第八十話ユニークモンスターとイベント㊼



[強制ログアウトがキャンセルされました]


あっぶねぇ!ギリギリのところで耐えられたからいいものをもしログアウトしていたとしたらNPCロールがバレるところだった…



「ん〜?大丈夫ですかぁ〜?一瞬存在が薄くなりませんでしたかぁ?」


(し、心配ご無用です…少し目眩がしただけですから…)


「あらぁ〜貧血かしらねぇ〜よく副クランマスターも「あなたといると目眩がするようです」と言うんですよぉ〜…貧血には鉄分を取ると良いらしいですよぉ〜…そのまま鉄を食べちゃだめですよぉ〜レバーとかほうれん草とかですねぇ〜きちんと食べられるものを食べるんですよぉ〜」


(私は幼児か何かだとでも思っているのですか…)


「そんなことないですよぉ〜幼児にはもっと優しく接しますよぉ〜……ゲジゲジさん?もっと食べたいんですかぁ〜…少し耐性がついてきましたかねぇ〜…明日からはもっと量を増やすので今日のところは市販の毒薬で我慢してねぇ〜……あ!そういえばぁ〜!」


(ん?どうかしたのですか?)


「いやぁ〜また私うっかりしてましたぁ〜この姿で人前に出たことまだなかったですぅ〜それじゃぁ私の姿をみてもわかりずらいですよねぇ〜…」


(その姿とは別の姿があるんですか?たしかにそれだと見た目と名前を一致させることは難しくなると思いますが流石に名前は知っていると思うんですよ)



そう俺はこいつのことは名前も姿も知らん…まじで知らん…《解毒館》のクランマスターの名前は知ってるはずなんだけど覚えてないし、そもそも見た目が違いすぎたし…



「じゃあいきますよぉ〜…みんなぁ〜しゅ〜ご〜!」


(…ビギャッ!!)



見ないようにしていたものをわざわざ視界内に持ってくるなぁぁ!!きもいぃ!がまんんんん!



「終わりましたよ〜って何で目を瞑ってるんですかぁ〜?せっかくお着替えしたのにもったいないですよぉ〜」


(え、なんか声変わってません?あぁ…ちょっと待ってください!こちらにも心の準備というものがありまして!手を!手を引っ張らないでください!ちょまっ!……………)



さっきまでグチュグチュとトキシンさんの足元を這いずり回っていた毒虫御一行がトキシンさんの足から体をよじ登り始め、やがてトキシンさんの頭のてっぺんからつま先まで毒虫御一行がグチュグチュしていた


うっわぁ…少し慣れ始めてる自分にも怖くなってきてるけど…


そして思い出した…思い出しちゃった…公式ではなくプレイヤーが独自に開催していたイベントでクラン交流戦というものがあった。

クラン交流戦とは、その名の通り結局クラン最強どこなんという掲示板で勝手に各クランマスターや副クランマスターが熱くなりじゃあ総力戦で決着つけようやぁ!となったから始まったものだ

ルールは単純明快…ポイント制であり、クランマスターが100点、副クランマスターが50点、幹部級が各10点、他のクランメンバーが各1点で各クラン100人以上の編成で足りない場合は頑張って集めなければならない。人数は無制限だが相手により多くのポイントを渡すことになりかねないし、逆に最低数の100人だと人海戦術に完全に負ける


まぁなんか難しいのだ…そもそも俺には遠すぎる話なので関係なかったんですけどね…戦場の外だったり配信で見てましたよ…へへ…


もちろん上位クランは強制参加だし、クランマスターも強制参加だ。その時も上位クランに《解毒館》は名を連ねていたので、《解毒館》のクランマスターが白日の下に晒されることになってしまった。


《解毒館》聖木教の三文字タイケツトなった。ちなみに《聖木教》はその時期に上位だったクランだ。

戦況は拮抗することなく《解毒館》の圧勝となった。そもそも相性が悪かったということもあったのだろうが、まずかったのは《解毒館》のクランマスターが前線に出てきて暴れてしまったことだ。グチュグチュと音を立てながら人の形をなしている毒虫の鎧になすすべもなくボッコボコである。


その時についた二つ名というかあだ名が蠱毒鎧…皆見た目の印象が強すぎて名前を覚えてなかったから掲示板や巷で呼ばれたのだ!


《聖木教》は通常クランへと降格し、そのまま自然消滅したらしいよ…



「これでようやく証明できましたかぁ〜?まだ知らなくてもこの世界の方なので仕方ないと思いますぅ〜…じゃあ皆〜かいさ〜ん」


(私は旅の商人ですから来訪者クランの情報も仕入れていましたが、あの強烈な見た目は脳裏に焼き付いていたようです…)


「そうですかぁ〜………ん〜皆食べ終わったかなぁ〜?よし皆帰っていいよぉ〜」



そうトキシンさんが言うと毒虫御一行はまた研究所の隅という隅に消えていった。



「では用事も済んだのでぇ〜私帰りますねぇ〜色々とお話できて楽しかったですぅ〜またどこかであったら敵でないことを祈ります」


(ええ、敵でないと私もありがたいですね)


「さようならですぅ〜」



帰ったかな…



(もう目を開けてもいいですよシノ…)


「…………」


(あと3秒で目を開かないと国を滅ぼしにかかりますよ)


「…………」


(もちろんシノも寝たまま引きずって連れていきます)


「起きてます!起きてますから!ほら!おめめパッチリですよ!ほら!」


(シノ今日はもう遅いのでログアウトしたほうがいいと思いますよ。向こうは0時を過ぎていると思いますし…)


「ちょっと!それを先に言ってくださいよ!夜ふかしはお肌の敵なんですよ!」


(へーそうなんですねー)


「興味なさそうですね…じゃあ私ログアウトするんでエイダさんもあまり長くやっちゃだめですよ!では─」


(少し話があります)


「……少しだけですよ」


(今日の17時からです。やりたくないのならシノは来なくても大丈夫です。私一人でもこの国を落とします)


「聴く価値のない話はしないでください…おやすみなさい」


[シノがログアウトしました]







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23時なのでギリギリセーフ

ほとんど明日みたいなものですけど…





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