天然色のお正月
安部史郎
第1話
母がまだ生きているような、生きているのを見過ごしてきたような感じからだった。
いまは
それでも、ずぅーっとひとつところにいたからかすごく肥えていて、なんだか母というより祖母のような気がする。白山公園のブランコにのって、「なんでばあちゃんはおかあさんとケンカばかりするの」と、悟かった5才児のわたしが問うた祖母のような気がする。
もちろん、大人になって悟くはなくなったわたしはそんなことは口にしない。九十半ばのばあさんはにこやかに孫を見ている眼でわたしを見ている。
九十半ばのばあさんは、母でも祖母でもないのだ。ふたりとも七十代で死んだのだから、そんなはずはないのだ。そんな線香臭い感じが横から吹いてきたのを
正月の百人一首でやるカルタ取りの読み手の丸ぁるい
みると、読み札をよんでいるのは
こんな天然色に満ちた正月が四十年後に待っているのだと思うと、既にわたしのかたちはなくなっているのだとしても、どうかそこに立ち会わせてくれろと前のめりに拝もうとしたら、覚めた。
天然色のお正月 安部史郎 @abesirou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます