第11話 制裁

陽菜だけ診察を受けてからの帰り道。

病院内はかなり混乱していたが、強姦被害者の救急扱いということで優先させてもらった。

この状況で、この診断書って、何の役に立つのだろうか?

走り出した車の中で。

何が起きても対応出来るように身構えていたら、鈴さんから、


「少しは私達を信頼してくださるようにお願いします。」


と言われてしまった。


「ええ、ではお願いするわね。」


答えたのは、こんな酷い状況でも平然としていた陽菜だった。

お前、落ち着きすぎだろ!


この車の後ろには、もう一台着いてくる護衛の黒塗り車。多分だけど、まだ他にも護衛が付いているんだろうな。


俺達の乗ってきた車の後部座席で俺にもたれ掛かってきた陽菜を抱きしめながら、あ〜、コイツって、こんなに小さかったっけと思い出した。


元通りの道を戻りながら、途中黒焦げなダンプカー2台を眺めながら、あ〜、明日、陽菜の制服どうするんだろうと思いながら、陽菜に聞いてみた。


「陽菜、明日、登校する時の制服、どうする?」


ズタボロになった制服は、直しが効くような状態ではない。


「ん〜、臨時休校みたいよ?明日休校で、その後土日だから3日間お休みだね!今から注文して、間に合うかな?」


操作してたスマホ画面を見せてきた。


「また、なんで?」


思わず呟いたら、鈴さんが、


「陽菜様への暴行の件絡みかどうかはわかりませんが、野球部とサッカー部の部員の大半が『行方不明』になっているようです。」


ん〜、行方不明ってことは、もう、『生きてはいない』かもな?

全部で何人なんだろうか。

陽菜の爺さんを本気で怒らせたら、もうどうなっても俺は知らんからな。

知らないってことは、怖いな。知りたくもないけどな。

襲うんなら、相手をよく見ないと知らないといけないんだぞ?反撃される覚悟くらい有ったんだろうけどな。まさか、返り討ちにあって消されるなんて想定外かな?

玉を潰して制裁しただけでは、爺さんの怒りは収まらなかったんだな。お〜、怖っ!


「警察幹部と本部のトップクラス何人かも『行方不明』のようですね。お二人を尋問していたスタッフ全員も同じく『行方不明』ですね。」


さらっと、鈴さんがまた、トンデモ発言をしてきた。

ていうことは、あのいけすかない婦警も『行方不明』って事だな。

アイツだけは、ザマァと叫んでおこう。


「あと、我々を襲うように指示したのは、お二人を釈放させた県警幹部ですね。」


鈴さんは、インカムに流れて来たのだろう。少し聞き入ってから伝えてきた。


あ〜、あの、どこからどう見ても、ヤの付く職業にしか見えないアイツか。


「我々を襲うなら、『中途半端』はいけませんよね。我々は、そんな『中途半端』な事はしませんからね。」


あのオッサン、可哀想に。

どうなっても、知らん。


あ〜、今日も、日本は、平和だな〜?

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