女子高生魔法使い美少女メリウスが異世界でドメーヌ王国の危機を救う

三日月未来(みかづきみらい)

第一話 黒猫メリウス

 朝霧女学園の放課後、下駄箱前で女子高生数人が青空を見上げて騒いでいた。


「ねえねえ、あれ見た」

「あれって! 」


「空飛ぶよ・・・・・・ 」

「知らないよ!そんなの噂でしょう」


 夢月零ゆめつきれいは、同級生の大声に呆れながら文芸部がある部室棟に向かった。


 十六歳になったばかりの零は朝霧女学園文芸部の一年生。

「部のアイドル的存在よ・・・・・・ 」

零はいつもの癖で独り言を呟きながら歩いた。


 愛らしい顔立ちにやや長い黒髪のポニーテールが制服の肩にかかる。

零が歩いた空間にシャンプーの香りが漂っていた。


 背丈は平均くらいで猫目に長い睫毛の普通の女子高生の零。

 零はミニスカートを好まず膝上くらいの長さを好んだ。


 自慢の黒いガーターストッキングが零のトレードマークと勝手に思い込んでいる。

スカートが覆って、ガーター部分は見えていないのだが・・・・・・。


 誰もいない部室に入ると窓のカーテンを勢いよく開けた。

窓から差し込む夕日に目を細め両手を翳した零の背後で軋む音がした。


[ガラガラ・・・・・・]


 部活顧問の優翔玲子ゆうがれいこが息を切らしながら部室の引き戸を勢いよく開け放った。

[ガチャン]


 思わず小さな驚きの声を上げ先生を睨む零。


「先生!いつも言ってるでしょう」

「すまん、すまん、うっかりして」


 元ファッションモデルの玲子は背丈が高い。


 二十四歳の玲子は黒髪に自慢のピクシーカットに白いスカートスーツを着ていた。

彼女の美しい目鼻立ちが花顔柳腰さを際立たせて女性教師には見えない。


「夢月さん、そのアクセサリーどうしたの?」


 零は、ある日の朝のことを思い出した。

それは、散歩中に不思議な形のアクセサリーを拾った出来事だった。


 零は玲子に質問されるまで、そのアクセサリーの存在すら忘れていた。


「先生、これですか?」


「そうーー それよ」

「道の隅に落ちていて拾ったの」


「綺麗な色をしているわね」

「そうなのーー でもね、何か分からないのよ」


「うん、そうね、時計に似ているけど・・・・・・ 」

「時計ですか? 先生」


「針はないわね」

「そうでしょう。だから不思議なの」


「三回振ったら、ワン!と吠えるとか」

「先生、嘘でしょう」


「じゃあ、わたしが振ってみるね」

「本当にするの先生? 」


 零は玲子の性格を知りながら呆れて見ていた。


「夢月さん、じゃあ、振るわよ! ワン! 」


 玲子が勢いよく三回振ったけど・・・・・・。


「先生、何も起きないじゃない」

「じゃ、夢月さんしてみる」


「何も起きないと思うわよ。ニャン! 」




 零は玲子を真似て三回振った。


 突然、アクセサリーが光を帯び始めた。

部屋中がキラキラと輝き始め眩しい。


 部室全体が黄金の世界に変わって何も見えなくなった。


 零と玲子は慌てたじろぐことしか出来なかった。


「先生、止まりません!」

「夢月さん、もう一度やってみたら」


 零は祈りながら、もう一度振ってみた。


 キラキラの光が徐々に弱くなった。

部室が普段の明るさに戻った。

乱雑に並べられた木製の机と椅子が新鮮に感じた。


 二人がほっとして軽く深呼吸をした刹那、アクセサリーからキラキラしたが現れた。


 零はなのかと思考を巡らせた。


 は立ち上がり二足歩行になった。

刹那、人間の言葉を話始める。


 玲子は零を引き寄せ抱いた。


 突然の出来事に後退りする二人に黒猫が話し掛ける。


『お呼びでしょうか?ご主人様』

「わたしですか」


『はい、零様の召使いのメリウスでございます』

「召使いーー 何で私の名前を知っているの」


『零様の召使いでございます』

「意味が分からないわ」


『前世からのご縁でございます』

「わたしは、拾っただけよ」


『いいえ、メリウスがあの場所を予知して選びました』

「そんな馬鹿なことあるの」


『今、お話しているじゃないですか』

「質問、していい」


『なんなりと』

「じゃあ、あなたを呼びたい時は、どうするの」


『わたしの名前を心の中で三回お呼びください』

「メリウスを三回ね」


『はい、三回でございます』

「でも、さっきは三回振ったわよ」


『初回限定特典でございます』

「メリウスって、冗談も言うのね」


『冗談ではございません。初回限定です』

「メリウスは、姿を変えることができるの? 」


『たとえば? 』

「人間になったり、大きくなったり、小さくなったりとか」


『そんなことですか』

メリウスが急に笑いだした。


「そんな可笑しいことですか」


 零はほっぺを膨らませてメリウスに怒っている。

零の表情を見た玲子が笑いだした。


「じゃあ、メリウス、わたしに変身してみて」

『ではーーーーーー 』


 メリウスの身体がアクセサリーの時のように光を帯び始めた。

まもなくして、もう一人の零が二人の前に現れた。


「メリウス、すごい。そっくりよ」

『時間限定でございます』


「時間あるのーー 長くて、どれくらい」

『三時間でございます』


 零は腕組みして考え始める。

「他に何かできることある・・・・・・ 」

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