最大攻撃

ミデン

最大攻撃

「あの光は何だ?」


空を見上げた村人たちは、驚きと恐怖に顔を歪めた。夜空には、巨大な円盤が赤く輝いていた。それはまるで、燃え盛る太陽のようだった。


「宇宙人だ!宇宙人が来た!」


「逃げろ!逃げろ!」


パニックに陥った村人たちは、家や畑を捨てて逃げ出した。しかし、逃げ場はなかった。円盤からは、無数のレーザー光線が降り注いできた。それは、木や土や石や肉や骨を一瞬で焼き尽くした。


「助けて!助けて!」


「神様!神様!」


悲鳴や祈りが空しく響いた。村は、一瞬で灰となった。


「これは、昨日の夜に起きたことです」


テレビ画面に映し出されたのは、焼け野原となった村の映像だった。それを見つめる人々の表情は、呆然としていた。


「この村は、北海道の奥地にある小さな村でした。人口は約300人でしたが、今では生存者は一人もいません」


アナウンサーの声は、重々しく響いた。


「この事件は、宇宙人による最大攻撃と見られています。政府は、緊急事態宣言を発令し、自衛隊を全面的に動員しました。しかし、宇宙人の目的や正体は不明です。また、他の地域にも同様の攻撃が及ぶ可能性があります」


「どうなってるんだ?どうなってるんだ?」


「日本は滅びるのか?日本は滅びるのか?」


テレビを見ていた人々は、不安と怒りに震えた。しかし、誰も答えを知らなかった。


「これは、宇宙人の最大攻撃に対する人類の最後の抵抗です」


国連本部の地下にある秘密の司令室で、国連事務総長が壮大な演説をした。彼の前には、世界各国の首脳や軍事指導者がモニター越しに集まっていた。


「宇宙人は、わずか一週間で地球の半分を焼き尽くしました。彼らは、人類を滅ぼすことが目的であることを明らかにしました。彼らは、私たちと交渉することも和平を結ぶこともありません。彼らは、私たちを虫けらのように見下しています」


「しかし、私たちは虫けらではありません。私たちは人間です。私たちは、自分たちの惑星と文明と生命を守るために戦います。私たちは、宇宙人に対して最大攻撃を仕掛けます」


「私たちは、世界中の核兵器を集めて、一斉に宇宙人の母船に向けて発射します。これは、自殺行為かもしれません。しかし、これが私たちに残された唯一の手段です」


「私たちは、歴史上最大の戦争に臨みます。私たちは、人類史上最後の戦争に臨みます。私たちは、勝つか負けるかの究極の戦争に臨みます」


「私は、皆さんに勇気と決意と協力を求めます。私は、皆さんに祈りと希望と愛を送ります。私は、皆さんに感謝と敬意と誇りを表します」


「さあ、行きましょう。人類よ、立ち上がれ!」


「発射準備はできましたか?」


国連事務総長は、司令官に問いかけた。


「はい、できました。世界中の核ミサイルが発射台にセットされました。あとは、あなたの命令を待つだけです」


司令官は、堅い声で答えた。


「わかりました。では、カウントダウンを始めてください」


国連事務総長は、深呼吸をした。彼は、自分が人類の運命を左右するボタンを押すことになるとは、夢にも思わなかった。彼は、自分が歴史に名を残すことになるとは、望んでもいなかった。彼は、ただ平和な世界を作りたかっただけだった。


「カウントダウン、開始します」


司令官の声が響いた。


「10」


「9」


「8」


「7」


「6」


「5」


「4」


「3」


「2」


「1」


「発射!」


空には、無数の光が飛び交った。それは、人類の最後の希望と絶望の光だった。


宇宙人の母船は、その光を冷静に観察した。それは、人類の最大攻撃というよりも、最大の愚行だと思った。


宇宙人は、人類を滅ぼすことが目的ではなかった。宇宙人は、人類を救うことが目的だった。


宇宙人は、地球が危機に陥っていることを知っていた。地球は、温暖化や汚染や資源枯渇などで瀕死の状態だった。地球は、人類のせいで滅びかけていた。


宇宙人は、それを防ぐためにやってきた。宇宙人は、人類に警告するためにやってきた。宇宙人は、人類に改心するチャンスを与えるためにやってきた。


しかし、人類はそれを理解しなかった。人類はそれを拒絶した。人類はそれに反抗した。


宇宙人は、残念だと思った。宇宙人は、悲しかった。


そして、宇宙人は決断した。


「爆発しました!爆発しました!」


司令官の声が興奮した。


「我々の核ミサイルが宇宙人の母船に命中しました!我々の核ミサイルが宇宙人の母船を爆破しました!我々の核ミサイルが宇宙人の母船を撃墜しました!」


画像

国連事務総長は、信じられないような表情で画面を見た。画面には、炎と煙に包まれた巨大な円盤が落下していく様子が映っていた。


「やった!やった!」


国連事務総長は、涙を流しながら叫んだ。


「我々は勝った!我々は勝った!我々は勝った!」


しかし、その時だった。


画面が真っ白になった。


地球は、爆発した。


宇宙人の母船は、自爆装置を作動させた。それは、地球の全ての生命を消し去るほどの威力を持っていた。


宇宙人は、人類に最後の教訓を与えた。それは、自分たちの行いに責任を持つことだった。


宇宙人は、人類に最後の別れを告げた。それは、さようならという言葉だった。


おわり

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

最大攻撃 ミデン @miden

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ