


 『空を飛ぶか?』



生物


 『むかしは、とんだし、もぐったが、いまは、はいずりまわるだけみたい。海には、たまに、くる。でも、こわい、ながい、ころしぼうを、持ってる。あぶない。みな、ころされる。あさいばしょには、いってはならない。……て、わ、わ、きたあ。』



 そのかなり大きな、わりに知性がある生物は、散り散りになって、いなくなった。


 しかし、後には、たくさんの小さな魚達が、まだ、たくさん、たむろしていた。


 

船長


 『ころしぼう? 銃かな。』



シポク


 『おおかた、そうですな。やはり、ここには、知的生命体がいるのです。船長❕』




船長


 『すばらしい。ついに、ついに、きたか。』



 その、直後である。


 海上から、なにやら、たくさんのストローみたいな棒状のものが、海のなかに、沢山突き刺さってきたのだ。


 それは、やみくもにではなく、明らかに魚達を狙っていた。



 そうして、なんと、突き刺された魚達は、たちどころに、身体を分解されて、棒に、吸いとられてしまうように見えたのである。



シポク


 『なんでしょう。みたことのない漁のしかただな。あわ、本艦も狙われてます。まずいです。あれに刺さると、そのあたりの物質が分解します。海中では危険です。』


 その、ストロー状の長い物体は、どんどんと数を増やして行く。


 そうして、ずばずばと、海中の魚達を突き刺しては、吸い上げるのだ。



船長

 『さらに潜航して避けろ。』




シポク


 『あいあい。』



 宇宙探査船ションは、深宇宙船とはいえ、だいたい、シロナガスクジラくらいの大きさであった。


 










 



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