13🏠一之介ミラクル
オカン🐷
第1話 運動会
「あらっ、もう帰って来たん?」
「うん、気分が悪くなって保健室へ行ったらベッド満員だった。だから帰って来た」
「ルナ、制服は?」
「あとで取りに行く」
家の前の中学校では『天国と地獄』の音楽が流れている。
ピストルの音で生徒たちが駆け出す。
最終種目のクラス対抗リレーが始まったのだろう。
17年以上経つとはいえ、その中学校から銃で狙撃された家が真ん前にあるというのに、屋上を閉鎖しただけで、ピストルを使用するのは無神経ではないだろうか。
毎年、不快な思いを抱えてきた。一度抗議しようと考えていたが、そのうち子どもたちがその学校に通うようになり言いそびれた。
ナオはレイとの通路でのおしゃべりを中断して、ルナの部屋に向かった。
「今日は暑かったから、熱中症、あらっ、顔が真っ赤やない」
ルナは体操服を着たままベッドに横たわっていた。
その日の夕方、ルナの制服とカバンを持つヨッシーが玄関前に佇んでいた。
「ヨッシー、ごめんねえ。中学生になってもお世話かけてもて」
荷物を受け取りながら、ナオは礼を言った。
「で、ルナちゃん、どんな具合ですか?」
「微熱はあるけど、顔色もようなって、軽い熱中症やと思うわ。今寝てる」
「ああ、良かった。学校ではクラスが違って、これもルナちゃんと同じクラスのあきこちゃんが持って行ってって預かったんです。あきこちゃんお稽古の道具があるらしくて荷物が多くて持てないからって」
「あきこちゃん、バレエのレッスン続けてるんやねえ」
「それじゃ」
ヨッシーは軽く頭を下げ、階段を下りて行った。
「みおさんにもよろしくね」
「はーい」
「ルナちゃん、どう?」
「うん、軽い熱中症」
「まだ暑いこの季節に運動会やるなんて。ほかにも体調の悪くなった生徒もいたみたいよ。バレエのレッスン受けている中学生の生徒さんのママから連絡がきてた」
「えっ、バレエのレッスンで連絡網とかあるん?」
「あるの。今日は疲れてるみたいだからレッスンお休みさせますとか」
ナオは棚の上から小さな土鍋を引っ張り出した。
「お粥炊くの?」
「うん、それかお雑炊」
「ルナちゃん、そういうの好きだものね」
「まるでお婆さんみたいって、みんなに言われてもうて」
れんげに載せた雑炊をフーフーと冷ましては口に運ぶ。
「う~ん、ママの作ったお雑炊は最高」
ルナは2杯目をお代わりした。
「夕べも遅くまで起きていたんやない。部屋から明かりが漏れていたわ」
「うん、眠たくなるまで読もうと思った本が読み始めたら止まらなくなって」
「今日は運動会ってわかっているんやから、はよ寝な。自分の健康管理がでけへんとあかんよ」
「うん」
運動会だから少々寝不足でもいけるとルナは思ったのだ。
明日から連休だし。
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